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【煌めきLEVEL/01】
*衝撃的な出会い
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朝起きてから、必ずする事と言えば……
「よし、今日もあった!!」
机の引き出しを勢いよく開けて、通帳を確認する。
キュッと両手に包み込んで、胸に充てる。 大事な、大事な宝物。
お金がなくなったら、全ては…… “終わる”
確認を済ませてから、日の光が隙間から射し込んでいるカーテンに触れて、一気に開ける。
シャーッと言う軽快な音を出しながら、横滑りをするカーテン。過去を封印した今は、カーテンも勢いよく開けられる程になった。
以前は、日の光も疎ましい程に朝が怖かったから──
私は高校一年の後半に退学して、運良く漫画家になれた。ペンネームは、奏でる心と書いて”カナミ”だ。
毎朝のルーティンは通帳を確認することだ。その後に身支度をし始めたり、朝食をとる。
「さてと、活動しますか……」
ボソッと小さな声で一人で呟き、フェイスタオルを持って顔を洗いに行く。
顔を洗う前に私は、必ず鏡を見る。
“大丈夫、今日も素っぴんでも可愛い” ……と、自分に言い聞かせてから泡立てた洗顔フォームを顔に塗りたくる。
泡をクルクルと顔の上で滑らせて水で流し、泡が落ちたら、モチモチの肌の感触を楽しむ。
化粧水をつけると、吸い付くように柔らかいモチモチ肌。自分の肌なのに堪らない。
──そう、お金があれば何だって出来る。
人の心だって、手に入るかもしれない。
例えば、それが偽りだとしても夢を見せてくれるに違いないのだ。
今日は久々のオフ日、天気も良いし、お出かけ日和。
化粧を完璧に施し、クリーニング帰りの服に袖を通す。
通帳の入った引き出しに鍵をかけて、ガチャガチャと開けるフリをして開かないか確認。
……開かないから大丈夫、と。
香水をほんのりと漂わせ、女子力の高い可愛らしい靴を履き、いざ出発。
外に出るとふんわりとした暖かい春の陽射しと風が、身体に心地好い。
今日は一日中、晴れると天気予報が教えてくれた。
太陽の光を沢山浴びて、身も心も浄化されたいな。靴を買って、雑貨屋さんにも行っちゃおうかな?
バス停までの道程、頭の中は今日の計画で一杯。
久しぶりの一日丸々のお休みだから、したいことが沢山あるの。それなのに、こんなことになるなんて!!
「ちっ、ホスト以外に高額バイトは無いのかよっ!?」
歩いていると、ふと目に入った光景。 コンビニ横のコーヒーショップの壁を叩く男の子。
壁にはバイト募集の張り紙が見える。
圧倒されて立ち止まってしまい、目があった。
「アンタ、何?」
私を見つけて、するどい目付きで睨んだ。
「え、いや、ただ通りかかっただけ……で、す」
突然の事に手足が強張って言葉も途切れる。
男の子は私の頭の天辺から、つま先まで鋭い視線で流し見た後に、こう言った。
「ふぅん……あ、ちょっとつき合ってくれない?」
「……え、ちょ、待っ!」
いつもなら、誰かの肌や体に接触しただけで、緊張して脂汗が出たり、血の気が退く。しかし、そうなる前に手首を引っ張られていた。
「ど、どこ行く、の?」
「大丈夫だって、捕って食ったりしないから。買い物付き合ってくれない?飯、奢るからさっ」
「は、はぁ?」
振りほどこうにも勇気すら出なくて、捕まれた手首が痛い。
ドクン……ドクン……
男の子が無理矢理に連れて行こうとするから、私の頭の中はパニック寸前だ。
『こっち来なよ!!』
『媚び売って、サイテー』
あ、あ、あ。
思い出したくない記憶が蘇る──
不自然な格好のまま、力任せに引っ張っられて私は着いてくのがやっとだった。
一体、どこに連れて行かれるの? 聞いてみたいけど、言葉が上手く出てこない。
例えば言葉を発して、この人の怒りに触れたなら、もっと酷い扱いを受けるのかもしれない。
だから怖くて、逃げられもせずに着いて行くしかないのかもしれない。
私は今、何をしなければいけないのか、この人は何を求めているのか、 分からない。
混乱中の思考回路で必死に考えようとしたその時、この人の背中が目に入る。
ドクン……ドクン……
心臓が跳ね上がり、息が急に苦しくなる。
目の前に突如現れた、忌々しい映像。
甦る記憶。
「……く、る……しっ」
私の身体は呼吸をするのを遮断するかのように、空気を吸うのを拒み始めた。
苦しくて涙が零れる。
「おい、ちょ、お前……もしかして過呼吸?」
目の前に居る、私の腕を強引に引っ張っていた男の子が目を丸くする。
「過呼吸……えと、そうだ、紙袋!! お前、紙袋は持ってるのか?」
紙袋はいつもバッグの中にあるので言葉も出せないまま、男の子にバッグごと差し出した。
男の子は躊躇うことなく、私のバッグを開けて真っ先に紙袋を探してくれる。紙袋を見つけると口を広げてから渡してくれた。
何度も息を吸っては吐いてを繰り返し、呼吸が楽になるのを待つ。
呼吸が整うまでは、頭の中は真っ白に近くて……“呼吸をする事”との考えしかない。
男の子は歩道にしゃがんで倒れ込んだ私を覆い隠すようにして、背中を擦ってくれていた。
「大丈夫? 落ち着いた? 顔色、真っ青だけど?」
「……あ、だ、大丈夫デ、ス」
忌々しい記憶が頭の中に広がろうとすると、拒否反応をおこす。
完全に広がっていたら、きっと病院送りだった。呼吸が整ってフラつきはあるものの、普通の状態に戻ったので立ち上がる。
「ごめん! 俺が無理矢理に連れ出したから。今更だけど、嫌だったら断って」
過呼吸を起こすまで強く握られていた手首が離されていたのに気付き、かなりの解放感。
今なら逃げられる。
──逃げられるけども、さっきまでの鋭い目付きはどこにもなかった。目の前には猫目な可愛らしい男の子が立っていて、 私自身が逃げることができなかった。
漫画の王子様やドラマの俳優とかじゃなくても、世間には、こんなに可愛い男の子っているんだ。
初めて知ったかも?
「あのさ、凝視は止めてくれない? 恥ずかしいから、さ?」
「ひゃ、ひゃぁ、ご、ごめっ、」
「……っぶ!! 見かけと違って手慣れてないのな」
メイクでどんなに素顔を隠して、自分を偽ったって……中身は変わらない。
あの頃の、臆病者の意気地なしのまま。
「……意気地なしなの、私!!」
「はぁ? 何をいきなり?」
「だからっ、意気地なしの臆病者で、……っふぇ!?」
「わけ分からないんだけど? とにかく、そんな身なりしてウロうろしてると勘違い野郎に無理矢理に食われちゃうぞ?」
「……うぁっ」
軽くデコピンをされて、再び手を引っ張られて歩き出す。
た、食べられちゃうって何?
今度は手首を握らずに、優しくそっと手を重ねた繋ぎ方で。
顔色を伺う暇もなく、次々とやって来るサプライズに私の胸は……破裂寸前!!
この異常なまでの顔の火照り、きっと下地もチークも隠してしまう位に真っ赤だろう。
何だか耳まで熱くて視線もどこに合わせたら良いのか、分からない。
元々、知らない人と話す時は、視線は合わさずに話してしまうけど緊張感よりも、何だか恥ずかしくて視線は斜め下。
「名前聞いて良い?」
「……ふわぁ、はい、カナミです。奏でる心でカナ……あっ!! ちが、いや、……カナミです」
しまった、本名ではなく、いつもの癖で、セカンドネームのペンネームを言ってしまった。
今更、しょうがないか……本名じゃなくていいや。
本名言わない方が、身のためかもしれないし?
「……? 可愛い名前だね。俺はヒロだよ」
「……ヒロ、君」
「呼び捨てでいーよ。とりあえず、飯食べよう。じゃあさ、誘い直すから……一緒に来てくれますか?」
「……は、はい」
呼び捨てでいーよ、なんて!
とりあえず飯食べようだなんてっ!
私はどうしたら良いんでしょうか?
ノコノコ着いて来てしまってるけど、本当に大丈夫なの?
けれども、さっきの過呼吸とは打って変わって、これでバイバイなんて……と思ったりもしている。
「パスタは好き? それとも、違うのが良い?」
「パスタ……」
食べずらいかな、上手にクルクル巻けないんだよね。 つい巻きが大きくなってしまって、大口開けて食べてしまう。
そんな事になったら初対面とはいえ、やっぱり恥ずかしいよね?
小口で食べられる物、パスタから、かけ離れない食べ物……グラタン!!
「……パスタじゃなくて、グラタン!! グラ、タンにして下さい」
「あははっ、勢い良くグラタンって言ったかと思えば急に小声になるし、面白過ぎっ!! オッケー、グラタンにしよう。俺はエビが好きです」
「……私も、エビ、好き……です」
名前と“エビ好き”だけしか知らない関係。
これからどうなってしまうのか、不安。
不安なんだけども、新しい何かが始まる予感もする。
男の子に優しくされたのは初めてで私は錯覚し、勘違いしてるのかもしれない。
それでも、まぁいいか。
自分が傷つかずに楽しい時間が過ごすことができれば、それはそれで良い。
「よし、今日もあった!!」
机の引き出しを勢いよく開けて、通帳を確認する。
キュッと両手に包み込んで、胸に充てる。 大事な、大事な宝物。
お金がなくなったら、全ては…… “終わる”
確認を済ませてから、日の光が隙間から射し込んでいるカーテンに触れて、一気に開ける。
シャーッと言う軽快な音を出しながら、横滑りをするカーテン。過去を封印した今は、カーテンも勢いよく開けられる程になった。
以前は、日の光も疎ましい程に朝が怖かったから──
私は高校一年の後半に退学して、運良く漫画家になれた。ペンネームは、奏でる心と書いて”カナミ”だ。
毎朝のルーティンは通帳を確認することだ。その後に身支度をし始めたり、朝食をとる。
「さてと、活動しますか……」
ボソッと小さな声で一人で呟き、フェイスタオルを持って顔を洗いに行く。
顔を洗う前に私は、必ず鏡を見る。
“大丈夫、今日も素っぴんでも可愛い” ……と、自分に言い聞かせてから泡立てた洗顔フォームを顔に塗りたくる。
泡をクルクルと顔の上で滑らせて水で流し、泡が落ちたら、モチモチの肌の感触を楽しむ。
化粧水をつけると、吸い付くように柔らかいモチモチ肌。自分の肌なのに堪らない。
──そう、お金があれば何だって出来る。
人の心だって、手に入るかもしれない。
例えば、それが偽りだとしても夢を見せてくれるに違いないのだ。
今日は久々のオフ日、天気も良いし、お出かけ日和。
化粧を完璧に施し、クリーニング帰りの服に袖を通す。
通帳の入った引き出しに鍵をかけて、ガチャガチャと開けるフリをして開かないか確認。
……開かないから大丈夫、と。
香水をほんのりと漂わせ、女子力の高い可愛らしい靴を履き、いざ出発。
外に出るとふんわりとした暖かい春の陽射しと風が、身体に心地好い。
今日は一日中、晴れると天気予報が教えてくれた。
太陽の光を沢山浴びて、身も心も浄化されたいな。靴を買って、雑貨屋さんにも行っちゃおうかな?
バス停までの道程、頭の中は今日の計画で一杯。
久しぶりの一日丸々のお休みだから、したいことが沢山あるの。それなのに、こんなことになるなんて!!
「ちっ、ホスト以外に高額バイトは無いのかよっ!?」
歩いていると、ふと目に入った光景。 コンビニ横のコーヒーショップの壁を叩く男の子。
壁にはバイト募集の張り紙が見える。
圧倒されて立ち止まってしまい、目があった。
「アンタ、何?」
私を見つけて、するどい目付きで睨んだ。
「え、いや、ただ通りかかっただけ……で、す」
突然の事に手足が強張って言葉も途切れる。
男の子は私の頭の天辺から、つま先まで鋭い視線で流し見た後に、こう言った。
「ふぅん……あ、ちょっとつき合ってくれない?」
「……え、ちょ、待っ!」
いつもなら、誰かの肌や体に接触しただけで、緊張して脂汗が出たり、血の気が退く。しかし、そうなる前に手首を引っ張られていた。
「ど、どこ行く、の?」
「大丈夫だって、捕って食ったりしないから。買い物付き合ってくれない?飯、奢るからさっ」
「は、はぁ?」
振りほどこうにも勇気すら出なくて、捕まれた手首が痛い。
ドクン……ドクン……
男の子が無理矢理に連れて行こうとするから、私の頭の中はパニック寸前だ。
『こっち来なよ!!』
『媚び売って、サイテー』
あ、あ、あ。
思い出したくない記憶が蘇る──
不自然な格好のまま、力任せに引っ張っられて私は着いてくのがやっとだった。
一体、どこに連れて行かれるの? 聞いてみたいけど、言葉が上手く出てこない。
例えば言葉を発して、この人の怒りに触れたなら、もっと酷い扱いを受けるのかもしれない。
だから怖くて、逃げられもせずに着いて行くしかないのかもしれない。
私は今、何をしなければいけないのか、この人は何を求めているのか、 分からない。
混乱中の思考回路で必死に考えようとしたその時、この人の背中が目に入る。
ドクン……ドクン……
心臓が跳ね上がり、息が急に苦しくなる。
目の前に突如現れた、忌々しい映像。
甦る記憶。
「……く、る……しっ」
私の身体は呼吸をするのを遮断するかのように、空気を吸うのを拒み始めた。
苦しくて涙が零れる。
「おい、ちょ、お前……もしかして過呼吸?」
目の前に居る、私の腕を強引に引っ張っていた男の子が目を丸くする。
「過呼吸……えと、そうだ、紙袋!! お前、紙袋は持ってるのか?」
紙袋はいつもバッグの中にあるので言葉も出せないまま、男の子にバッグごと差し出した。
男の子は躊躇うことなく、私のバッグを開けて真っ先に紙袋を探してくれる。紙袋を見つけると口を広げてから渡してくれた。
何度も息を吸っては吐いてを繰り返し、呼吸が楽になるのを待つ。
呼吸が整うまでは、頭の中は真っ白に近くて……“呼吸をする事”との考えしかない。
男の子は歩道にしゃがんで倒れ込んだ私を覆い隠すようにして、背中を擦ってくれていた。
「大丈夫? 落ち着いた? 顔色、真っ青だけど?」
「……あ、だ、大丈夫デ、ス」
忌々しい記憶が頭の中に広がろうとすると、拒否反応をおこす。
完全に広がっていたら、きっと病院送りだった。呼吸が整ってフラつきはあるものの、普通の状態に戻ったので立ち上がる。
「ごめん! 俺が無理矢理に連れ出したから。今更だけど、嫌だったら断って」
過呼吸を起こすまで強く握られていた手首が離されていたのに気付き、かなりの解放感。
今なら逃げられる。
──逃げられるけども、さっきまでの鋭い目付きはどこにもなかった。目の前には猫目な可愛らしい男の子が立っていて、 私自身が逃げることができなかった。
漫画の王子様やドラマの俳優とかじゃなくても、世間には、こんなに可愛い男の子っているんだ。
初めて知ったかも?
「あのさ、凝視は止めてくれない? 恥ずかしいから、さ?」
「ひゃ、ひゃぁ、ご、ごめっ、」
「……っぶ!! 見かけと違って手慣れてないのな」
メイクでどんなに素顔を隠して、自分を偽ったって……中身は変わらない。
あの頃の、臆病者の意気地なしのまま。
「……意気地なしなの、私!!」
「はぁ? 何をいきなり?」
「だからっ、意気地なしの臆病者で、……っふぇ!?」
「わけ分からないんだけど? とにかく、そんな身なりしてウロうろしてると勘違い野郎に無理矢理に食われちゃうぞ?」
「……うぁっ」
軽くデコピンをされて、再び手を引っ張られて歩き出す。
た、食べられちゃうって何?
今度は手首を握らずに、優しくそっと手を重ねた繋ぎ方で。
顔色を伺う暇もなく、次々とやって来るサプライズに私の胸は……破裂寸前!!
この異常なまでの顔の火照り、きっと下地もチークも隠してしまう位に真っ赤だろう。
何だか耳まで熱くて視線もどこに合わせたら良いのか、分からない。
元々、知らない人と話す時は、視線は合わさずに話してしまうけど緊張感よりも、何だか恥ずかしくて視線は斜め下。
「名前聞いて良い?」
「……ふわぁ、はい、カナミです。奏でる心でカナ……あっ!! ちが、いや、……カナミです」
しまった、本名ではなく、いつもの癖で、セカンドネームのペンネームを言ってしまった。
今更、しょうがないか……本名じゃなくていいや。
本名言わない方が、身のためかもしれないし?
「……? 可愛い名前だね。俺はヒロだよ」
「……ヒロ、君」
「呼び捨てでいーよ。とりあえず、飯食べよう。じゃあさ、誘い直すから……一緒に来てくれますか?」
「……は、はい」
呼び捨てでいーよ、なんて!
とりあえず飯食べようだなんてっ!
私はどうしたら良いんでしょうか?
ノコノコ着いて来てしまってるけど、本当に大丈夫なの?
けれども、さっきの過呼吸とは打って変わって、これでバイバイなんて……と思ったりもしている。
「パスタは好き? それとも、違うのが良い?」
「パスタ……」
食べずらいかな、上手にクルクル巻けないんだよね。 つい巻きが大きくなってしまって、大口開けて食べてしまう。
そんな事になったら初対面とはいえ、やっぱり恥ずかしいよね?
小口で食べられる物、パスタから、かけ離れない食べ物……グラタン!!
「……パスタじゃなくて、グラタン!! グラ、タンにして下さい」
「あははっ、勢い良くグラタンって言ったかと思えば急に小声になるし、面白過ぎっ!! オッケー、グラタンにしよう。俺はエビが好きです」
「……私も、エビ、好き……です」
名前と“エビ好き”だけしか知らない関係。
これからどうなってしまうのか、不安。
不安なんだけども、新しい何かが始まる予感もする。
男の子に優しくされたのは初めてで私は錯覚し、勘違いしてるのかもしれない。
それでも、まぁいいか。
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