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大団円の時間です
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で。
王宮にて報告を受けた国王は、ディー王子に詰め腹を切らせなくてはならないことに、悲しい顔をしたが、それも一瞬だった。
何せ、留学中のイー、ジー。
エイチ、アイ、ジェイ……は妾腹で、
ケィ、エル、エムは幼子で。
王子には事欠かないのだ。
そして、マルチでチートな才能のキャラであるエフと、絶対無敵な悪役令嬢Dのカップリングは、正妃の息子たるディーを廃嫡しても、お釣りがくるのである。
ご機嫌な国王は、参謀として育てていたエーの不手際もスルーして、A嬢との結婚は、卒業後、直ぐに!という勅令まで出した。
エーは今後、エフの傍らで、修行することとなる。
A嬢の思うつぼであった。
D嬢の傍らに居ないAを単独でしげしげと見ると、
背は若干高いものの、
やや女らしいシルエットには至らないものの、
切れ長だが大きな瞳や桜貝の唇は、可憐なのだった。
少なくとも、エーにとっては。
で、
エーは、喜んで勅令を賜った。
これでA嬢の嫁ぎ先の侯爵家も、万々歳なのであった。A嬢の行く末は明るいのである。
そして、シーは騎士団への入隊を仰せ付けられた。Cの伴侶になるための、箔付けである。
軍神C嬢が誰かにそそのかされないように!と、シーは毎日、遠方から、手紙だの贈り物だの、魔力のある御札だのを寄越している。
Cは、お熱い返事をしたり、多少の放置プレイを企んだり、と、相変わらずシーをころころしているのである。
さすが辺境伯の嫡子である。
恋愛の手練手管も中々の腕なのだった。
ビイは、やけくそのように研究に精を出し、目覚しい成果をあげている。
例の一件が、彼を多少大人にしたのか。
否。
Bの魔力と魔術スキルが、今回の騒動で露見し、
「何がなんでも、Bちゃんを離すな!
お前のクビをかけて、Bちゃんを魔法局に!」
と、上司から言われて、
天才とはいえ、我が身は雇われの身であり、Bあってこその自分であることを思い知らされたのだった。
厨二脱却は、怪我の功名である。
Bは婚約者の頑張りに安心したのか、表情が和らいで、女っぽくなってきた。
元々カワイイのであるから、そこに色気が加わって、周りの男子がザワつきだした。
ビイは焦る。
今度は、逆にBを追うビイとなった。
結果、学園では、生徒たちはBの背後に、箱を目にすることが増えたのだった。
季節は浅い春。
卒業式がにぎにぎしく執り行われた。
AからDまでのご令嬢は、それぞれに着飾って、会場に咲き誇っていた。
主役は間違いなく彼女たちであった。
エフは喪中、
ビイはあの性格、
シーは遠征、
エーは王宮に缶詰、
と、言うことで、四人は恋人のエスコートなしなのだ。
沢山の生徒たちや紳士に、踊りに誘われ、受け入れられた男性たちは、今をときめく『ざまぁ四人組』と、踊れたことを自慢した。
宴も佳境を過ぎ、四人組はバルコニーでおしゃべりを楽しむ事にした。
「結局、ディー様との婚約は白紙撤回にして、なかった事になりましたのね。
あれ程外遊や外交にD様を利用しておいて」
銀髪の美女が、D嬢とディー王子の話題を切り出す。
「そうでもしないと、王家は莫大な出費となりますからね。
破棄によるダメージも大きい。
エフ様の即断即決は、王家を救いました。
これで第二王子に付いていた大臣も、喪に服すエフ殿下との婚約に文句はつけられないでしょう」
「改めて、おめでとうございまーす!
次期王太子妃殿下!
しょーらいの国母!」
ABC嬢は晴れ晴れと、D嬢に微笑む。
Dは、ありがとうございます、とはにかんだ。
「いやー、エフ殿下が現れるとはおもわなかったよん」
「あら、ディーからお金もらって、御隠居でもわたくしは良かったのよ?」
金髪の巻き毛をアップにしたDは、扇で口元を隠しながら、しれっと言う、
「何仰っているんですか、お互い改めての一目惚れってカンジぃー。
も、エフ殿下メロメローっですよね!」
「お似合いです。……それにしても、ディー殿下は残念でしたね」
「そうね。…結局アーディアも遁走して行方知れず。殿下は、公爵を賜って、卒業したら北で国境兵を統率されるんでしょ?」
「あそこは唯一、実戦を伴う地域ですからね。」
「帰ってこれないかもね。」
ちょっと沈黙が流れたが、直ぐにBが流れを変える。
「でも、男ってバカですよね!
男社会でえー、女は無能でー、
非力でー、
家に閉じ込めて置けばいいって思ってるんだモン!だからあんな絞りカスになっちゃうんですよお」
「本当ね。女の怖さを知らないウブが事を起こせば返り討ちに合うのは必然。舐めないで頂きたいわ。」
「女が女同士でマウント取り合うのも、刃を磨くため。男が刃向かってきたら、全力で籠絡するわ。」
「大体、阿呆よね!処女性だの聖母だの。愛する女に母親求めてるんじゃないわよ。
そりゃー結婚までは清くいるわよ?
でも、マグロじゃ夫は逃げていくじゃない!テキトーに男を転ばかすテクを身につけるのが淑女。
結婚しても、その技を磨くのが貞女の習わし。……決して浮気じゃなくて、ね。」
「幻想抱いて、ご自分が、俺の色に染めてやる、なーんて。逆よね!」
「私達が都合のいい男にしつけてるのに、ねーっ。」
ねーっ。
三人のキャピキャピをふふふっ、っと微笑で受けるD嬢であった。
これで大団円、
とはいかないわ。
後片付けは完璧に……
D嬢は、心の中で昏い笑みを浮かべた。
王宮にて報告を受けた国王は、ディー王子に詰め腹を切らせなくてはならないことに、悲しい顔をしたが、それも一瞬だった。
何せ、留学中のイー、ジー。
エイチ、アイ、ジェイ……は妾腹で、
ケィ、エル、エムは幼子で。
王子には事欠かないのだ。
そして、マルチでチートな才能のキャラであるエフと、絶対無敵な悪役令嬢Dのカップリングは、正妃の息子たるディーを廃嫡しても、お釣りがくるのである。
ご機嫌な国王は、参謀として育てていたエーの不手際もスルーして、A嬢との結婚は、卒業後、直ぐに!という勅令まで出した。
エーは今後、エフの傍らで、修行することとなる。
A嬢の思うつぼであった。
D嬢の傍らに居ないAを単独でしげしげと見ると、
背は若干高いものの、
やや女らしいシルエットには至らないものの、
切れ長だが大きな瞳や桜貝の唇は、可憐なのだった。
少なくとも、エーにとっては。
で、
エーは、喜んで勅令を賜った。
これでA嬢の嫁ぎ先の侯爵家も、万々歳なのであった。A嬢の行く末は明るいのである。
そして、シーは騎士団への入隊を仰せ付けられた。Cの伴侶になるための、箔付けである。
軍神C嬢が誰かにそそのかされないように!と、シーは毎日、遠方から、手紙だの贈り物だの、魔力のある御札だのを寄越している。
Cは、お熱い返事をしたり、多少の放置プレイを企んだり、と、相変わらずシーをころころしているのである。
さすが辺境伯の嫡子である。
恋愛の手練手管も中々の腕なのだった。
ビイは、やけくそのように研究に精を出し、目覚しい成果をあげている。
例の一件が、彼を多少大人にしたのか。
否。
Bの魔力と魔術スキルが、今回の騒動で露見し、
「何がなんでも、Bちゃんを離すな!
お前のクビをかけて、Bちゃんを魔法局に!」
と、上司から言われて、
天才とはいえ、我が身は雇われの身であり、Bあってこその自分であることを思い知らされたのだった。
厨二脱却は、怪我の功名である。
Bは婚約者の頑張りに安心したのか、表情が和らいで、女っぽくなってきた。
元々カワイイのであるから、そこに色気が加わって、周りの男子がザワつきだした。
ビイは焦る。
今度は、逆にBを追うビイとなった。
結果、学園では、生徒たちはBの背後に、箱を目にすることが増えたのだった。
季節は浅い春。
卒業式がにぎにぎしく執り行われた。
AからDまでのご令嬢は、それぞれに着飾って、会場に咲き誇っていた。
主役は間違いなく彼女たちであった。
エフは喪中、
ビイはあの性格、
シーは遠征、
エーは王宮に缶詰、
と、言うことで、四人は恋人のエスコートなしなのだ。
沢山の生徒たちや紳士に、踊りに誘われ、受け入れられた男性たちは、今をときめく『ざまぁ四人組』と、踊れたことを自慢した。
宴も佳境を過ぎ、四人組はバルコニーでおしゃべりを楽しむ事にした。
「結局、ディー様との婚約は白紙撤回にして、なかった事になりましたのね。
あれ程外遊や外交にD様を利用しておいて」
銀髪の美女が、D嬢とディー王子の話題を切り出す。
「そうでもしないと、王家は莫大な出費となりますからね。
破棄によるダメージも大きい。
エフ様の即断即決は、王家を救いました。
これで第二王子に付いていた大臣も、喪に服すエフ殿下との婚約に文句はつけられないでしょう」
「改めて、おめでとうございまーす!
次期王太子妃殿下!
しょーらいの国母!」
ABC嬢は晴れ晴れと、D嬢に微笑む。
Dは、ありがとうございます、とはにかんだ。
「いやー、エフ殿下が現れるとはおもわなかったよん」
「あら、ディーからお金もらって、御隠居でもわたくしは良かったのよ?」
金髪の巻き毛をアップにしたDは、扇で口元を隠しながら、しれっと言う、
「何仰っているんですか、お互い改めての一目惚れってカンジぃー。
も、エフ殿下メロメローっですよね!」
「お似合いです。……それにしても、ディー殿下は残念でしたね」
「そうね。…結局アーディアも遁走して行方知れず。殿下は、公爵を賜って、卒業したら北で国境兵を統率されるんでしょ?」
「あそこは唯一、実戦を伴う地域ですからね。」
「帰ってこれないかもね。」
ちょっと沈黙が流れたが、直ぐにBが流れを変える。
「でも、男ってバカですよね!
男社会でえー、女は無能でー、
非力でー、
家に閉じ込めて置けばいいって思ってるんだモン!だからあんな絞りカスになっちゃうんですよお」
「本当ね。女の怖さを知らないウブが事を起こせば返り討ちに合うのは必然。舐めないで頂きたいわ。」
「女が女同士でマウント取り合うのも、刃を磨くため。男が刃向かってきたら、全力で籠絡するわ。」
「大体、阿呆よね!処女性だの聖母だの。愛する女に母親求めてるんじゃないわよ。
そりゃー結婚までは清くいるわよ?
でも、マグロじゃ夫は逃げていくじゃない!テキトーに男を転ばかすテクを身につけるのが淑女。
結婚しても、その技を磨くのが貞女の習わし。……決して浮気じゃなくて、ね。」
「幻想抱いて、ご自分が、俺の色に染めてやる、なーんて。逆よね!」
「私達が都合のいい男にしつけてるのに、ねーっ。」
ねーっ。
三人のキャピキャピをふふふっ、っと微笑で受けるD嬢であった。
これで大団円、
とはいかないわ。
後片付けは完璧に……
D嬢は、心の中で昏い笑みを浮かべた。
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