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第二章
第二十四話
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「ティナさん!」
「あ。レインさん……」
俺はギルドに戻り、即ティナさんに声をかけるが、相変わらず元気がない。あのティナさんの笑顔もない。
「クエストですか?」
「いいえ。今日は違います。今日は、10階層に行こうかと」
「10階層⁉」
10階層。まだ3階層を冒険している俺たちにはまだまだ早い。ティナさんがこうして驚くのも無理はない。
「レインさんが強いのは知っていますが、それでも10階層攻略は早すぎます! サポーターとして、到底許可できません」
「ティナさん。私たちはオーガの心臓を取りに行きます」
セレナのその言葉に、ティナさんが息を呑むのが分かった。俺たちには行かせられない。が、万が一という期待。その狭間で揺れているに違いない。
「ティナさん。レインのお姉さんが、例の薬を調合できる、という事でした。オーガの心臓以外の素材は、すべて揃っている。任せてもらえませんか?」
「ですが、危険すぎますよ! みなさん、まだ攻略し終わっていない階層がたくさんあるんですよ? 一足飛びに10階層に行って、死んでしまったらどうするんですか!」
「死にませんよ」
俺は言い切った。
ティナさんは息を呑む。
「俺は、死にません。そして、ティナさんのお母さんを救って、ティナさんに笑ってもらう。これは、俺の我がままです。だから、もし行かせないといわれても、俺たちは行きます。冒険者ですから」
冒険者は冒険をしてなんぼ。
冒険しない冒険者など、死者と同義だ。
「ですが……」
「ティナさんは、ただ信じて待っていてください。俺たちが帰ってくるのを。絶対に、救いましょう」
「レインさん……」
ティナさんはそれでも決断を下せないようだった。
そんな時、ティナさんの背後からアルマさんが姿を現す。
「いいんじゃない? 行ってきなよ」
「へ? アルマさん⁉」
突然の登場に、ティナさんが驚いた声を出す。
「ティナの為に、冒険者が冒険しようとしている。そんな時、サポーターがするのは信じる事。ティナには教えたはずだよ?」
「あっ……」
アルマさんに聞いた相棒の話。
「ですが、万が一があったら……」
「その時はその時。手厚く葬ってやればいい」
「死ぬ話はやめてください……」
セレナはぶるっと震えた。内心は怖いらしい。
「はは。いきなり10階層に行くんだから、死ぬ覚悟はしておかなきゃだよ。だよね、レイン君?」
「要りませんね、そんな覚悟は」
「へぇ?」
「俺は生きて帰ります。そして、ティナさんのお母さんを救う。それが、俺の選択した未来ですから」
俺の答えがお気に召したのか。アルマさんの口元にはニヤリと笑みが浮かぶ。
「ふふ、やっぱりレイン君は面白い。ティナが許可しなくても、私が許可する。いいよ、行っておいで、冒険者。ほら、ティナも!」
アルマさんはティナさんの背中を叩く。ティナさんは少し逡巡したが、やがて顔を上げる。
その目元には、薄っすらと涙が浮いていた。
「皆さん、ありがとうございます。こんな事、サポーターの私が我がままで言っていいのか分かりませんが……。私に、力を貸してください!」
「もちろんです」
リアもセレナも、俺に続いて頷いた。
俺は必ず、オーガの心臓を持ち帰る!
「あ。レインさん……」
俺はギルドに戻り、即ティナさんに声をかけるが、相変わらず元気がない。あのティナさんの笑顔もない。
「クエストですか?」
「いいえ。今日は違います。今日は、10階層に行こうかと」
「10階層⁉」
10階層。まだ3階層を冒険している俺たちにはまだまだ早い。ティナさんがこうして驚くのも無理はない。
「レインさんが強いのは知っていますが、それでも10階層攻略は早すぎます! サポーターとして、到底許可できません」
「ティナさん。私たちはオーガの心臓を取りに行きます」
セレナのその言葉に、ティナさんが息を呑むのが分かった。俺たちには行かせられない。が、万が一という期待。その狭間で揺れているに違いない。
「ティナさん。レインのお姉さんが、例の薬を調合できる、という事でした。オーガの心臓以外の素材は、すべて揃っている。任せてもらえませんか?」
「ですが、危険すぎますよ! みなさん、まだ攻略し終わっていない階層がたくさんあるんですよ? 一足飛びに10階層に行って、死んでしまったらどうするんですか!」
「死にませんよ」
俺は言い切った。
ティナさんは息を呑む。
「俺は、死にません。そして、ティナさんのお母さんを救って、ティナさんに笑ってもらう。これは、俺の我がままです。だから、もし行かせないといわれても、俺たちは行きます。冒険者ですから」
冒険者は冒険をしてなんぼ。
冒険しない冒険者など、死者と同義だ。
「ですが……」
「ティナさんは、ただ信じて待っていてください。俺たちが帰ってくるのを。絶対に、救いましょう」
「レインさん……」
ティナさんはそれでも決断を下せないようだった。
そんな時、ティナさんの背後からアルマさんが姿を現す。
「いいんじゃない? 行ってきなよ」
「へ? アルマさん⁉」
突然の登場に、ティナさんが驚いた声を出す。
「ティナの為に、冒険者が冒険しようとしている。そんな時、サポーターがするのは信じる事。ティナには教えたはずだよ?」
「あっ……」
アルマさんに聞いた相棒の話。
「ですが、万が一があったら……」
「その時はその時。手厚く葬ってやればいい」
「死ぬ話はやめてください……」
セレナはぶるっと震えた。内心は怖いらしい。
「はは。いきなり10階層に行くんだから、死ぬ覚悟はしておかなきゃだよ。だよね、レイン君?」
「要りませんね、そんな覚悟は」
「へぇ?」
「俺は生きて帰ります。そして、ティナさんのお母さんを救う。それが、俺の選択した未来ですから」
俺の答えがお気に召したのか。アルマさんの口元にはニヤリと笑みが浮かぶ。
「ふふ、やっぱりレイン君は面白い。ティナが許可しなくても、私が許可する。いいよ、行っておいで、冒険者。ほら、ティナも!」
アルマさんはティナさんの背中を叩く。ティナさんは少し逡巡したが、やがて顔を上げる。
その目元には、薄っすらと涙が浮いていた。
「皆さん、ありがとうございます。こんな事、サポーターの私が我がままで言っていいのか分かりませんが……。私に、力を貸してください!」
「もちろんです」
リアもセレナも、俺に続いて頷いた。
俺は必ず、オーガの心臓を持ち帰る!
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