庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
58 / 67
第8章 最終決戦~いでよ!召喚の扉!

第58話

しおりを挟む
 あまりにも驚く内容に、ガッド達はどこから問い詰めていいのかわからなかった。

 「十年以上も私達を騙していたのか! 何故、私に話さなかった! 話してくれさえいれば……」
 「ダミアンさん。落ち着て」

 ウリッセがダミアンに言う。

 「言いたくとも言えなかったのでしょう。あなたの親友が魔獣のせいで危ない目になった。彼自身でどうにかしたいと思った所で、王都からは出られない。何も出来なかった! 何も出来ない。無力だと感じるのは、つらいものです……」

 ウリッセはそう語る。
 たぶん、自分の子供が亡くなった時の事と、重ねているのだろう。

 「ほう。あの時、あなたの娘が死んでいてもそう言えたのかな?」

 エミールの言葉に、ウリッセは驚いた顔を見せた。そう綺麗ごとだ。あの時、娘のナディアが死んでいれば、この場で罵っていただろう。

 「あなたは一体何をしたいんだ?」

 ゴーチェは、苛立ち聞いた。
 フランクが死ねば、エミールは力を失い、我々に最悪殺されるかもしれないと言うのに、ウリッセを煽るような言葉を掛けた。

 「もうやめてくれ! もっと早く覚悟を決めていれば、色々と食い止められたかもしれない!」

 フランクは剣を抜いた!
 もう懺悔して、知っている事は全てはなした。後は自分が死んで、エミールをどうにかしてもらうしかない!
 もう方法はこれしかないのだ!

 「父さん! 後を頼みます!」

 剣で自害しようと、体に力を込めるもフランクは、引く事も押す事も出来なかった!

 「いいのか止めてしまって?」

 エミールは、ワザとらしくダミアンに問う。
 ダミアンは、フランクに手を伸ばしていた! 自害しようとするフランクの動きを術で封じ、動けなくしたのだ!

 「陛下申し訳ありません。バカな息子でも私にとっては、大切な息子なのです……」

 手はそのままに、ダミアンは頭を下げて、ガッドに許しを請う。
 皆、何も言えなかった。ダミアンの気持ちは痛い程わかった。

 「わかった。こうなったのは、我々にも責任がある。頭ごなしにしてしまったからな」
 「甘いな。私を倒すチャンスだったのに」

 エミールは、これで自分を倒せなくなったと言わんばかりだ!

 「甘いか? わかってないな。今回は、二対一なんだが?」
 「数でごり押しか? わかってないのは、あなたの方だ。人間には、情で訴えた方が効果がある。今だって、チャンスを棒に振っただろう?」

 今の言葉で何故自分の名前を教え、フランクをマスターだと暴露したかわかった。最初からこれを狙っていたのだ!
 作戦は、エミールが登場した時から始まっていた!
 もう怒りでフランクを殺そうとする者も、フランクが自分で死ぬ事もない。それを回避させたのだ!

 「なんて卑劣なやり方を!」

 アージェは、睨みながらエミールに叫んだ!

 「卑劣? 策士と言ってほしいものだな」
 「何が策士だ! シリルを人質に取っておいて!」

 今度はオルソが叫ぶ。

 「人質? 彼は保険だ」
 「同じ事だろう!」
 「ヘリムさん! 私とスクランさんで何とかしますので、さっさと魔法陣を消して下さい!」
 「それは構わないが、シリルは殺される事になる……」

 アージェが言うと、ヘリムは恐ろしい返答を返した!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~

ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。 いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。 テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。 そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。 『強制フラグを、立てますか?』 その言葉自体を知らないわけじゃない。 だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ? 聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。 混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。 しかも、ちょっとだけ違うセリフで。 『強制フラグを立てますよ? いいですね?』 その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。 「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」 今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。 結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。 『強制フラグを立てました』 その声と、ほぼ同時に。 高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、 女子高生と禁断の恋愛? しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。 いやいや。俺、そんなセリフ言わないし! 甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって! 俺のイメージが崩れる一方なんだけど! ……でも、この娘、いい子なんだよな。 っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか? 「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」 このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい? 誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~

世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」  要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。  従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。  命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった! 「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」  ざまぁありです。(教会にはそれほどありません) ※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。 (´>∀<`)ゝゴメンね❤

召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的
ファンタジー
魔法仕掛けの古い豪邸に残された6歳の少女「ノア」 そこに次々と召喚される男の人、女の人。ところが、誰もかれもがノアをそっちのけで言い争うばかり。 もしかしたら怒られるかもと、絶望するノア。 でも、最後に喚ばれた人は、他の人たちとはちょっぴり違う人でした。 魔法も知らず、力もちでもない、シャチクとかいう人。 その人は、言い争いをたったの一言で鎮めたり、いじわるな領主から沢山のお土産をもらってきたりと大活躍。 どうしてそうなるのかノアには不思議でたまりません。 でも、それは、次々起こる不思議で幸せな出来事の始まりに過ぎなかったのでした。 ※ プロローグの女の子が幸せになる話です ※ 『小説家になろう』様にも「召還社畜と魔法の豪邸 ~召喚されたおかげでデスマーチから逃れたので家主の少女とのんびり暮らす予定です~」というタイトルで投稿しています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

処理中です...