庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第8章 最終決戦~いでよ!召喚の扉!

第62話

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 シリルは、うつろな目で短剣を首に向けていた。

 「な、何を!」

 オルソが驚いて、言葉を発する。

 「さてアージェ。取引といこうじゃないか」
 「え? 私に何をさせたいのです?」

 まさか、自分に取引を持ち掛けてくるとは思わなかったアージェは、顔を強張らせる。

 「まず、その魔獣に元の世界へ帰って頂け」
 「……そんな事をしても」
 「出来ないのならこの子を殺してから、私が元の世界へ帰ろう」
 「な……」
 「帰ってほしかったのだろう?」

 アージェは俯く。スクランを元の世界へ戻せば、エミールに対抗できるものがいなくなる。そうなれば、ヘリム達に襲い掛かるのは目に見えている。

 「彼を帰してもヘリム達には、近づかせない!」

 ロイが剣を抜く。続いてオルソも剣を抜いた。
 このままだと、どっちを選んでもアージェ一人に責任がいく!

 「では、彼らに近づかないと約束すれば、帰すか?」
 「え? ……わかりました」

 ちらっとシリルを見てアージェが答える。

 「アージェ待て」
 「シリルの命の方が、私には大事なのです! すみません! スクランさん!」

 オルソがアージェを止めようとするが、そう言われオルソも何も言えなくなった。助けたいのは、オルソも一緒だ。いやこの中で、一番それを願っているだろう。
 それにまた呼び出せばいい。そうアージェは思っていた。

 「わかった。健闘を祈る」

 スクランは頷く。

 「召喚の扉よ。私を元の世界へ導け!」

 スクランは、光に包まれ扉の中に消えて行った。

 「帰しましたよ。シリルを解放……」
 「では、次は扉を出現させてもらおうか」
 「……え?」

 エミールの言葉に、アージェは意味がわからず戸惑う。

 「わからないか? 別にあの魔法陣にこだわらなくともいいって事だ。シリルに召喚させようとしたが、出現しなかった。やはり確実に出来る者にさせるのがいいだろう?」

 皆一瞬、エミールの言葉が理解できなかった。
 シリルが扉を出現させれないのは、当たり前だからだ。召喚の能力は、封じられているのだから。

 「よく考えれば、この手があった。あなたが先ほど帰した魔獣スクランを先ほど召喚したのを見て気が付いた。我ながら抜けている」

 驚いてアージェはジッと、エミールを見つめる。
 エミールは、シリルが召喚の能力を封じされている事に気が付いていない。それに全員気が付いた。

 「シリル……」

 そう呼ぶ声に、ハッとする。
 見れば魔法陣に魔力を注ぐのを放棄して、リーフはアージェの隣に立っていた。

 「あなた何をしています!」

 アージェは、驚いて隣に立ったリーフに言った。

 「だって! このままじゃシリルは殺される! お願い! シリルを帰して! その役目、僕がするから。あの魔法陣を消したら僕が!」
 「何を言っているのやら。あなたは確かに、あの魔獣と契約をした。だが召喚したわけではあるまい。つまり出来るかどうかわからない」
 「え……」

 言われてみればそうだ。そんな確証はなかった。
 ただリボンの封印を解いただけだ。それでヘリムのマスターになったのだ。

 「何を言い出すのですか、あなたは!」
 「だって……」

 リーフは、ポロポロと泣き出した。
 アージェは、ギョッとする。
 やっと出会えた。だがこのままだと、自分の事を思い出さずに殺されてしまう。そう思うと、居ても立っても居られなかった。
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