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【奏心/BLACK TURN】
*高校一年生
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私はいつしか、人が大嫌いになっていた。
今でこそ、対馬さんと福島さん、ヒロ君と接しているけれど……以前は全く受け入れられず、引きこもりの毎日だった。
まぁ、そうなるのにも理由がある。
始まりは高校一年の春だった──
***
「おはよ、ミヒロちゃん!!」
中学時代の同級生の近藤 茜ちゃんと駅で待ち合わせ。今日が登校二日目だ。
同じ中学の同級生からは、茜ちゃんと私の二人しか在籍していない。
茜ちゃんとはクラスが一緒になったことはなく、受験の時に仲良くなった。
その後も関係は続いて、『受かったら一緒に通学しようね』と約束していた。私達、二人は念願の受験合格を果たし、晴れて高校生となる。
「クラスが一緒だなんてラッキーだったよね」
「うん。一緒だから、心強いよっ」
中学の同級生が二人しかいないので当然のようにクラスは別になるかと思っていたけれど、私達は一緒だった。
けれども、この奇跡なような出来事がやがて運命をイタズラしようとは、この時は予想もできなかった。
「ミヒロちゃんてさ、漢字だと“心優”って書くんだよね? 名前、可愛いよね」
「ありがとっ!! でも、私の容姿にあってないかな~なんて思うんだ」
当時の私は、ぽっちゃり型で目は一重。
あんまり可愛くないと思うんだ。
「ううん、そんな事ないよ!! ミヒロちゃんてさ、優しいし気遣いができる子だから名前ぴったりだよっ。ね?」
隣で笑う茜ちゃんは私と違って、小柄で目がパッチリしていて、お人形みたいに可愛い子だった。
そして、人を気遣える優しい子でもあった。
私なんかよりも、ずっと、ずっと……
「オリエンテーリングも終わっちゃったしさ、今日から授業だねぇ。まだ友達は出来ないけどさ、ミヒロちゃんがいるから、私は一人じゃない。親友が側にいるから頑張れるよ」
「……親、友?」
「うんっ、私にとってミヒロちゃんは親友だよ」
「わ、私も、茜ちゃんが一番の親友だよっ」
まさか、茜ちゃんの口から私が“親友”という言葉が出るなんて思いもよらず、気分は有頂天になった。
有頂天のままで学校に着くと、その日は1日が凄く楽しく思えて幸せだった。
幸せは続いて、茜ちゃん以外にも友達が出来たのは、この日。
朝のホームルームで、五十音順から、くじ引きの席になった時の事、残念ながら茜ちゃんとは遠い席だったけれど後ろの女の子と友達になれた。
「私はコトネだよ。琴の音って書くの。名前は……心に優しいで何て読むの?」
席が決まって机を移動すると肩をポンと軽く叩かれて、名札を見ながら話をかけられた。
振り向くと顔に少しそばかすのあるポニーテールの女の子がいて、私はすぐに答えた。
「ミヒロだよ。よろしくね」
「ミヒロちゃんかぁ……よろしくね!!」
琴音ちゃんは見た感じが活発で明るそうな女の子。
新しい学校、高校生にな った自分、新しい友達に胸がワクワクして来た。
「静かに!! 入学したてだからと浮かれていては、受験には勝てないぞ!! 今日から、授業が始まるから、気を引き締めて。オリエンテーションでも話はあったが、校舎内には携帯等の通信機、及びゲーム機などは持ち込み禁止だ。見つけた場合は一週間の没収になる。いいな?」
席替えでザワザワと騒がしかった教室は、担任の先生の渇のある話で静まり返った。
そうだった。私は、数々の有名大学に合格多数の進学校に入学したんだった。
浮き足立って忘れてしまいそうだった。今日からは授業が始まる。
ホームルームが終わると一時間目は数学だった。
とりあえずは中学の復習からだったが、容赦なく質問がどんどん飛んでくる。
生徒を全員指した所で、授業は終わった。
毎日がこんな繰り返しで、さすがに進学校は厳しいなと感じてはいたが、家に帰ってからの予習復習も苦にならなかった。
何故なら、高校生になったお祝いに両親から与えられたスマホで茜ちゃんや琴音ちゃんとメッセージ交換をしたり、電話しながら勉強してたから。
テスト前には、寝る前に問題出しっこメールとかしてたから。
けれども幸せは長くは続かなくて、スマホがあるが故に、私が孤独になる日は近付いてきていたんだ。
「夏休みさぁ、海でも行かない?」
「うん……いいけど」
もうすぐ夏休みの私達は、課外授業の合間を縫っての計画を立てようと必死だった。
夏休みと言えど、一週間に3日位の半日は学校に行って、勉強の時間があるらしい。希望者だけみたいだけれども、ほぼ全員が参加すると聞いた。
「私は太っちょだからなぁ、水着着なくていー?」
「えー、大丈夫だって!! 気になるならラッシュガード羽織るとかさ、スポーツタイプのとかあるじゃん?」
「……うーん」
ラッシュガードとは何だろう?
よく分からないけれど体型を隠せる水着なのかな? あれから、茜ちゃんと琴音ちゃん以外にも仲良しの友達はできた。
二人と私を含めた六人で、いつも一緒にいた。私以外は皆、痩せていて羨ましかった。
「じゃあさ、七月の終わり辺りにする?それまでに水着を買いに行こっ」
取り仕切るのは、いつも琴音ちゃんの役目で、私はただ頷くばかり。
まとめてくれる事はありがたいけれど、意見が思うように言えないのは寂しいことでもあった。
夏休みの計画は順調に進み両親に頼み込んで、成績を落とさないのならば海に行っても良いとの許可も得て水着も買ってもらった。
後は海に行くばかりとなった。
海なんて小学生以来で、行く日が近付くとワクワク気分が増した。
海に行く前日は、女の子としての身だしなみに追われて時間が過ぎた。
学校帰りに友達と買い物に寄ったりはしたけれど土日も遊んだ事はないし、勢揃いで出かけるのは海が初めてだった。
私はあんまり泳げないから、浮き輪の用意も完璧。
花柄にラメ入りのキラキラとした浮き輪も、両親にオネダリして購入。
その他、日焼け止めなども母が用意してくれた。
浮き輪は膨らませて行くのか、海辺で膨らますのか、真剣に悩んでみたり。砂浜が熱いだろうから、ビーチサンダルは別に持って行こうかな?とか……眠りにつくまで海のことでいっぱいだった。
今でこそ、対馬さんと福島さん、ヒロ君と接しているけれど……以前は全く受け入れられず、引きこもりの毎日だった。
まぁ、そうなるのにも理由がある。
始まりは高校一年の春だった──
***
「おはよ、ミヒロちゃん!!」
中学時代の同級生の近藤 茜ちゃんと駅で待ち合わせ。今日が登校二日目だ。
同じ中学の同級生からは、茜ちゃんと私の二人しか在籍していない。
茜ちゃんとはクラスが一緒になったことはなく、受験の時に仲良くなった。
その後も関係は続いて、『受かったら一緒に通学しようね』と約束していた。私達、二人は念願の受験合格を果たし、晴れて高校生となる。
「クラスが一緒だなんてラッキーだったよね」
「うん。一緒だから、心強いよっ」
中学の同級生が二人しかいないので当然のようにクラスは別になるかと思っていたけれど、私達は一緒だった。
けれども、この奇跡なような出来事がやがて運命をイタズラしようとは、この時は予想もできなかった。
「ミヒロちゃんてさ、漢字だと“心優”って書くんだよね? 名前、可愛いよね」
「ありがとっ!! でも、私の容姿にあってないかな~なんて思うんだ」
当時の私は、ぽっちゃり型で目は一重。
あんまり可愛くないと思うんだ。
「ううん、そんな事ないよ!! ミヒロちゃんてさ、優しいし気遣いができる子だから名前ぴったりだよっ。ね?」
隣で笑う茜ちゃんは私と違って、小柄で目がパッチリしていて、お人形みたいに可愛い子だった。
そして、人を気遣える優しい子でもあった。
私なんかよりも、ずっと、ずっと……
「オリエンテーリングも終わっちゃったしさ、今日から授業だねぇ。まだ友達は出来ないけどさ、ミヒロちゃんがいるから、私は一人じゃない。親友が側にいるから頑張れるよ」
「……親、友?」
「うんっ、私にとってミヒロちゃんは親友だよ」
「わ、私も、茜ちゃんが一番の親友だよっ」
まさか、茜ちゃんの口から私が“親友”という言葉が出るなんて思いもよらず、気分は有頂天になった。
有頂天のままで学校に着くと、その日は1日が凄く楽しく思えて幸せだった。
幸せは続いて、茜ちゃん以外にも友達が出来たのは、この日。
朝のホームルームで、五十音順から、くじ引きの席になった時の事、残念ながら茜ちゃんとは遠い席だったけれど後ろの女の子と友達になれた。
「私はコトネだよ。琴の音って書くの。名前は……心に優しいで何て読むの?」
席が決まって机を移動すると肩をポンと軽く叩かれて、名札を見ながら話をかけられた。
振り向くと顔に少しそばかすのあるポニーテールの女の子がいて、私はすぐに答えた。
「ミヒロだよ。よろしくね」
「ミヒロちゃんかぁ……よろしくね!!」
琴音ちゃんは見た感じが活発で明るそうな女の子。
新しい学校、高校生にな った自分、新しい友達に胸がワクワクして来た。
「静かに!! 入学したてだからと浮かれていては、受験には勝てないぞ!! 今日から、授業が始まるから、気を引き締めて。オリエンテーションでも話はあったが、校舎内には携帯等の通信機、及びゲーム機などは持ち込み禁止だ。見つけた場合は一週間の没収になる。いいな?」
席替えでザワザワと騒がしかった教室は、担任の先生の渇のある話で静まり返った。
そうだった。私は、数々の有名大学に合格多数の進学校に入学したんだった。
浮き足立って忘れてしまいそうだった。今日からは授業が始まる。
ホームルームが終わると一時間目は数学だった。
とりあえずは中学の復習からだったが、容赦なく質問がどんどん飛んでくる。
生徒を全員指した所で、授業は終わった。
毎日がこんな繰り返しで、さすがに進学校は厳しいなと感じてはいたが、家に帰ってからの予習復習も苦にならなかった。
何故なら、高校生になったお祝いに両親から与えられたスマホで茜ちゃんや琴音ちゃんとメッセージ交換をしたり、電話しながら勉強してたから。
テスト前には、寝る前に問題出しっこメールとかしてたから。
けれども幸せは長くは続かなくて、スマホがあるが故に、私が孤独になる日は近付いてきていたんだ。
「夏休みさぁ、海でも行かない?」
「うん……いいけど」
もうすぐ夏休みの私達は、課外授業の合間を縫っての計画を立てようと必死だった。
夏休みと言えど、一週間に3日位の半日は学校に行って、勉強の時間があるらしい。希望者だけみたいだけれども、ほぼ全員が参加すると聞いた。
「私は太っちょだからなぁ、水着着なくていー?」
「えー、大丈夫だって!! 気になるならラッシュガード羽織るとかさ、スポーツタイプのとかあるじゃん?」
「……うーん」
ラッシュガードとは何だろう?
よく分からないけれど体型を隠せる水着なのかな? あれから、茜ちゃんと琴音ちゃん以外にも仲良しの友達はできた。
二人と私を含めた六人で、いつも一緒にいた。私以外は皆、痩せていて羨ましかった。
「じゃあさ、七月の終わり辺りにする?それまでに水着を買いに行こっ」
取り仕切るのは、いつも琴音ちゃんの役目で、私はただ頷くばかり。
まとめてくれる事はありがたいけれど、意見が思うように言えないのは寂しいことでもあった。
夏休みの計画は順調に進み両親に頼み込んで、成績を落とさないのならば海に行っても良いとの許可も得て水着も買ってもらった。
後は海に行くばかりとなった。
海なんて小学生以来で、行く日が近付くとワクワク気分が増した。
海に行く前日は、女の子としての身だしなみに追われて時間が過ぎた。
学校帰りに友達と買い物に寄ったりはしたけれど土日も遊んだ事はないし、勢揃いで出かけるのは海が初めてだった。
私はあんまり泳げないから、浮き輪の用意も完璧。
花柄にラメ入りのキラキラとした浮き輪も、両親にオネダリして購入。
その他、日焼け止めなども母が用意してくれた。
浮き輪は膨らませて行くのか、海辺で膨らますのか、真剣に悩んでみたり。砂浜が熱いだろうから、ビーチサンダルは別に持って行こうかな?とか……眠りにつくまで海のことでいっぱいだった。
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