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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編

第45話 狩人。

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「《水源操すいげんそう》――蒼龍ミズチ。私を四天王の《水龍》たらしめる、究極の奥義だ」



 ツォーンが白い歯を見せて笑う。

 それに呼応して、蒼龍ミズチが吠えた。



『ウォオオオオオオオオオオッ!』



 大気をビリビリと震撼させるほどの叫び声。

 並みの人間なら、その咆哮だけで戦意を喪失して腰を抜かしているだろう、圧倒的なまでの迫力。



 青き水の龍。

 まさに彼の二つ名にぴったりな必殺技だ。



「私の奥義、止められるものなら止めてみろ! 蒼龍ミズチ――災禍さいかッ!!」



 青い鱗を煌めかせ、蒼龍ミズチが突進してくる。

 灼熱に燃えさかる太陽すら喰らい尽くすだろう、圧倒的な水の暴力が迫る。



 この一瞬。

 この攻撃だけは、俺の地力を越えていた。

 だから、その力量に敬意を表し、俺の”最凶”で狩り尽くしてやろう。



「《紫炎》――最大放火!」



 叫ぶと同時に、俺の周りに紫色の炎が咲き乱れる。

 左手を真っ直ぐに伸ばして炎を掴むと、周囲の炎が収束し、弓の形を象った。

 そのまま弓幹ゆがらの一部分を右手で摘まみ、ゆっくりと引き絞る。

 それに応えるようにして、紫色の矢が出現した。



 《紫炎》の火力を上げ、炎の弦を目一杯引き絞る。

 紫に輝くやじりの先端は、迫り来る蒼龍ミズチの眉間へ向けられていて――



『グォオオオオオオオオオッ!!』



 雄叫びを上げ、俺を飲み込まんと口を開ける蒼龍《ミズチ》。

 その鋭い牙が、俺を捉える寸前。

 俺は、限界まで引き絞った弦を、遂に離した。



必滅必中ひつめつひっちゅう――《紫炎弓箭しえんきゅうせん》ッ!!」


 刹那、空気を裂いて紫色の一閃が解き放たれる。

 闇属性魔法、《概念消滅》を付与した炎の矢が、蒼龍《ミズチ》の眉間を正確無比に射貫いた。



「グ、ァアアアアアアッ!?」



 蒼龍ミズチは、断末魔を上げ、次の瞬間には風船が破裂するかのように粉々に四散する。

 まるでその場には初めから何もなかったかのように、蒼龍ミズチは跡形もなく消え去った。



「ば、バカな!?」

「そう驚くことでもないだろ。必殺技はこっちにもある、ただそれだけのことだ」



 驚愕に打ち震えるツォーンに、俺はあくまで冷静に応じる。

 

 地力はほぼ互角。

 であれば、何が趨勢すうせいを分かつのか?

 それは――俺の持つ固有スキル《魔法創作者スキル・クリエイター》と、《紫苑しおんの指輪》が持つ闇属性魔法、《状態異常スペシャル》。

 それら、チートスキルの存在だ。



 必殺技をいとも容易く打ち破られた衝撃で、硬直しているツォーン。

 

 互いに自由落下を続けながら、遂に高度は地上1000メートルを切った。



 眼下に広がる建物の明かりが、ぐんぐんと近づいてくる。

 

「《疾風足ジェット・ラン》」



 俺は、空中を蹴ってツォーンの頭上へ一息で移動する。



「くっ!」

「喰らえ!」



 俺は、ツォーンの頭蓋めがけて全身全霊の力を込めて踵落としを放った。

 ツォーンは、反応こそ遅れたものの、間一髪両腕を交差させてガードする。



 だが、ここは空中。

 上方向からの全力の一撃は、ツォーンを真下に叩き落とす。



 重力による自由落下+全力の踵落とし。

 ツォーンの身体は、弾丸のような速度で地上へ向かって真っ逆さまに落ちていった。



 ――。



 俺は、《友好舞踏会エクセレント・パーティー》会場の屋根の上に、ふわりと着地した。

 会場のすぐ脇の地面には巨大な穴が開いていて、もうもうと土煙が立ち上っている。

 ツォーンが落下した衝撃でできた穴だろう。



 あまりの速度で突っ込んだから、クレーターができたのだ。

 が、俺は知っている。この程度でくたばる奴が、四天王などと呼ばれるわけがないということを。



「さっさと上がって来い。次の一撃で、決着をつけてやる」

「……くっくっく。はっはっはっは!」



 不意に穴の奥から笑い声が響いてくる。

 刹那、穴の中から人影が勢いよく飛び出し、俺と10数メートルの間を開けて立った。



「何がそんなに可笑しいんだ?」

「貴様の目的はよく知らんが、レーネ王女を助けたということは、王国の人間を殺されたらマズい事情があるんだろう?」



 ツォーンは、服に付いた土を払いながら聞いてくる。



「……それがどうした?」

「いや。貴様は自分の勝利を微塵も疑っていないようだが……生憎と、貴様は敗北する。最初に言ったろう? 「お前の目的が、私の邪魔をすることだというのなら……どう足搔いてもお前に勝ち目はない」と」

「そうだな」



 確かにそんなことを言っていたっけ。

 ツォーンは白い歯を見せて不敵に笑いながら、得意げに言葉を続けた。



「今、この会場の中には貴様の仲間が捉えた私の部下が全員いて……さらに、王国の人間もまだ避難が完了していない。だからこそ、
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