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四章 二つ目の国

働いた青の夕食

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「見た目は厳つかったけど、味はいいね」
 
 解体したトカゲをギルドに納品した後、僕達は夕食にトカゲ肉のステーキを選んで食べていた。
 トカゲという点で不安ではあったんだけど、思ったより癖はなく、どこか鶏肉に近い感じだ。
 しかもこの街は野菜がよく取れるからか、なかなか今まで見ることがなかった新鮮なサラダが食べられた。シャキシャキの食感と爽やかさがお肉に良く合う。
 アランはというと僕の倍以上の肉を平然と食べている。
 その胃袋にはびっくりだ。
 勿論今回もエール禁止令を出した。伝えた時、彼は不満そうな顔で文句を言っていたが、僕の「アランのえっち」の一言で撃沈していた。
 今のところ寄った時のやらかし率100%だからね。許されないよ。
 
「なぁ、メルタ。一杯くらいーー」
「だめ」
 
 ええい、未練がましい。ダメなものはダメだよーだ。
 彼、結局なんも覚えてないもんだから、反省のしようがないんだよね。
 とはいえ、ここで許してしまったら元も子もない。ここは心を鬼にしておかないと。
 うん、でも思ったよりイワトカゲは美味しい。脂がそこまでギトギトしていないのも僕的には高得点だ。
 ぱさぱさしてない鶏肉とでもいったらいいだろうか。濃いめに味付けされたソレはパンの味によく馴染む。うん、エールにも良く合うだろうね。
 
「もう、一杯だけね」
 
 もう犬が飼い主におやつをねだる時の目というか、そんな物欲しそうな目でじーっと見られたら僕も折れてしまった。
 でも一杯だけだ。そして僕も一杯くらいはいいだろう。
 しばらく待って届いたエールを口にしてステーキを食べれば、程よい脂と旨味を感じた後にエールの爽快さがそれをすっきりと後味よく流してくれる。これは、良いものだ。
 しかもこのお祭りの期間中エールは無料ときてるからお金の消費を抑える意味でエールを飲むのは仕方ない。仕方ないよね。
 食べて飲んで、気がつけば空になって、また頼んで……
 気がつけば結局僕もアランも4杯くらいエールを開けてしまっていた。
 このくらいだとまだアランは意識はしっかりしてるらしく、目はぼーっとしているが、こちらへの対応はいつも通りだ。対して僕はというと、ちょっと頭の中がふにゃふにゃし始めている。なんだろう酔っ払った時の一番の高揚感が得られるポイントというかなんというか。
 アランへの言葉も脳を介さずに出てしまっているというか。
 そんなにアルコール度数が高いものとは思ってなかったんだけどなぁ。再び目の前のジョッキが空になる。
 お肉はまだのこってる、まだのめる。
 通りがかった宿のお姉さんに追加のエールを頼む。肉体労働したあとだし、体がエールを求めているのだー。
 
「おい、メルタ飲みすぎじゃないのか?」
「だいじょーぶー。飲んでもぉ、アランみたいにはれんち、しない」
 
 全然大丈夫、届いたエールを煽って、肉を食べる。んふふふふソーセージも美味しいですなぁ。エールも飲んでー
 
「ないなった……」
「いや、お前今日は俺以上に飲んでるって……」
「ないなったー!」
「メルタ、酔ってるからそろそろおしまいにしとこう。な?」
「まぁだ、平気ー」
「どう見ても平気じゃねぇよ、ほら立って歩けるか?」
 
 後ろから両脇を持って立たされる。足元はふらつくがしっかりあるけるもーん
 
「見ててあぶねぇよ……」
 
 肩を掴まれて支えてくれる。これじゃ前回と立場が逆転して僕が酔っ払いみたいじゃないか。
 
「酔ってませぇん!」
「いや、これ以上ねぇほど酔ってるよ」
 
 しっかり意思表示をしてみるも、アランは許してくれないらしい。もうちょっと食べてたかったのにー
 
「ほら、もう肩かすから大人しく寝に行こうぜ」
 
 歩くというより半ば引きずられるように部屋まで連れ込まれる。
 
「きゃー、部屋に引きずり込むだなんてー、アランだいたーーん」
「おんなじ部屋だろうがよ……」
「ねー、あーらーんー」
 
 僕をベッドに放り投げて去っていく彼の背中に声をかける。
 
「ぎゅーしよぎゅー」
「酔っぱらい相手にできっかよ、寝とけって」
「やだぷー」
 
 僕に背を向けて寝る準備を進める彼の体にのしかかる。
 
「おま、ちょ! 落ち着けって!」
「アランくんの体も筋肉質ですなぁ。岩トカゲみたいな味する?」
「するわけねぇだ、のわぁ!」
 
 一口かじってみるも、普通の塩味だ。でも僕タレより塩派なんだよね。そのまま続いて首筋をあぶあぶと味わう。
 彼は無抵抗かと思いきや僕を肩にぶらさげたまま立ち上がり、そのまま背中を僕のベッドにのっけてきた。つまり僕がよこになってそこにアランが載っている形だ。
 
「頭冷やせよー」
 
 僕の引き剥がしに成功したアランが離れていく。
 アランなのに冷静だなんておかしい、きっと酔っ払ってるんだなー。
 今度はベッドであぐらをかいてる彼の膝の上に仰向けダイブ。
 
「アランはーもうちょっと僕を構うといいよー」
 
 膝の上でごろごろ動き回る。
 
「お前、猫かなんかじゃないんだからよ……」
 
 視線を反らせながらも僕の頭を撫でてくれる。
 
「にゃーん」
「お前絶対酔ってる、そんなのいうキャラじゃねぇだろ」
「ごろーん」
 
 今の僕はお酒に思考中枢をやられているのだ。それでもしばらく放置した分構うがよいぞー。
 
「寝るなら寝るで、風邪引くから布団はいれって」
「こっちでねーるー」
「もう好きにしろよ……」
 
 この日のやり取りは酔っ払いの勢いで僕の勝利に終わった。
 翌日頭を抱えて転げ回る羽目になることさえ除けば、久々の完全勝利だった。
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