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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編

第42話 決戦は星空の下

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 構えた刀の刀身に、フロルの固有スキル《燦花さんか》で生み出した光の花びらが集ってゆく。

 その光は刀身を華やかに染め上げてゆき――



「《燦花》――花吹斬はなふぶきッ!」



 振りかぶった刀を大きく振るった瞬間、フロルを中心に巨大な竜巻が立ち上る。

 渦巻く風は桃色の花びらを纏い、ダンスホールの天井を吹き飛ばした。



「んなっ!」

「なんだあの!」

「桃色の花びらで、天井を薙ぎ払いやがった!」



 その場にいた全員が、驚愕に目を剥く。

 ツォーンですら、俺に向けていた意識をわずかにフロルの方へ裂いた。



「上出来だフロル。ここからは、俺が蹂躙させてもらおう」

「行ってらっしゃい、主様マスター



 フロルは刀を鞘に収め、軽く会釈する。

 俺は歪んだ手すりに足をかけ、ぼそりと呟いた。



「《疾風足ジェット・ラン》」



 刹那、手すりを蹴ると同時に圧縮された風が後方へ吹き荒れ、俺の身体は弾丸のような速度でツォーンめがけて飛んだ。

 その初速は凄まじく、かつてレイズの攻撃から逃げ回ったときとは比較にもならない。



 残像すらその場に置いていき、ツォーンが瞬きに目を閉じる速度より尚速く、懐に飛び込んでいた。



 地面に左足を突き立てて体勢を変えつつ、右足を力任せに突き上げる。

 爪先がツォーンの腹部を捉え、ぽっかりと口を開けた上空へ蹴り飛ばした。



 それを追うように、俺も地面を蹴って遙か上空へとジャンプしたのだった。



 ――。



「いた」



 上空5000メートル付近。



 雲より遙か上に飛んだ俺は、星が瞬き始めた紺色とオレンジの混ざり合う空の下で、落ちていくツォーンを見つけた。



「驚いた。まさか、一蹴りでここまで飛ばされるとは思わなかったぞ」



 ツォーンもまた、俺を見つけると忌々しげに毒突いた。

 

「そりゃどうも。お望みなら何百発でも吹き飛ばしてあげるけど?」

「たわけ。次はないわ」



 ツォーンは足下に水を出し、まるでサーフィンのように空を滑りながら俺の方へ向かってくる。

 俺もまた「《疾風足ジェット・ラン》」を起動して足に風を纏い、空を蹴って肉薄する。



「覚悟しろ仮面野郎! 《水剣》ッ!」



 空を滑り降りながら、ツォーンはその手に水の剣を携える。

 俺は、起動する魔法を悟られないよう右手で口を被った。



「《状態異常スペシャル》起動、《――》を作成! 火属性魔法に合成する!」



 《状態異常スペシャル》で造り出したと火属性魔法とを融合した《紫炎》を手から放出させて。

 吹き出した紫色の炎は、一本の剣を象る。

 名付けるなら――《紫炎剣》。



 ツォーンは青い水の剣を。

 俺は紫の炎の剣を。



 互いに構え、落下しながら肉薄する。

 彼我の距離はみるみる詰まり――



「はぁああああああああっ!」

「たぁああああああああっ!」



 雄叫びとともに、構えた剣を振り抜いた。

 互いの剣が、真っ向からぶつかり衝撃波を撒き散らす。



 誰も見ていない、二人だけの空の下。

 青と紫の光が、真っ向から大激突する。



 今ここに、最凶を越える男――《紫帝してい》カイム=ローウェンと。

 現最凶の懐刀たる四天王が一翼――《水龍》ツォーン=レフィストスの戦いが、幕を開けた。
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