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16話「配信」
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スマホを確認すると、斑目がライブ配信を始めたという通知が入っていた。
通知をタップすると、芸能人や配信者がよく使っている配信専用アプリに飛ぶ。
画面には、つい先程まで隣にいた斑目の姿が映っていた。画面越しに目が合う。
斑目は雑誌の中のような大人びた笑みを浮かべた。
「お待たせ、みんな。配信遅刻しちゃってごめんな」
チャット欄にリスナーのコメントが次々表示されては上に流れて消えていく。
『全然待ってないよ!』
『配信ありがとう』
『カイくん今日もビジュ良すぎ!』
『カッコいい』
『仕事終わり?』
猫も杓子もインターネットを利用する昨今、ライブ配信は知名度を高めるための重要なツールとなっている。
誰もが手軽に利用できるうえに、メインターゲットとなる若年層の目に留まりやすいからだ。
それに、他のコンテンツと比べてファンとの距離が近くなりやすいから、熱心なファンを確保することができる。
例に漏れず、斑目も定期的にライブ配信を行なっている。
数ヶ月に一度の頻度で事務所のチャンネルで行われる赤槻とのコラボ配信は、「かなカイ」ファンの間でも需要が高い。
『この間彼方くんが出てるドラマ見たよ。めっちゃよかった!』
「あー、あれ良かったよね。原作が少女漫画だって知ってすげーびっくりした。
少女漫画って恋愛系の話しかないのかと思ってたけど、色んな話があるんだね」
『少女漫画はSFとか結構あったりするよ』
『原作もおすすめだから読んでみて』
『カイは普段漫画とか読んだりする?』
「漫画かー。昔はよく読んでたんだけど、今はそんなにかな。
でも広告とかで気になったのは電子版買って読んだりする。おすすめの漫画とかあったりする?」
女の子と話せてんじゃん、普通に。画面越しだったら大丈夫なんだろうか。
話題はリスナーの好きな漫画の話から、今流行っているドラマや映画の話に変わっていく。
斑目は流れてくるコメントを適度に読み流しながら、友達と喋るような気軽さで相槌を打つ。
『かなたくんが載ってる雑誌買ったよ』
『次はいつかなカイで配信やんの?』
『彼方くんがこの間2人で焼き肉行ったって話してたよ』
それにしても、かなりの頻度でチャット欄に赤槻の名前が出てくる。
斑目の配信を見るのはこれが初めてだが、斑目の態度から見るにいつものことなのだろうか。
「うん。行ったよ、焼き肉。
奢ってくれるっていうから、高い肉食いまくってやろうって思ったら普通にコース料理頼まれた。
一番安いやつ。あいつそういうとこしっかりしてんのよ」
『流石かなたwww』
『先輩に高い肉奢らせようとしないで笑笑』
「先輩だけど友達だから良いの。それにこの間は僕が奢ったんだから、これでおあいこです」
『前も2人で食べに行ったの?』
「仕事で一緒のことが多いからね。撮影終わりは大体どっちかがご飯に誘うかなって感じ」
『彼方のおかげで人気になることができた。
でも、もしあの人がいなかったら今の僕はなかったのかもしれない、僕を好きになってくれる人はいなかったのかもしれないって思うと、なんだか凄く胸にぽっかりと穴が空いたような気分になります。
苦しくなるんです。今の僕は一体なんなんだろうって』
斑目がそう言っていたのを思い出す。
あの時は斑目が俺に同情してそんなことを言ったのだと思っていたが、もしかするとあれは斑目の本音だったのだろうか。
「来週くらいに彼方と配信する予定だから、また予定がはっきりしたらみんなに言うね」
画面の向こうの斑目は、曇りのない笑顔を浮かべて俺を見ている。
俺はその時初めて、斑目のことを芸能人なのだと思った。
すぐ近くにあったものが、遠くに行ってしまったような気分だった。
通知をタップすると、芸能人や配信者がよく使っている配信専用アプリに飛ぶ。
画面には、つい先程まで隣にいた斑目の姿が映っていた。画面越しに目が合う。
斑目は雑誌の中のような大人びた笑みを浮かべた。
「お待たせ、みんな。配信遅刻しちゃってごめんな」
チャット欄にリスナーのコメントが次々表示されては上に流れて消えていく。
『全然待ってないよ!』
『配信ありがとう』
『カイくん今日もビジュ良すぎ!』
『カッコいい』
『仕事終わり?』
猫も杓子もインターネットを利用する昨今、ライブ配信は知名度を高めるための重要なツールとなっている。
誰もが手軽に利用できるうえに、メインターゲットとなる若年層の目に留まりやすいからだ。
それに、他のコンテンツと比べてファンとの距離が近くなりやすいから、熱心なファンを確保することができる。
例に漏れず、斑目も定期的にライブ配信を行なっている。
数ヶ月に一度の頻度で事務所のチャンネルで行われる赤槻とのコラボ配信は、「かなカイ」ファンの間でも需要が高い。
『この間彼方くんが出てるドラマ見たよ。めっちゃよかった!』
「あー、あれ良かったよね。原作が少女漫画だって知ってすげーびっくりした。
少女漫画って恋愛系の話しかないのかと思ってたけど、色んな話があるんだね」
『少女漫画はSFとか結構あったりするよ』
『原作もおすすめだから読んでみて』
『カイは普段漫画とか読んだりする?』
「漫画かー。昔はよく読んでたんだけど、今はそんなにかな。
でも広告とかで気になったのは電子版買って読んだりする。おすすめの漫画とかあったりする?」
女の子と話せてんじゃん、普通に。画面越しだったら大丈夫なんだろうか。
話題はリスナーの好きな漫画の話から、今流行っているドラマや映画の話に変わっていく。
斑目は流れてくるコメントを適度に読み流しながら、友達と喋るような気軽さで相槌を打つ。
『かなたくんが載ってる雑誌買ったよ』
『次はいつかなカイで配信やんの?』
『彼方くんがこの間2人で焼き肉行ったって話してたよ』
それにしても、かなりの頻度でチャット欄に赤槻の名前が出てくる。
斑目の配信を見るのはこれが初めてだが、斑目の態度から見るにいつものことなのだろうか。
「うん。行ったよ、焼き肉。
奢ってくれるっていうから、高い肉食いまくってやろうって思ったら普通にコース料理頼まれた。
一番安いやつ。あいつそういうとこしっかりしてんのよ」
『流石かなたwww』
『先輩に高い肉奢らせようとしないで笑笑』
「先輩だけど友達だから良いの。それにこの間は僕が奢ったんだから、これでおあいこです」
『前も2人で食べに行ったの?』
「仕事で一緒のことが多いからね。撮影終わりは大体どっちかがご飯に誘うかなって感じ」
『彼方のおかげで人気になることができた。
でも、もしあの人がいなかったら今の僕はなかったのかもしれない、僕を好きになってくれる人はいなかったのかもしれないって思うと、なんだか凄く胸にぽっかりと穴が空いたような気分になります。
苦しくなるんです。今の僕は一体なんなんだろうって』
斑目がそう言っていたのを思い出す。
あの時は斑目が俺に同情してそんなことを言ったのだと思っていたが、もしかするとあれは斑目の本音だったのだろうか。
「来週くらいに彼方と配信する予定だから、また予定がはっきりしたらみんなに言うね」
画面の向こうの斑目は、曇りのない笑顔を浮かべて俺を見ている。
俺はその時初めて、斑目のことを芸能人なのだと思った。
すぐ近くにあったものが、遠くに行ってしまったような気分だった。
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