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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編
第49話 組織拡大
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「さて……単刀直入に言えば、あなた達は今回、ツォーンの捨て駒として扱われていた」
そう告げたとたん、公国の人間達にどよめきが走る。
「あなた達は今回、具体的な作戦は何一つ情報を与えられず、臨機応変に対応して命令があったら動け、というような内容しか与えられていなかった。それはつまり、全く信用されていないということだ。違うか?」
「そ、それは……」
「そうだな」
彼等は、首を縦に振る。
「その上で、だ。あなた達は全員、作戦前にツォーンに触れられているはず。そしてそのときに、爆弾を体内に仕込まれている」
「「「「なっ!」」」」
流石に目から鱗だったのか、どよめきが一際大きくなった。
「嘘だろ?」
「嘘じゃないさ。今証拠を見せてやる」
俺は、《異物摘出》のスキルを全員にかける。
すると、全員の胸から水色の玉が出てきた。
「そ、そんな……!」
「ツォーン様が、わたし達を……」
「あの野郎、俺達をただの道具扱いしやがって」
「許さない!」
彼等の意識は、ツォーンや組織に対する失望・恨みにシフトしつつあった。
彼等には寄る辺がない。
だからこそ、生きるために必死で入りたくない組織に入っていたのに、そこですら捨て駒として扱われた絶望。
それが、組織に対する“怒り”の感情となって、公国の人間達全員に波及する。
「そこで、提案だ。あなた達には、ウチで働いて欲しい」
「! なん、だと……?」
「もちろん強制はしない。あなた達からしても、俺は得体の知れない存在だろう。だが、これだけは約束する。俺は、あなた達の命も人生も、決して粗末に扱わない」
「証拠は……? そうだと言い切れる理由が、どこにあるんですか」
構成員の一人。
髪を逆立たせた目つきの鋭い男が、真剣な顔つきで問うてくる。
まあ、至極真っ当な返しだろう。
彼等は今、裏切られて疑心暗鬼になっているのだから、そう聞かれてもおかしくない。
「俺の仲間達が証拠だ。《黒の皚鳥》の奴隷に、公国の謀略に遭った貧民街の子ども達。公国によって枷をはめられ、いいように利用された者。みんな、あなた達と同じ、くだらない運命の被害者達だ。だから――」
俺は再度、彼等を見まわして力強く言った。
「もし今、未来が見えないのなら、俺に全部預けてついてこい!」
「「「「ッ!」」」」
彼等は目を見開き、互いに顔を見合わせる。
明らかに、心が揺れている証拠だった。
だが、自分から名乗り出る者はいない。まあ、最初に名乗りを上げるのは勇気が要るし、ある程度仕方が無いと思うのだが――
「俺は付いていくぜ」
そのとき、とある人物が名乗りを上げた。
金髪のツンツン頭に、赤い瞳を持つ少年――レントだ。
彼は、《友好舞踏会》の終了間際、レーネ王女に「逃げろ!」と言った張本人である。
原作では、王女に「逃げろ!」などと言う者は一人もいなかった。
つまり、あの展開は完全なる即興であり、想定外だった。
そんな彼が――転生してからできた最初の友人である彼が、最初に名乗りを上げたのだ。
「俺は、その仮面の男を信じてみるぜ。俺達全員を助けてくれた事実は変わらねぇんだ」
「……確かにな、お前の言う通りだ」
「うん、そうかもね」
「私も、信じてみようかしら」
レントが名乗りを上げたことを皮切りに、決めあぐねていた他の構成員達も次々に賛同する。
一人の決断が三人の心を動かし、その波が、他のメンバーにも波及していく。
やがて、1分も経たないうちに53人全員の意見が、満場一致で俺達に付いてくると言う方向に固まった。
「さすがだね、主様」
「まあな。この程度は昼飯前だ」
「? 時間的には夕飯前だと思うけど」
「……そ、そうだな」
きょとんと首を傾げるフロルに、とりあえず同調しておく。
ボケとボケが重なると、こんな虚しい感じになるのか。覚えておこう。
「さて、じゃあ作戦も成功したし、王国の重鎮も撤退したし、俺達も帰るか――」
そう提案した、そのときだった。
背筋を凍らせるようなピリリとした殺気を、背後に感じた。
思わず振り向いたのと、ほぼ同時。
「下がって、カイムさんッ!」
フロルが俺の背後に飛び出し、刀を抜く。
瞬間、ガキィイイインッ! と、金属同士がぶつかり合う派手な音が木霊した。
「背後からいきなり主様を襲うなんて……斬り捨てられる覚悟はできてるってことだよね?」
「どけ小娘! 貴様などに用はない!」
「なんだなんだ、騒がしい」
俺は、至近距離でいがみ合う二人を見る。
俺を襲った人物は――『国家大戦・クライシス』の主人公、勇者アリスだった。
そう告げたとたん、公国の人間達にどよめきが走る。
「あなた達は今回、具体的な作戦は何一つ情報を与えられず、臨機応変に対応して命令があったら動け、というような内容しか与えられていなかった。それはつまり、全く信用されていないということだ。違うか?」
「そ、それは……」
「そうだな」
彼等は、首を縦に振る。
「その上で、だ。あなた達は全員、作戦前にツォーンに触れられているはず。そしてそのときに、爆弾を体内に仕込まれている」
「「「「なっ!」」」」
流石に目から鱗だったのか、どよめきが一際大きくなった。
「嘘だろ?」
「嘘じゃないさ。今証拠を見せてやる」
俺は、《異物摘出》のスキルを全員にかける。
すると、全員の胸から水色の玉が出てきた。
「そ、そんな……!」
「ツォーン様が、わたし達を……」
「あの野郎、俺達をただの道具扱いしやがって」
「許さない!」
彼等の意識は、ツォーンや組織に対する失望・恨みにシフトしつつあった。
彼等には寄る辺がない。
だからこそ、生きるために必死で入りたくない組織に入っていたのに、そこですら捨て駒として扱われた絶望。
それが、組織に対する“怒り”の感情となって、公国の人間達全員に波及する。
「そこで、提案だ。あなた達には、ウチで働いて欲しい」
「! なん、だと……?」
「もちろん強制はしない。あなた達からしても、俺は得体の知れない存在だろう。だが、これだけは約束する。俺は、あなた達の命も人生も、決して粗末に扱わない」
「証拠は……? そうだと言い切れる理由が、どこにあるんですか」
構成員の一人。
髪を逆立たせた目つきの鋭い男が、真剣な顔つきで問うてくる。
まあ、至極真っ当な返しだろう。
彼等は今、裏切られて疑心暗鬼になっているのだから、そう聞かれてもおかしくない。
「俺の仲間達が証拠だ。《黒の皚鳥》の奴隷に、公国の謀略に遭った貧民街の子ども達。公国によって枷をはめられ、いいように利用された者。みんな、あなた達と同じ、くだらない運命の被害者達だ。だから――」
俺は再度、彼等を見まわして力強く言った。
「もし今、未来が見えないのなら、俺に全部預けてついてこい!」
「「「「ッ!」」」」
彼等は目を見開き、互いに顔を見合わせる。
明らかに、心が揺れている証拠だった。
だが、自分から名乗り出る者はいない。まあ、最初に名乗りを上げるのは勇気が要るし、ある程度仕方が無いと思うのだが――
「俺は付いていくぜ」
そのとき、とある人物が名乗りを上げた。
金髪のツンツン頭に、赤い瞳を持つ少年――レントだ。
彼は、《友好舞踏会》の終了間際、レーネ王女に「逃げろ!」と言った張本人である。
原作では、王女に「逃げろ!」などと言う者は一人もいなかった。
つまり、あの展開は完全なる即興であり、想定外だった。
そんな彼が――転生してからできた最初の友人である彼が、最初に名乗りを上げたのだ。
「俺は、その仮面の男を信じてみるぜ。俺達全員を助けてくれた事実は変わらねぇんだ」
「……確かにな、お前の言う通りだ」
「うん、そうかもね」
「私も、信じてみようかしら」
レントが名乗りを上げたことを皮切りに、決めあぐねていた他の構成員達も次々に賛同する。
一人の決断が三人の心を動かし、その波が、他のメンバーにも波及していく。
やがて、1分も経たないうちに53人全員の意見が、満場一致で俺達に付いてくると言う方向に固まった。
「さすがだね、主様」
「まあな。この程度は昼飯前だ」
「? 時間的には夕飯前だと思うけど」
「……そ、そうだな」
きょとんと首を傾げるフロルに、とりあえず同調しておく。
ボケとボケが重なると、こんな虚しい感じになるのか。覚えておこう。
「さて、じゃあ作戦も成功したし、王国の重鎮も撤退したし、俺達も帰るか――」
そう提案した、そのときだった。
背筋を凍らせるようなピリリとした殺気を、背後に感じた。
思わず振り向いたのと、ほぼ同時。
「下がって、カイムさんッ!」
フロルが俺の背後に飛び出し、刀を抜く。
瞬間、ガキィイイインッ! と、金属同士がぶつかり合う派手な音が木霊した。
「背後からいきなり主様を襲うなんて……斬り捨てられる覚悟はできてるってことだよね?」
「どけ小娘! 貴様などに用はない!」
「なんだなんだ、騒がしい」
俺は、至近距離でいがみ合う二人を見る。
俺を襲った人物は――『国家大戦・クライシス』の主人公、勇者アリスだった。
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