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修行1日目

1フライト目:羽田→那覇(8)

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僕は機内誌を閉じて前方のシートポケットに元通りに返却した。そして再び窓の外に目を向ける。

既に陸地からは遠ざかっているようで、一面青い海が広がっていた。

所々に浮かぶ小さな白い雲。

自分は今、本当に飛んでいることを実感している。
だって、地上で見る雲よりも高い青い空にいるのだから。



ドリンクサービスは藤咲さんではない別のキャビンアテンダントが対応していた。おそらく藤咲さんはビジネスクラスの担当だろう。なぜならこの便で一番の責任者だからだ。

“チーフパーサー“という単語を今まで聞いたことがなかったので、こちらもググってみた。キャビンアテンダントは一つのチームを組んでシフトが組まれているようで、そのチームを率いるのが白いジャケットの制服を纏ったチーフパーサとのこと。そのため、藤咲さんは必然的にこの便の責任者ということになる。

「いつかは僕もビジネスクラスに乗ってみたいな」また、独り言でそう呟く。

その直後、さまざまなドリンクを積んだワゴンを引きながら、キャビンアテンダントの1人が話しかけてきた。

「お飲み物は何になさいますか?」
「温かいお茶を頂けますか?」
「かしこまりました。テーブルのご用意をお願いいたします」

そして、私はテーブルの収納されているツマミを回してテーブルを下ろし、温かいお茶を受け取った。

紙コップには航空会社のロゴが描かれており、今自分が飛行機に乗っていることを実感させられる。

とても熱かったので少し冷ますためにテーブルの穴の空いたカップホルダーに置き、また目線を窓の外に移す。相変わらず海が広がり、点々と白い雲が漂っている。



機内の天井に取り付けられたディスプレイを見ると、ちょうど羽田と那覇の中間地点まで来ているようだった。フライト時間にして1時間強。僕自身、最近はぼーっと過ごすことがなかったので、何もせずに時間が過ぎていくことが新鮮だった。出された温かいお茶を少しずつ飲みながら、窓の外の景色を眺める。行ったことのない島が時々見えているが、きっとあの島にも人は住んでいて生活している人がいることを考えると、日本の国土の細長さを感じる。

そんなたわいもないことを考えていると、瞼が閉じかかってきた。

飲み終えた紙コップを、袋を持って回収しているキャビンアテンダントに渡し、テーブルを元の場所に収納し、僕は仮眠をすることにした。

今日は東京と沖縄を2往復する予定だ。そのため、始発で移動していた身体を一旦休めることにした。目を閉じると、いつの間にか眠ってしまっていた。
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