上 下
3 / 8

第3話

しおりを挟む
 馬車に揺られる事半日、昼過ぎに儀式の会場についた。遅い昼食を頂き、今年15歳になる少女達は聖女の神殿へと入っていく。この地域の神殿に集まったのは100人程。
 その少女たちには番号札が配られ、同じ番号のテーブルの前に立たされた。そこには、手の平サイズの宝玉が置かれている。

 「では皆さん、その宝玉に魔力を注いでください」

 魔力を持っている者は普段、もっと小さな祈りの宝玉に魔力を込めて結界として使っていた。なのでほとんどの者は、魔力を込める行為は出来る。
 シオミが魔力を込めた宝玉は、白く輝いていた。他の宝玉は、淡く光を帯びた程度。違いは一目瞭然だ。

 「私だけ輝きが違う……」
 『だから言っただろう』

 その宝玉は、番号がついた箱に入れられ回収されていった。
 少し経つと、数人の役人がシオミが立つテーブル向かってきた。

 「62番の者……」
 「はい!」

 スーッとシオミが持っていた番号札をリリアンナは奪いそのまま見せたのだ!

 「え……」
 「リリアンナ! それわた……」
 「落としたわよ」

 指をさされ見れば、番号札が落ちていた。その番号は61番。

 「リリアンナ様。こちらへ」
 「待って!」
 「後の者は、帰ってよろしい。ご苦労様でした」

 えー!!

 『隣で見て気が付いていたのだろう。なんて奴だ。すり替わるなんて!』
 「待ってください! それ私の番号なんですけど!」
 「あなたの番号はそれでしょう。61番さん」
 「……君、もう終わったからね」

 ジロッと上から下まで見てそうシオミは言われた。

 『なんとなく、見た目でも判断されていないか?』
 「せ、せめて、もう一度やらせてください。そうしたら本当だとわかります! 番号がすり替えられたんです!」
 「まあなんて言いがかりかしら。お帰りなさい。って、帰る場所もなかったわね」
 「君、この方は聖女様だ。騒ぎ立てるのならひっ捕らえるぞ!」
 「………」

 そんなぁ。

 何も言えなくなったシオミは、茫然としてリリアンナを見送るしかなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

追放された武闘派令嬢の異世界生活

新川キナ
ファンタジー
異世界の記憶を有し、転生者であるがゆえに幼少の頃より文武に秀でた令嬢が居た。 名をエレスティーナという。そんな彼女には婚約者が居た。 気乗りのしない十五歳のデビュタントで初めて婚約者に会ったエレスティーナだったが、そこで素行の悪い婚約者をぶん殴る。 追放された彼女だったが、逆に清々したと言わんばかりに自由を謳歌。冒険者家業に邁進する。 ダンジョンに潜ったり護衛をしたり恋をしたり。仲間と酒を飲み歌って踊る毎日。気が向くままに生きていたが冒険者は若い間だけの仕事だ。そこで将来を考えて錬金術師の道へ進むことに。 一流の錬金術師になるべく頑張るのだった

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

聖なる幼女のお仕事、それは…

咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。  村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。  それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。  この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。

転生したら乙ゲーの世界で第三王子だったので、悪役令嬢が押しな俺は絶対に婚約破棄なんてしない!

いくみ
ファンタジー
気がついたら、赤ん坊だった俺はどうやら生まれ変わったらしい。 それも第三王子という微妙なポジションだ。 それなら!俺は国の事は上の兄達に任せ、気ままな王子ライフを送ろうと決意する。 幼い頃に可愛い婚約者が出来、その可愛さに溺愛する。 そして、後数ヵ月で結婚と言うところまで来たときに邪魔者が俺の幸せライフを邪魔して来たのだ。俺の幸せを邪魔する奴は何人足りとも許さん! 何が異世界からの転移者だ!!ざっけんなよ? 以前別タイトルで投稿しましたが、タイトルを変更して再投稿します。 掲載は不定期に成ります。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...