4 / 9
ほのかな甘さ
しおりを挟む
──幸せな気分に浸れる位の、ほのかな甘さ……
カップケーキの試食会? から数日が過ぎたが、アレから生徒会長さんを見かけることもない。お友達も見かけることもなく、何の連絡もなかった。
花梨ちゃんと部活後に別れた後、本屋に立ち寄った。
今日は、“煌めきconnection“の特集記事が載る雑誌の発売日なんだもんっ。
本屋に入ると、迷わずに音楽雑誌のコーナーに向かう。
足取りは軽くて、気分はスキップしてるつもり。
えっと……あ、あった!
見つけたので手を伸ばそうとしたら、山積みの雑誌の前には、黒斑のメガネをかけたお兄さんが雑誌を立ち読みしていて取りずらい。
山積みされているが、お兄さんが目の前にいるために、両足にペッタリと雑誌のフチが付いている。
無理矢理に取ったら、お兄さんに雑誌がぶつかっちゃうよね。
もう少し待ってみようかな。
「あ、こないだの中学生」
雑誌コーナーで立ち尽くす私に声をかけてきたのは、通路の奥から歩いて来たケイタさんだった!
不意打ちに思わず、ドキンッと心臓が羽上がる。
ケイタさんの手には、何やら参考書のような物が何冊もあった。
「こ、こんにちはっ」
「どうも。今日は一人? 奴等はいない?」
「奴等?」
だれのことだろうか?
「うん、奴等……結生達のこと」
そっか。仲良しだもんね。
「は、はい、一人です」
ドキマギしながら答えると、ケイタさんは「ふうん……」と言って、雑誌コーナーの前にいるお兄さんの元へ。
もしかして、お知り合いですか?
「弘隆さん、どっちが良いかな?」
「んー、こっちだな。こっちのが分かりやすい」
「そっか、ありがとう。会計してくる」
「……あぁ」
ケイタさんはお兄さんに参考書をパラパラと捲り、どちらが使いやすいのか聞いていたようだった。
それから、国立大の受験対策の問題集みたいなのも持ってたな。
しかし、ヒロタカさんってどこかで……
あ、そうか!
“煌めきconnection“のキーボードの人と同じ名前だわっ!
ふふふ、まさか本人ではないよね~?
雰囲気も違うし、メガネもかけてるしっ。
ん? 待てよ、芸能人によくある伊達メガネだったりしてね?
私は良く観察してみることにした。
お兄さんは細身のモデル体型だし、シャツに黒いジャケットを羽織り、とってもスタイリッシュな格好をしている。
ヒロタカ君の横顔って見たことがないけれど、こんな感じかなぁ?
髪の毛もサラサラだ。
「何?」
あまりにも横からジロジロ見すぎたらしく、私の視線に気付いたお兄さんは雑誌を置き、ボソリと言った。
「い、いや、あの、その」
絶体絶命!
勇気があれば思い切って「弘隆さんですか?」
と聞いちゃうのにな。
意気地なし!
バカ、馬鹿っ!
その前に謝るのが先かな?
心臓はバクバク鳴りまくり、謝りたいのに言葉が上手く出てこない。
「ちょっと来てっ……!」
お兄さんは私の手を取り、会計を済ませたケイタさんと共に店外へと出た。
そのまま路地裏に入り、どこかに連れていかれるっ! と思ったら、目立たない場所にあった喫茶店だった。
「いいよ、好きなの頼んで」
「俺、カフェオレ。中学生は?」
ケイタさんは遠慮なく、注文している。
「え、え、えと……ミルクティーでお願いします」
こないだからなんだけど、平凡な日々だったハズなのにライブをきっかけに違ってきている。
今日だって、先が読めない展開にタジタジしている。
本屋でケイタさんに再会出来たのは嬉しいけれど、何故か、知らないお兄さんを交えて、お茶をすることになってるし……
神様は私を振り回して遊んでる? なーんて、ね。
しかし、この状況は一体どうしたら良いの?
さっきから、心臓のドキドキを超えたバクバクという鼓動が収まりません。
「穴場だけど、ここのチーズケーキは上手いよ?」
「じゃあ、食べる」
そんな状態の私を知らないせいか、二人は勝手にやりとりを続けている。
そういえば、男の人だけとこーゆー所に来たのは初めてだ。
そう考えたら、ますます緊張してきちゃった。
ケイタさんは私の分まで注文してくれたらしく、チーズケーキは2つ届いた。
ほわほわ熱いミルクティーにベイクドチーズケーキ。
「い、いただきます」
チーズケーキを口に運ぼうとしたら、別に見られているわけではないのに緊張のあまり、ボロッとフォークから床に転がり落ちた。
「あっ……」
思わず、声を上げてしまい、そそくさと拾おうとすると“ゴチンッ” と鈍い音がした。
「うぅっ」
テーブルの角におでこをぶつけてしまった。
恥ずかしい。
痛さも全開で、おでこを両手で押さえた。
「……っぷ、大丈夫か?」
それを見ていたケイタさんは笑いを堪えて、肩が震えている。
一方、お兄さんは無表情。
唖然とした顔で見ていて、余計に恥ずかしさが募った。
笑い飛ばしてくれたら、まだマシだったのにな。
お兄さんは店員さんを呼ぶと、拾ってくれるように頼んだ。
「す、すみません!」
「気にしないで」
謝るとお兄さんは優しい笑顔を見せてくれた。
「そうだ、中学生の名前を聞いてなかったな」
「澪ですよ」
まだ笑いを堪えているケイタさんの質問に、半泣き状態で答えたアタシ。
さっきの件で、緊張が最高潮に達してしまい、涙が出そう。
目尻に溜まった涙が、今にも溢れ出してしまうような状態。
頬ずえをついて、コーヒーを飲んでいたお兄さんは私にハンカチを差し出してきて、いきなり、目尻を拭いた。
「溢れそうだったから」
えっ?
驚き過ぎて、涙も自然に止まってしまった。
「泣き止んだ? 俺は弘隆、こっちは圭」
お兄さんがこの瞬間に名前を教えてくれた。
「えと、すみません。ヒロタカさんにケイタさ……」
「ケイタじゃなくて、圭!」
ケイタさんが否定すると、お兄さんはクスッと笑った。
ドキン、ドキン。
緊張とは違う、新たな心臓の鼓動が飛び跳ねる音が聞こえた。
名前を教えてくれたのに胸の高鳴りにより、ケイタさんの本名は耳に入らず。
このドキドキはもしかして……恋?
「澪ちゃん、だっけ? 秘密守れる?」
「秘密?」
「そう、秘密」
お兄さんは不敵な笑みを浮かべる。
「守れますっ、任せて下さいっ!」
張り切って大声で答えて、よりによって、両手の拳に力を入れてしまった。
秘密を聞けることが嬉しくなって、さっきまでの緊張がほぐれてきたなんて私はやっぱり子供だ。
「澪ちゃん、変わりすぎっ」
ケイタさんはついに声を出して笑った。
この柔らかな笑顔、どことなく新君に似てる。
素敵すぎてヤバイ位にドキドキしちゃうよ。
ケイタさんは只のソックリさんじゃなくて、血の繋がりとかもあるんじゃないのかな?
いくらソックリさんだって、こんなに似てると思う表情や、肌の感じ(見た感じの肌艶)とかまで似てるものかな?
「その前に聞きたいんだけど、澪ちゃんが俺を見てた理由って何?」
お兄さんは真剣な表情をして聞いてきた。
「ふぇっ、あっ、それは……」
考えごとをし始まると、自分の世界に閉じ籠りがちになってしまうのは私の悪い癖の一つ。
ケイタさんに視線を捕られて考えている間に、その様子を眺めていたお兄さん。
相変わらずな無表情なんだけど、視線はこっちを向いていたらしく、目があった時にドキンッと再び心臓が跳ねた。
だって目が……!
こっちを見てる目がとても強いんだもん。
目……瞳だけで、心奪われるとは、正にこんな感じなのかなぁ?
強くて真っ直ぐな瞳から逃れられない。
あれっ?
このフレーズ、どこかで聞いたような?
心の中で一人で葛藤中。
「あのさ、澪ちゃんって一人の世界に入り込みやすいよね。そーゆーの、妄想体質って言うんだよ」
ケイタさんに指摘されたがそれよりも私のことをちゃん付けして名前を呼んでくれたことが嬉しい!
“妄想体質”
確かにそうかもしれない。
綺麗なモノを見た時もアレコレ考えて、一人の世界に浸ってしまうもの。
それより、何より……
今、身近で一番、お気に入りなケイタさんに“妄想体質”だと指摘されてしまうとは。
恥ずかしいよね?
「ほら、また一人で考え込んでる」
「うぅっ、すみません……!」
ケイタさんに突っ込まれる。
「……で、さっきの答えは?」
「あ、えっと」
そして、お兄さんにも間髪入れずに問われた。
素直に思っていた事を言わないと。
あなたは、お兄さんは、『“煌めきconnection“の弘隆さんですか?』って聞かないと……!
「ヒロタカさんは、あの弘隆さ……」
ピリリリ……
勇気を出して言いかけた時に、突然のスマホの着信音。
「ごめん、仕事になっちゃった。悪い、圭、これで払っといて」
伝票の上に五千円札をポサッと乗せて、慌ててお店を出るお兄さん。
「澪ちゃん。ごめん、またね」
「は、……はいっ」
お兄さんの言葉は柔らかいけれど、どんな時でも無表情なんだなぁ。
顔一つ変えないの。こーゆーのをクールって言うのかな?
「弘隆さんは忙しいからね。まぁ、ガッカリしないでよ」
「え? ガッカリって?」
「ん? まだ気づかない?……なら、秘密~っ」
ケイタさんは、『秘密』と言って、チーズケーキをサクッとフォークですくって口に放り込んだ。
あぁっ、神様……!
私は完全に恋に落ちてしまいそうです。
ケイタさんがカッコ可愛いです!
素敵すぎますっ!
素っ気ないけれど所々に甘さが隠れていて、ドキドキしちゃう。
もう、ヤミツキかも?
私はヒロタカさんの“秘密”も、“ガッカリ”の言葉の真意を追求することも忘れて頭の中はケイタさん一色になってしまった。
カップケーキの試食会? から数日が過ぎたが、アレから生徒会長さんを見かけることもない。お友達も見かけることもなく、何の連絡もなかった。
花梨ちゃんと部活後に別れた後、本屋に立ち寄った。
今日は、“煌めきconnection“の特集記事が載る雑誌の発売日なんだもんっ。
本屋に入ると、迷わずに音楽雑誌のコーナーに向かう。
足取りは軽くて、気分はスキップしてるつもり。
えっと……あ、あった!
見つけたので手を伸ばそうとしたら、山積みの雑誌の前には、黒斑のメガネをかけたお兄さんが雑誌を立ち読みしていて取りずらい。
山積みされているが、お兄さんが目の前にいるために、両足にペッタリと雑誌のフチが付いている。
無理矢理に取ったら、お兄さんに雑誌がぶつかっちゃうよね。
もう少し待ってみようかな。
「あ、こないだの中学生」
雑誌コーナーで立ち尽くす私に声をかけてきたのは、通路の奥から歩いて来たケイタさんだった!
不意打ちに思わず、ドキンッと心臓が羽上がる。
ケイタさんの手には、何やら参考書のような物が何冊もあった。
「こ、こんにちはっ」
「どうも。今日は一人? 奴等はいない?」
「奴等?」
だれのことだろうか?
「うん、奴等……結生達のこと」
そっか。仲良しだもんね。
「は、はい、一人です」
ドキマギしながら答えると、ケイタさんは「ふうん……」と言って、雑誌コーナーの前にいるお兄さんの元へ。
もしかして、お知り合いですか?
「弘隆さん、どっちが良いかな?」
「んー、こっちだな。こっちのが分かりやすい」
「そっか、ありがとう。会計してくる」
「……あぁ」
ケイタさんはお兄さんに参考書をパラパラと捲り、どちらが使いやすいのか聞いていたようだった。
それから、国立大の受験対策の問題集みたいなのも持ってたな。
しかし、ヒロタカさんってどこかで……
あ、そうか!
“煌めきconnection“のキーボードの人と同じ名前だわっ!
ふふふ、まさか本人ではないよね~?
雰囲気も違うし、メガネもかけてるしっ。
ん? 待てよ、芸能人によくある伊達メガネだったりしてね?
私は良く観察してみることにした。
お兄さんは細身のモデル体型だし、シャツに黒いジャケットを羽織り、とってもスタイリッシュな格好をしている。
ヒロタカ君の横顔って見たことがないけれど、こんな感じかなぁ?
髪の毛もサラサラだ。
「何?」
あまりにも横からジロジロ見すぎたらしく、私の視線に気付いたお兄さんは雑誌を置き、ボソリと言った。
「い、いや、あの、その」
絶体絶命!
勇気があれば思い切って「弘隆さんですか?」
と聞いちゃうのにな。
意気地なし!
バカ、馬鹿っ!
その前に謝るのが先かな?
心臓はバクバク鳴りまくり、謝りたいのに言葉が上手く出てこない。
「ちょっと来てっ……!」
お兄さんは私の手を取り、会計を済ませたケイタさんと共に店外へと出た。
そのまま路地裏に入り、どこかに連れていかれるっ! と思ったら、目立たない場所にあった喫茶店だった。
「いいよ、好きなの頼んで」
「俺、カフェオレ。中学生は?」
ケイタさんは遠慮なく、注文している。
「え、え、えと……ミルクティーでお願いします」
こないだからなんだけど、平凡な日々だったハズなのにライブをきっかけに違ってきている。
今日だって、先が読めない展開にタジタジしている。
本屋でケイタさんに再会出来たのは嬉しいけれど、何故か、知らないお兄さんを交えて、お茶をすることになってるし……
神様は私を振り回して遊んでる? なーんて、ね。
しかし、この状況は一体どうしたら良いの?
さっきから、心臓のドキドキを超えたバクバクという鼓動が収まりません。
「穴場だけど、ここのチーズケーキは上手いよ?」
「じゃあ、食べる」
そんな状態の私を知らないせいか、二人は勝手にやりとりを続けている。
そういえば、男の人だけとこーゆー所に来たのは初めてだ。
そう考えたら、ますます緊張してきちゃった。
ケイタさんは私の分まで注文してくれたらしく、チーズケーキは2つ届いた。
ほわほわ熱いミルクティーにベイクドチーズケーキ。
「い、いただきます」
チーズケーキを口に運ぼうとしたら、別に見られているわけではないのに緊張のあまり、ボロッとフォークから床に転がり落ちた。
「あっ……」
思わず、声を上げてしまい、そそくさと拾おうとすると“ゴチンッ” と鈍い音がした。
「うぅっ」
テーブルの角におでこをぶつけてしまった。
恥ずかしい。
痛さも全開で、おでこを両手で押さえた。
「……っぷ、大丈夫か?」
それを見ていたケイタさんは笑いを堪えて、肩が震えている。
一方、お兄さんは無表情。
唖然とした顔で見ていて、余計に恥ずかしさが募った。
笑い飛ばしてくれたら、まだマシだったのにな。
お兄さんは店員さんを呼ぶと、拾ってくれるように頼んだ。
「す、すみません!」
「気にしないで」
謝るとお兄さんは優しい笑顔を見せてくれた。
「そうだ、中学生の名前を聞いてなかったな」
「澪ですよ」
まだ笑いを堪えているケイタさんの質問に、半泣き状態で答えたアタシ。
さっきの件で、緊張が最高潮に達してしまい、涙が出そう。
目尻に溜まった涙が、今にも溢れ出してしまうような状態。
頬ずえをついて、コーヒーを飲んでいたお兄さんは私にハンカチを差し出してきて、いきなり、目尻を拭いた。
「溢れそうだったから」
えっ?
驚き過ぎて、涙も自然に止まってしまった。
「泣き止んだ? 俺は弘隆、こっちは圭」
お兄さんがこの瞬間に名前を教えてくれた。
「えと、すみません。ヒロタカさんにケイタさ……」
「ケイタじゃなくて、圭!」
ケイタさんが否定すると、お兄さんはクスッと笑った。
ドキン、ドキン。
緊張とは違う、新たな心臓の鼓動が飛び跳ねる音が聞こえた。
名前を教えてくれたのに胸の高鳴りにより、ケイタさんの本名は耳に入らず。
このドキドキはもしかして……恋?
「澪ちゃん、だっけ? 秘密守れる?」
「秘密?」
「そう、秘密」
お兄さんは不敵な笑みを浮かべる。
「守れますっ、任せて下さいっ!」
張り切って大声で答えて、よりによって、両手の拳に力を入れてしまった。
秘密を聞けることが嬉しくなって、さっきまでの緊張がほぐれてきたなんて私はやっぱり子供だ。
「澪ちゃん、変わりすぎっ」
ケイタさんはついに声を出して笑った。
この柔らかな笑顔、どことなく新君に似てる。
素敵すぎてヤバイ位にドキドキしちゃうよ。
ケイタさんは只のソックリさんじゃなくて、血の繋がりとかもあるんじゃないのかな?
いくらソックリさんだって、こんなに似てると思う表情や、肌の感じ(見た感じの肌艶)とかまで似てるものかな?
「その前に聞きたいんだけど、澪ちゃんが俺を見てた理由って何?」
お兄さんは真剣な表情をして聞いてきた。
「ふぇっ、あっ、それは……」
考えごとをし始まると、自分の世界に閉じ籠りがちになってしまうのは私の悪い癖の一つ。
ケイタさんに視線を捕られて考えている間に、その様子を眺めていたお兄さん。
相変わらずな無表情なんだけど、視線はこっちを向いていたらしく、目があった時にドキンッと再び心臓が跳ねた。
だって目が……!
こっちを見てる目がとても強いんだもん。
目……瞳だけで、心奪われるとは、正にこんな感じなのかなぁ?
強くて真っ直ぐな瞳から逃れられない。
あれっ?
このフレーズ、どこかで聞いたような?
心の中で一人で葛藤中。
「あのさ、澪ちゃんって一人の世界に入り込みやすいよね。そーゆーの、妄想体質って言うんだよ」
ケイタさんに指摘されたがそれよりも私のことをちゃん付けして名前を呼んでくれたことが嬉しい!
“妄想体質”
確かにそうかもしれない。
綺麗なモノを見た時もアレコレ考えて、一人の世界に浸ってしまうもの。
それより、何より……
今、身近で一番、お気に入りなケイタさんに“妄想体質”だと指摘されてしまうとは。
恥ずかしいよね?
「ほら、また一人で考え込んでる」
「うぅっ、すみません……!」
ケイタさんに突っ込まれる。
「……で、さっきの答えは?」
「あ、えっと」
そして、お兄さんにも間髪入れずに問われた。
素直に思っていた事を言わないと。
あなたは、お兄さんは、『“煌めきconnection“の弘隆さんですか?』って聞かないと……!
「ヒロタカさんは、あの弘隆さ……」
ピリリリ……
勇気を出して言いかけた時に、突然のスマホの着信音。
「ごめん、仕事になっちゃった。悪い、圭、これで払っといて」
伝票の上に五千円札をポサッと乗せて、慌ててお店を出るお兄さん。
「澪ちゃん。ごめん、またね」
「は、……はいっ」
お兄さんの言葉は柔らかいけれど、どんな時でも無表情なんだなぁ。
顔一つ変えないの。こーゆーのをクールって言うのかな?
「弘隆さんは忙しいからね。まぁ、ガッカリしないでよ」
「え? ガッカリって?」
「ん? まだ気づかない?……なら、秘密~っ」
ケイタさんは、『秘密』と言って、チーズケーキをサクッとフォークですくって口に放り込んだ。
あぁっ、神様……!
私は完全に恋に落ちてしまいそうです。
ケイタさんがカッコ可愛いです!
素敵すぎますっ!
素っ気ないけれど所々に甘さが隠れていて、ドキドキしちゃう。
もう、ヤミツキかも?
私はヒロタカさんの“秘密”も、“ガッカリ”の言葉の真意を追求することも忘れて頭の中はケイタさん一色になってしまった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
私が死ねば楽になれるのでしょう?~愛妻家の後悔~
希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢オリヴィアは伯爵令息ダーフィトと婚約中。
しかし結婚準備中オリヴィアは熱病に罹り冷酷にも婚約破棄されてしまう。
それを知った幼馴染の伯爵令息リカードがオリヴィアへの愛を伝えるが…
【 ⚠ 】
・前半は夫婦の闘病記です。合わない方は自衛のほどお願いいたします。
・架空の猛毒です。作中の症状は抗生物質の発明以前に猛威を奮った複数の症例を参考にしています。尚、R15はこの為です。
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる