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会社編(1)

僕の日常(4)

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土曜日の週末修行を終えて月曜日に出社し、いつも通り仕事を始める。しかし、僕の変化に気がついたのは鈴木さんだった。

「山田くん、おはよう!何か良いことあった?」
「はいっ!?そんなことある訳ないじゃないですか~」

僕は心当たりがなかったのでそう回答した。
しかし、女性の勘というのは鋭いようだ。鈴木さんが僕の耳元で囁いてきた。

「ふ~ん。なんだか、好きな人でもできたかのような顔してるからさ?」
「えっ!?」

僕は椅子を思わずぐっと下げてあたふたしてしまった。

「ふっ、図星のようね。どんな人なの?どこで出会ったの?」

「そ、そんな関係の人じゃありませんよ!ただ綺麗だなと思った人がいただけです!」

僕はそう答える。外勤の営業スタッフは既に出かけているようで、僕と鈴木さんの周囲にはほとんど人がいなかった。なのでこの会話を聞いている人もいない。

そのため、鈴木さんは声のトーンを普通に戻し、僕に語りかける。

「山田くん、入社直後の歓迎会で“何かあったら私に相談すること“って言ったのに、結局一度も恋愛相談をして来なかったじゃない。そして、一緒に仕事をしてきたけど、一度もそれっぽいことはなかった。だけど、今回は初めて山田くんの顔つきが違ったからね。ちょっと声をかけてみただけだから、気にしないで。ただ、山田くん。一つアドバイス。山田くんはもう35歳なんだから、あんまり弱気になっていちゃダメよ?もう同世代の男性だったら、結婚している人もいるし、子供も持っている人もいるのよ。いつまでも20代のように恋愛初心者で弱気になっていちゃダメなのよ?それは頭に入れておきなさい~!」

そう言って鈴木さんは椅子をくるっと回転させて、自分の仕事に戻った。

僕は何も言えなかった。鈴木さんからのアドバイスに対して、うんともすんとも、お礼すらも。



確かに、名前だけは知っているキャビンアテンダントに恋をするなんて、一般人からすると無謀だと思う。もっと現実を見なきゃいけないと思う。だけど、稲妻に打たれたような初恋のドキドキ感は今でも忘れられないんだ。そりゃ、童貞の僕にとっては他にも恋に落ちそうになった人はいるが、初恋の人は特別なんだ。

どうすれば藤咲さんとお近づきになれるんだろうか。

このモヤモヤを持っていたが、これは鈴木さんに相談することはできなかった。なぜだか分からない。僕の中で恋愛初心者の殻を破れていないのかもしれない。もしくはそれ以前に、人として決断力に欠けるのかもしれない。色々と考えることが多くて嫌になる。僕は単に藤咲さんのことが好きなだけなのに。
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