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3.尋問
しおりを挟む外国のお城のような建物を出て、アステールに押し込まれるように乗り込んだのは豪奢な馬車だった。
僅かに揺れるが、酔うほどじゃなく、寧ろ心地良いくらいの軽く穏やかな振動で馬車は走って行く。
門を出て街中を抜け、高い城壁を潜る頃にはうとうととしてしまうほど、その乗り心地は良かった。
「眠たければ寝ても構わない」
監視してるように見せる為だと隣に座ったアステールに馬車に乗ってから、初めて話し掛けられた。
優しい低音に誘われるまま、本格的に瞼が重くなる。
返事しようと開いた口からは吐息が溢れるだけ。そんな様子を察したのか、アステールの肩に寄りかかるように腕を回される。
触れ合った場所から伝わる他人の体温に安堵し、ゆっくりと目を閉じた。
肩を揺すられて目を覚ましたのは、馬車ではなく知らない部屋の中。いつの間にか大きなベッドに寝かされていた。
「ここは……?」
「宿屋だ」
短い言葉に振り向くと、アステールが無表情にこちらを見ていた。
「夜間の移動は危険だから宿を取った。ーーそんなことより、訊きたいことがある」
射抜くような鋭い視線が僕を捉える。
「訊きたいこと、ですか」
「身体中にある痣はどうしたものだ?」
その言葉にハッとして体を見ると、元から着ていた服ではなく、白い清潔なパジャマに着せ替えられていた。
脱がされた時にクラスメイトや由里香自身に付けられた怪我の痕を見られてしまったんだろう。
正直に話して、由里香にやられたと言って信じてもらえるだろうか。
嘘つきだと罵られ、捨てられるかもしれない。
由里香は王太子に連れられて行った。よく分からないけど、国の重要人物の庇護下にあるということだろう。
そんな相手に傷つけられたと偽証を疑われたら……
「……転んだんです」
声が震えないように気をつけながら呟く。
「何だと?」
「階段から、落ちて、それで……」
「痣は古いものも真新しいものもあった。お前は何度も階段から落ちたのか」
真偽を見抜くような視線に耐えられず、俯きながら言葉を続ける。
「そうです……」
気まずい沈黙が落ちた。
呼吸することすら、怖くなり息を詰めていると、アステールが溜め息を吐くように長く息を吐き出す。
「分かった。お前がそう言うなら、今はそれで構わない」
「……」
「取り敢えず、飯にしよう。隣の部屋に用意させた。ーーと、そうだ。肝心なことを聞き忘れていた。俺はアステール・オルムバーン。お前の名前を教えてくれるか」
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