庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第7章 開けてはいけない扉

第54話

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 「さて、あなたには協力を得られないようだし、私は勝手にさせてもらう」
 「何を言っている! そんな事はさせない!」

 フランクは、剣を抜いた。
 それを見たエミールは、深いため息をつく。

 「そんななまくらで、私をいくら傷つけても無駄だ。私達は、治癒力が高い。わかりやすく言うと、戦闘向きだ。わかるか? あなたには、万が一にも勝ち目はない! どうしても止めたいと言うのなら方法はある。私達は、マスターが居なくなれば、この世界の普通の人間と同じぐらい弱くなる」

 ニヤッとしてエミールはそう告げた。
 エミールが言う方法とは、フランクの死を意味するものだ。だが彼は、弱くなるだけで、向こうの世界には戻るとは言わなかった。
 フランクは、もう自分ではどうする事も出来ない。そう悟った。
 エミールが姿を消した後、フランクは騎士団長に面会した。
 素直に話そうと思ったからだ。今はそれしか思いつかなかった。

 「で、何だ? 私も忙しい身なんでな」
 「無理言ってすみません。その……魔獣の事で相談が……」

 そうフランクが切り出すと、団長は大きなため息をつく。

 「まだ諦めてないのか? お前には無理だ!」
 「え!?」
 「出来ると思っていたのか? 陛下さえお出来にならない事を? よく考えろ!」

 よく考えろって言われてもそれは納得できなかった。
 目の前でアージェが召喚したのをガッドも団長も見ている。しかもフランクも召喚できたのだ!

 「何故私が出来ないと断言するのですか! ベランジェが出来たのに、私には出来ないと?!」
 「彼は特別だろう。魔術も武術もそつなくこなす。それに幼いので無垢で雑念がなかったのだろう? つまり偶然。まぐれ! 二度と起こらない。わかったか!」
 「あなたは団長なのに、召喚出来ると思っていなかったのですか? 万が一にも可能性があるとか考えた事はないのですか!?」

 フランクは、召喚を否定された事も、自分が否定された事にも怒りを感じた!
 召喚師を選んでおきながら、真っ向から否定するのにも驚いていた。

 「なかったな」
 「なかったって……。ではなぜ、召喚師を選んだのですか?」
 「私は兄弟の中で、一番魔術の出来が悪くてな。だから騎士を選んだ。どうせなら団長になって見返してやろうと思ってな」
 「そんな、理由で……」

 まさかそんな個人的な理由で、団長にまでなったとは、フランクは思いつきもしなかった。
 団長になるぐらいなのだから、誇りを持っていると思っていたのだ。

 「私欲でトップを目指して何が悪い! 召喚師を選べば、王都に缶詰だ! 結婚だって好きな者と出来ない事が多いと聞いていた! 犠牲を払ってまでこっちを選んだんだ! まあ、子供の頃にそこまでは、考えてはいなかったがな」

 団長がフランクに近づき、肩にポンと手を乗せた。

 「フランク。君だってあの時、魔獣を見て焦っていただろう? もし対策を立てずにほいほい召喚したらどうなる? 文献によれば我々じゃ敵わない相手らしい。マスターがしっかりしていないと、大変な事になるのは目に見えている。ベランジェの様な幼い子が、召喚して大丈夫だと思うか?」
 「だったら……だったら対策を立てましょう!」

 自分には召喚出来ないと言われ、腹を立ててここに来た目的を忘れていたが、今の団長の言葉で思い出す。
 団長が言う事はもっともだった。身に染みてわかっていた。
 そして、もう今更召喚してしまったとは、言えなかった!

 「対策だと? ほう。何か案でもあるのか?」
 「魔獣は治癒力が高いらしい。だからそれにも勝る剣を作ってはどうでしょうか?」
 「治癒力が高い? それはどの文献に載っていた?」
 「えっと。それは……」
 「まあいい。騎士の我々が出来そうな事と言えば、それだからな。一応、陛下に進言しておこう」
 「ありがとうございます」



 そして、この提案がまさかで通った!
 アージェが魔獣を呼び出した為、対策が必要だと思っていたのだろう。対策の一つとして、研究する事となる。
 元々、魔術に対抗する剣は開発されていた。その延長線の様なものだ。

 これは提案したフランクとダミアンが中心となり、元召喚師も含め、召喚師の事を知っている者達で、チームを作り研究を行う運びとなった。
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