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Chapter① 出会い 〜シュンside〜
男との再会(3)
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今日の乗務は気心の知れたチームだ。チーフパーサーも俺が入社間もない頃から指導をしてくれた優しくも厳しい女性だ。今日のチームには男性CAは俺のみ。出社してからチーフパーサーの作成したアサイン表に目を通し、そこには機体後方の普通席を担当することが書かれていた。
羽田伊丹路線は俺の中では最も乗務経験があるので、特に心配事はない。ただ、唯一あるとすると、さっきモノレールで出会した発展場の男が乗ってくることだ。
「そんな偶然、ある訳ないか」
俺は独り言を呟きながら、ブリーフィングを終えてチーム全員で機体のある搭乗口へと移動した。
客室乗務員の仕事はまさに時間との勝負で、搭乗口から乗客よりも先に機内に乗り込むと、備品チェックや安全機器の確認など、短時間で多くの業務をこなさなくてはならない。今では乗務する機体や担当エリアにも慣れ、手際よく乗客を迎える準備を進めている。
その時、チーフパーサーが声をかけてきた。
「シュンちゃん、今日は何かあったの?あまり笑顔が無いみたいだから意識しなさいよね」
「はい、わかりました」
俺は作り笑いをチーフパーサーに見せる。
「ハイッ、良く出来ました!今日も頼むわよ」そう言って機体の前方へと歩いていった。
俺は訓練期間中、笑顔が無いと指導されたことが何度もあった。大学の頃は笑顔は自然に表れるものだと思っていたが、社会人になり客室乗務員として訓練を受けるうちに、笑顔をしたくないときもしなければならないという習わしが俺の本当の感情を閉ざしてしまった気がしている。今日も乗客のために笑顔をしなければならない。そういう意識がこころの根底にはあるのだと思う。
だからと言って客室乗務員の仕事は嫌いではない。あちこちへと飛行機に乗って移動ができ、一期一会の乗客との出会いは素敵だと思っている。そしていつかは恋人の操縦する国際線に乗務したいという夢も密かに持っている。そのため、俺は今日も作り笑いをしながら、乗客に客室乗務員として接するのだ。
羽田伊丹路線は俺の中では最も乗務経験があるので、特に心配事はない。ただ、唯一あるとすると、さっきモノレールで出会した発展場の男が乗ってくることだ。
「そんな偶然、ある訳ないか」
俺は独り言を呟きながら、ブリーフィングを終えてチーム全員で機体のある搭乗口へと移動した。
客室乗務員の仕事はまさに時間との勝負で、搭乗口から乗客よりも先に機内に乗り込むと、備品チェックや安全機器の確認など、短時間で多くの業務をこなさなくてはならない。今では乗務する機体や担当エリアにも慣れ、手際よく乗客を迎える準備を進めている。
その時、チーフパーサーが声をかけてきた。
「シュンちゃん、今日は何かあったの?あまり笑顔が無いみたいだから意識しなさいよね」
「はい、わかりました」
俺は作り笑いをチーフパーサーに見せる。
「ハイッ、良く出来ました!今日も頼むわよ」そう言って機体の前方へと歩いていった。
俺は訓練期間中、笑顔が無いと指導されたことが何度もあった。大学の頃は笑顔は自然に表れるものだと思っていたが、社会人になり客室乗務員として訓練を受けるうちに、笑顔をしたくないときもしなければならないという習わしが俺の本当の感情を閉ざしてしまった気がしている。今日も乗客のために笑顔をしなければならない。そういう意識がこころの根底にはあるのだと思う。
だからと言って客室乗務員の仕事は嫌いではない。あちこちへと飛行機に乗って移動ができ、一期一会の乗客との出会いは素敵だと思っている。そしていつかは恋人の操縦する国際線に乗務したいという夢も密かに持っている。そのため、俺は今日も作り笑いをしながら、乗客に客室乗務員として接するのだ。
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