54 / 67
第7章 開けてはいけない扉
第54話
しおりを挟む
「さて、あなたには協力を得られないようだし、私は勝手にさせてもらう」
「何を言っている! そんな事はさせない!」
フランクは、剣を抜いた。
それを見たエミールは、深いため息をつく。
「そんななまくらで、私をいくら傷つけても無駄だ。私達は、治癒力が高い。わかりやすく言うと、戦闘向きだ。わかるか? あなたには、万が一にも勝ち目はない! どうしても止めたいと言うのなら方法はある。私達は、マスターが居なくなれば、この世界の普通の人間と同じぐらい弱くなる」
ニヤッとしてエミールはそう告げた。
エミールが言う方法とは、フランクの死を意味するものだ。だが彼は、弱くなるだけで、向こうの世界には戻るとは言わなかった。
フランクは、もう自分ではどうする事も出来ない。そう悟った。
エミールが姿を消した後、フランクは騎士団長に面会した。
素直に話そうと思ったからだ。今はそれしか思いつかなかった。
「で、何だ? 私も忙しい身なんでな」
「無理言ってすみません。その……魔獣の事で相談が……」
そうフランクが切り出すと、団長は大きなため息をつく。
「まだ諦めてないのか? お前には無理だ!」
「え!?」
「出来ると思っていたのか? 陛下さえお出来にならない事を? よく考えろ!」
よく考えろって言われてもそれは納得できなかった。
目の前でアージェが召喚したのをガッドも団長も見ている。しかもフランクも召喚できたのだ!
「何故私が出来ないと断言するのですか! ベランジェが出来たのに、私には出来ないと?!」
「彼は特別だろう。魔術も武術もそつなくこなす。それに幼いので無垢で雑念がなかったのだろう? つまり偶然。まぐれ! 二度と起こらない。わかったか!」
「あなたは団長なのに、召喚出来ると思っていなかったのですか? 万が一にも可能性があるとか考えた事はないのですか!?」
フランクは、召喚を否定された事も、自分が否定された事にも怒りを感じた!
召喚師を選んでおきながら、真っ向から否定するのにも驚いていた。
「なかったな」
「なかったって……。ではなぜ、召喚師を選んだのですか?」
「私は兄弟の中で、一番魔術の出来が悪くてな。だから騎士を選んだ。どうせなら団長になって見返してやろうと思ってな」
「そんな、理由で……」
まさかそんな個人的な理由で、団長にまでなったとは、フランクは思いつきもしなかった。
団長になるぐらいなのだから、誇りを持っていると思っていたのだ。
「私欲でトップを目指して何が悪い! 召喚師を選べば、王都に缶詰だ! 結婚だって好きな者と出来ない事が多いと聞いていた! 犠牲を払ってまでこっちを選んだんだ! まあ、子供の頃にそこまでは、考えてはいなかったがな」
団長がフランクに近づき、肩にポンと手を乗せた。
「フランク。君だってあの時、魔獣を見て焦っていただろう? もし対策を立てずにほいほい召喚したらどうなる? 文献によれば我々じゃ敵わない相手らしい。マスターがしっかりしていないと、大変な事になるのは目に見えている。ベランジェの様な幼い子が、召喚して大丈夫だと思うか?」
「だったら……だったら対策を立てましょう!」
自分には召喚出来ないと言われ、腹を立ててここに来た目的を忘れていたが、今の団長の言葉で思い出す。
団長が言う事はもっともだった。身に染みてわかっていた。
そして、もう今更召喚してしまったとは、言えなかった!
「対策だと? ほう。何か案でもあるのか?」
「魔獣は治癒力が高いらしい。だからそれにも勝る剣を作ってはどうでしょうか?」
「治癒力が高い? それはどの文献に載っていた?」
「えっと。それは……」
「まあいい。騎士の我々が出来そうな事と言えば、それだからな。一応、陛下に進言しておこう」
「ありがとうございます」
そして、この提案がまさかで通った!
アージェが魔獣を呼び出した為、対策が必要だと思っていたのだろう。対策の一つとして、研究する事となる。
元々、魔術に対抗する剣は開発されていた。その延長線の様なものだ。
これは提案したフランクとダミアンが中心となり、元召喚師も含め、召喚師の事を知っている者達で、チームを作り研究を行う運びとなった。
「何を言っている! そんな事はさせない!」
フランクは、剣を抜いた。
それを見たエミールは、深いため息をつく。
「そんななまくらで、私をいくら傷つけても無駄だ。私達は、治癒力が高い。わかりやすく言うと、戦闘向きだ。わかるか? あなたには、万が一にも勝ち目はない! どうしても止めたいと言うのなら方法はある。私達は、マスターが居なくなれば、この世界の普通の人間と同じぐらい弱くなる」
ニヤッとしてエミールはそう告げた。
エミールが言う方法とは、フランクの死を意味するものだ。だが彼は、弱くなるだけで、向こうの世界には戻るとは言わなかった。
フランクは、もう自分ではどうする事も出来ない。そう悟った。
エミールが姿を消した後、フランクは騎士団長に面会した。
素直に話そうと思ったからだ。今はそれしか思いつかなかった。
「で、何だ? 私も忙しい身なんでな」
「無理言ってすみません。その……魔獣の事で相談が……」
そうフランクが切り出すと、団長は大きなため息をつく。
「まだ諦めてないのか? お前には無理だ!」
「え!?」
「出来ると思っていたのか? 陛下さえお出来にならない事を? よく考えろ!」
よく考えろって言われてもそれは納得できなかった。
目の前でアージェが召喚したのをガッドも団長も見ている。しかもフランクも召喚できたのだ!
「何故私が出来ないと断言するのですか! ベランジェが出来たのに、私には出来ないと?!」
「彼は特別だろう。魔術も武術もそつなくこなす。それに幼いので無垢で雑念がなかったのだろう? つまり偶然。まぐれ! 二度と起こらない。わかったか!」
「あなたは団長なのに、召喚出来ると思っていなかったのですか? 万が一にも可能性があるとか考えた事はないのですか!?」
フランクは、召喚を否定された事も、自分が否定された事にも怒りを感じた!
召喚師を選んでおきながら、真っ向から否定するのにも驚いていた。
「なかったな」
「なかったって……。ではなぜ、召喚師を選んだのですか?」
「私は兄弟の中で、一番魔術の出来が悪くてな。だから騎士を選んだ。どうせなら団長になって見返してやろうと思ってな」
「そんな、理由で……」
まさかそんな個人的な理由で、団長にまでなったとは、フランクは思いつきもしなかった。
団長になるぐらいなのだから、誇りを持っていると思っていたのだ。
「私欲でトップを目指して何が悪い! 召喚師を選べば、王都に缶詰だ! 結婚だって好きな者と出来ない事が多いと聞いていた! 犠牲を払ってまでこっちを選んだんだ! まあ、子供の頃にそこまでは、考えてはいなかったがな」
団長がフランクに近づき、肩にポンと手を乗せた。
「フランク。君だってあの時、魔獣を見て焦っていただろう? もし対策を立てずにほいほい召喚したらどうなる? 文献によれば我々じゃ敵わない相手らしい。マスターがしっかりしていないと、大変な事になるのは目に見えている。ベランジェの様な幼い子が、召喚して大丈夫だと思うか?」
「だったら……だったら対策を立てましょう!」
自分には召喚出来ないと言われ、腹を立ててここに来た目的を忘れていたが、今の団長の言葉で思い出す。
団長が言う事はもっともだった。身に染みてわかっていた。
そして、もう今更召喚してしまったとは、言えなかった!
「対策だと? ほう。何か案でもあるのか?」
「魔獣は治癒力が高いらしい。だからそれにも勝る剣を作ってはどうでしょうか?」
「治癒力が高い? それはどの文献に載っていた?」
「えっと。それは……」
「まあいい。騎士の我々が出来そうな事と言えば、それだからな。一応、陛下に進言しておこう」
「ありがとうございます」
そして、この提案がまさかで通った!
アージェが魔獣を呼び出した為、対策が必要だと思っていたのだろう。対策の一つとして、研究する事となる。
元々、魔術に対抗する剣は開発されていた。その延長線の様なものだ。
これは提案したフランクとダミアンが中心となり、元召喚師も含め、召喚師の事を知っている者達で、チームを作り研究を行う運びとなった。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
強制フラグは、いりません! ~今いる世界が、誰かの二次小説の中だなんて思うかよ! JKと禁断の恋愛するなら、自力でやらせてもらうからっ!~
ハル*
ファンタジー
高校教師の俺。
いつもと同じように過ごしていたはずなのに、ある日を境にちょっとずつ何かが変わっていく。
テスト準備期間のある放課後。行き慣れた部室に向かった俺の目の前に、ぐっすり眠っているマネージャーのあの娘。
そのシチュエーションの最中、頭ん中で変な音と共に、俺の日常を変えていく声が聞こえた。
『強制フラグを、立てますか?』
その言葉自体を知らないわけじゃない。
だがしかし、そのフラグって、何に対してなんだ?
聞いたことがない声。聞こえてくる場所も、ハッキリしない。
混乱する俺に、さっきの声が繰り返された。
しかも、ちょっとだけ違うセリフで。
『強制フラグを立てますよ? いいですね?』
その変化は、目の前の彼女の名前を呼んだ瞬間に訪れた。
「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」
今まで感じたことがない違和感に、さっさと目の前のことを終わらせようとした俺。
結論づけた瞬間、俺の体が勝手に動いた。
『強制フラグを立てました』
その声と、ほぼ同時に。
高校教師の俺が、自分の気持ちに反する行動を勝手に決めつけられながら、
女子高生と禁断の恋愛?
しかも、勝手に決めつけているのが、どこぞの誰かが書いている某アプリの二次小説の作者って……。
いやいや。俺、そんなセリフ言わないし!
甘い言葉だなんて、吐いたことないのに、勝手に言わせないでくれって!
俺のイメージが崩れる一方なんだけど!
……でも、この娘、いい子なんだよな。
っていうか、この娘を嫌うようなやつなんて、いるのか?
「ごめんなさい。……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」
このセリフは、彼女の本心か? それともこれも俺と彼女の恋愛フラグが立たせられているせい?
誰かの二次小説の中で振り回される高校教師と女子高生の恋愛物語が、今、はじまる。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~
世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」
要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。
従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。
命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった!
「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」
ざまぁありです。(教会にはそれほどありません)
※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。
(´>∀<`)ゝゴメンね❤
召還社畜と魔法の豪邸
紫 十的
ファンタジー
魔法仕掛けの古い豪邸に残された6歳の少女「ノア」
そこに次々と召喚される男の人、女の人。ところが、誰もかれもがノアをそっちのけで言い争うばかり。
もしかしたら怒られるかもと、絶望するノア。
でも、最後に喚ばれた人は、他の人たちとはちょっぴり違う人でした。
魔法も知らず、力もちでもない、シャチクとかいう人。
その人は、言い争いをたったの一言で鎮めたり、いじわるな領主から沢山のお土産をもらってきたりと大活躍。
どうしてそうなるのかノアには不思議でたまりません。
でも、それは、次々起こる不思議で幸せな出来事の始まりに過ぎなかったのでした。
※ プロローグの女の子が幸せになる話です
※ 『小説家になろう』様にも「召還社畜と魔法の豪邸 ~召喚されたおかげでデスマーチから逃れたので家主の少女とのんびり暮らす予定です~」というタイトルで投稿しています。

とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる