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第2話 家族の仕打ち
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いつか絶対、お前らを越えてやる! テメェらみたいな人間の歩めない、幸せな人生を送ってやる!
などと決意したのはいいものの、俺の幸せを掴むまでの道のりを悉く塞いでいるのは、2人の兄だけではない。
俺を産むだけ産んでおいて、攻撃魔法の才能がないとわかった瞬間、ぞんざいに扱い始めた両親も一緒だった。
――。
時間は流れ、その日の夜。
「今日はオウルちゃんが新しい魔法を覚えたから、ご馳走よぉ!」
「たくさん食べて大きくなれよ、オウル!」
「おう、もちろんだ父さん、母さん」
ローストチキンにトマトスープ、シュリンプカクテルにフリットなど、いつもより数段豪華な食卓。
今日は、人を痛めつけるための魔法を新しく習得したバカ兄のために、両親がご馳走を作ったらしい。
けれど、その食卓に当然俺の席はない。
長テーブルを両親とオウル、カースで囲み、俺はというと床に座らせられている。
「ふん、お前にはこれくらいで丁度良いだろ」
ローストチキンを切り分けていたクソ親父のロベルトは、俺用の洗っていない皿に残った骨だけを載せて放り投げてきた。
「っ!」
慌ててキャッチした俺は、僅かに肉がついている骨をしゃぶって、タンパク質を補給する。
どんなに惨めだろうが、少しでも身体を強くするために。
「ぎゃははははははは! やべぇ、クッソ面白ぇ! 野良犬みたいに齧り付いてやがる!!」
オウルはひとしきり笑い飛ばしたあと、俺に向かってスープの入った皿を投げてきた。
「ほらよワンちゃん、おかわりだぜ!」
ガシャン! と音を立てて食器が割れ、破片が皮膚に突き刺さる。
思わず顔をしかめる俺の方へオウルはズカズカ歩いてくると、足で思いっきり俺の頭を踏みつけた。
べしゃりと、俺の顔全体が熱いスープに浸される。
「熱ッ!!」
顔中が焼けただれるような痛みを感じ、反射的に顔を上げようとするが、オウルに後頭部を踏みつけられているため身動きがとれない。
「――ッ!!」
「お前何嫌がってんだよ。卑しいお前にはサイコーのご褒美だろ? そのまま床ごとスープ嘗めろよ、なぁ!?」
「オウル、その辺にしておきなさい。そんなできそこないに構っていると、せっかくの料理が冷めてしまうぞ」
「ちっ、わかってるって父さん」
オウルは興が削がれたとばかりに舌打ちして、一発俺の脇腹を蹴って席に戻っていった。
「うぐっ……げほっ、ごほっ!」
俺はようやくスープから顔を離すと、仰向けになって激しく咳き込んだ。
「まあ、床に寝っ転がるなんて……なんて行儀の悪い子なのかしら。私達の子どもだなんて、思いたくもないわ」
母が、俺を冷たく一瞥して忌々しそうに呟くのが聞こえた。
それっきり、両親と2人の兄が俺に何かしてくることはなかった。
いや、まるでそこに何もいないかのように、ガン無視を決め込んだのだ。
元々、長男のカースだけはイジメてくることこそ滅多にないが、酷い扱いを受けているのに助けてくれることもなかった。
まるで、俺になんの興味もないかのように。
それがかえって不気味で、恐ろしくて、信用することは未だにできないのだ。
だから、俺にとってはこの場にいる全員が敵だった。
「くそっ、このままじゃ終わらせない。ゼッタイに!」
俺は、皆に聞こえないくらいの声の大きさで、喉の奥から絞り出すように呟く。
奥歯を食いしばり、ひたすら拷問と言える一日が終わるのを待った。
この長い一日が終わり、屋敷にいる全員が寝静まった深夜。
家族の鼻を明かすための特訓が始まるのだ――
などと決意したのはいいものの、俺の幸せを掴むまでの道のりを悉く塞いでいるのは、2人の兄だけではない。
俺を産むだけ産んでおいて、攻撃魔法の才能がないとわかった瞬間、ぞんざいに扱い始めた両親も一緒だった。
――。
時間は流れ、その日の夜。
「今日はオウルちゃんが新しい魔法を覚えたから、ご馳走よぉ!」
「たくさん食べて大きくなれよ、オウル!」
「おう、もちろんだ父さん、母さん」
ローストチキンにトマトスープ、シュリンプカクテルにフリットなど、いつもより数段豪華な食卓。
今日は、人を痛めつけるための魔法を新しく習得したバカ兄のために、両親がご馳走を作ったらしい。
けれど、その食卓に当然俺の席はない。
長テーブルを両親とオウル、カースで囲み、俺はというと床に座らせられている。
「ふん、お前にはこれくらいで丁度良いだろ」
ローストチキンを切り分けていたクソ親父のロベルトは、俺用の洗っていない皿に残った骨だけを載せて放り投げてきた。
「っ!」
慌ててキャッチした俺は、僅かに肉がついている骨をしゃぶって、タンパク質を補給する。
どんなに惨めだろうが、少しでも身体を強くするために。
「ぎゃははははははは! やべぇ、クッソ面白ぇ! 野良犬みたいに齧り付いてやがる!!」
オウルはひとしきり笑い飛ばしたあと、俺に向かってスープの入った皿を投げてきた。
「ほらよワンちゃん、おかわりだぜ!」
ガシャン! と音を立てて食器が割れ、破片が皮膚に突き刺さる。
思わず顔をしかめる俺の方へオウルはズカズカ歩いてくると、足で思いっきり俺の頭を踏みつけた。
べしゃりと、俺の顔全体が熱いスープに浸される。
「熱ッ!!」
顔中が焼けただれるような痛みを感じ、反射的に顔を上げようとするが、オウルに後頭部を踏みつけられているため身動きがとれない。
「――ッ!!」
「お前何嫌がってんだよ。卑しいお前にはサイコーのご褒美だろ? そのまま床ごとスープ嘗めろよ、なぁ!?」
「オウル、その辺にしておきなさい。そんなできそこないに構っていると、せっかくの料理が冷めてしまうぞ」
「ちっ、わかってるって父さん」
オウルは興が削がれたとばかりに舌打ちして、一発俺の脇腹を蹴って席に戻っていった。
「うぐっ……げほっ、ごほっ!」
俺はようやくスープから顔を離すと、仰向けになって激しく咳き込んだ。
「まあ、床に寝っ転がるなんて……なんて行儀の悪い子なのかしら。私達の子どもだなんて、思いたくもないわ」
母が、俺を冷たく一瞥して忌々しそうに呟くのが聞こえた。
それっきり、両親と2人の兄が俺に何かしてくることはなかった。
いや、まるでそこに何もいないかのように、ガン無視を決め込んだのだ。
元々、長男のカースだけはイジメてくることこそ滅多にないが、酷い扱いを受けているのに助けてくれることもなかった。
まるで、俺になんの興味もないかのように。
それがかえって不気味で、恐ろしくて、信用することは未だにできないのだ。
だから、俺にとってはこの場にいる全員が敵だった。
「くそっ、このままじゃ終わらせない。ゼッタイに!」
俺は、皆に聞こえないくらいの声の大きさで、喉の奥から絞り出すように呟く。
奥歯を食いしばり、ひたすら拷問と言える一日が終わるのを待った。
この長い一日が終わり、屋敷にいる全員が寝静まった深夜。
家族の鼻を明かすための特訓が始まるのだ――
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