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プロローグ
心を持ったロボット
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「テストを始める」
ここは日本の極秘軍事研究所である。
今まさに人型AIロボット――iAC001――の完成テストが行われようとしていた。
iAC001――通称イアク――は潜入、暗殺、戦闘の頭文字をとってそう名付けられた。
このイアクは名前の通り潜入、暗殺、戦闘を行う、つまりスパイ活動を目的に開発しているロボットである。
そして、イアクは初号機でもある。
このAIロボットにはスパイ活動を行う為に感情を持たせる事が重要な事となる。
潜入先で人間らしく振舞えるようにである。
しかし、任務遂行のために余分な感情――恐怖心や生きたいと思うなど――を削除することが重要である。
また命令には絶対服従すると言った、要は上――イアクを使う者――にとって都合の良い感情を持ったロボットにすることが大切である。
研究員たちが所内を駆け回っている。
「所長、準備が整いました」
「これより、イアクシリーズ個体番号一番、個体名イアクのテストを始める」
所長がそう言うと研究室中にサイレンの音が鳴り響く。
「イアク、メインシステム起動」
「脳内温度正常」
「各パーツの稼働を確認」
「イアク、完全起動します」
イアクは完全に機械であるが、特殊合成繊維によって作られている為、見た目はもちろん質感なども人間の皮膚と遜色ない。
完全起動するとイアクは閉じていた目を開ける。
「おはよう。イアク君。私がだれか分かるかね?」
所長はマイクを用いて言う。
「は、はい。私を作ってくれた方です」
イアクには辞書に載っている単語と開発の経緯と関わった人物が初めにインプットされている。
その知識をベースとして、成長していく。
「正解だ。では目の前の食事を食べるんだ」
イアクはうなずくとそれを食べ始める。
普通の食事でエネルギーを取ることが出来るように設計されている。
「正常だな。次はこの写真を見てどう思う」
所長は大きなスクリーンに花畑の写真を映し出す。
「き、綺麗だと思いますです。」
「感情もまずまずか」
研究員がイアクに近づいて行く。
その研究員はアイスピックのようなものでイアクの腕を軽く突く。
「どんな感じがする?」
「少し痛いです」
「痛覚も異常なし。では、このバケツに入った塩酸を頭からかぶりなさい」
これは、イアクの恐怖心のテストであろう。
いざというときの情報漏洩を防ぐため、自分自身をめちゃくちゃに破壊しなければいけない。
イアクはそのバケツを両手で持つと頭の上でひっくり返した。
「しょ、所長! イアクの脳波に躊躇いに似た波形が観測されました」
研究員の一人が声を上げる。
「なに? 本当か」
塩酸を被った割には平気そうである。
「なぜ、躊躇ったんだ?」
「こ、怖かったです」
「それは水だった」
所長の顔が一瞬にして曇る。
「ダメだ、イアクは失敗、データを取ったのち処分だ」
ここは日本の極秘軍事研究所である。
今まさに人型AIロボット――iAC001――の完成テストが行われようとしていた。
iAC001――通称イアク――は潜入、暗殺、戦闘の頭文字をとってそう名付けられた。
このイアクは名前の通り潜入、暗殺、戦闘を行う、つまりスパイ活動を目的に開発しているロボットである。
そして、イアクは初号機でもある。
このAIロボットにはスパイ活動を行う為に感情を持たせる事が重要な事となる。
潜入先で人間らしく振舞えるようにである。
しかし、任務遂行のために余分な感情――恐怖心や生きたいと思うなど――を削除することが重要である。
また命令には絶対服従すると言った、要は上――イアクを使う者――にとって都合の良い感情を持ったロボットにすることが大切である。
研究員たちが所内を駆け回っている。
「所長、準備が整いました」
「これより、イアクシリーズ個体番号一番、個体名イアクのテストを始める」
所長がそう言うと研究室中にサイレンの音が鳴り響く。
「イアク、メインシステム起動」
「脳内温度正常」
「各パーツの稼働を確認」
「イアク、完全起動します」
イアクは完全に機械であるが、特殊合成繊維によって作られている為、見た目はもちろん質感なども人間の皮膚と遜色ない。
完全起動するとイアクは閉じていた目を開ける。
「おはよう。イアク君。私がだれか分かるかね?」
所長はマイクを用いて言う。
「は、はい。私を作ってくれた方です」
イアクには辞書に載っている単語と開発の経緯と関わった人物が初めにインプットされている。
その知識をベースとして、成長していく。
「正解だ。では目の前の食事を食べるんだ」
イアクはうなずくとそれを食べ始める。
普通の食事でエネルギーを取ることが出来るように設計されている。
「正常だな。次はこの写真を見てどう思う」
所長は大きなスクリーンに花畑の写真を映し出す。
「き、綺麗だと思いますです。」
「感情もまずまずか」
研究員がイアクに近づいて行く。
その研究員はアイスピックのようなものでイアクの腕を軽く突く。
「どんな感じがする?」
「少し痛いです」
「痛覚も異常なし。では、このバケツに入った塩酸を頭からかぶりなさい」
これは、イアクの恐怖心のテストであろう。
いざというときの情報漏洩を防ぐため、自分自身をめちゃくちゃに破壊しなければいけない。
イアクはそのバケツを両手で持つと頭の上でひっくり返した。
「しょ、所長! イアクの脳波に躊躇いに似た波形が観測されました」
研究員の一人が声を上げる。
「なに? 本当か」
塩酸を被った割には平気そうである。
「なぜ、躊躇ったんだ?」
「こ、怖かったです」
「それは水だった」
所長の顔が一瞬にして曇る。
「ダメだ、イアクは失敗、データを取ったのち処分だ」
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