庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第7章 開けてはいけない扉

第52話

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 召喚をしてみたい! そう言い出したのは、アージェが八歳の時だった。
 それなりに魔術も剣術も出来るアージェは、召喚にも興味津々だった。
 お願いした相手はオルソ。アージェは、おじいちゃんっ子だったのだ。だから将来は、オルソと同じ召喚師の道を選ぶ事を既にこの時に決めていた。

 この話をオルソは、当時の団長に話し、ガッドに話を通してもらったのだ。
 ほとんどの者が魔術師を選び、召喚師を選ぶ者がいなかった。魔術を使えるのに使えなくなるからだ。しかも騎士になれば、王都から自由に出られなくなる。
 だいたいの者は、親に自由がなくなると言われ、魔術師を選んでいた。
 フランクを最後にずっと召喚師になった者はいない。

 召喚の許可がおりたアージェは、ガッド、騎士団長、オルソ、それにダミアンから聞いてフランクも見守る中、期待を胸に召喚する。

 「いでよ! 召喚の扉! 我が名はベランジェ! ここに契約を願う!」

 手を掲げ、教えて貰った台詞をアージェは叫ぶ。
 魔法陣から扉が出現し、その扉が光り輝き真ん中からかぱっと開くと、エメラルドグリーンの光が二つ見える。
 扉から長い黒髪に黒いローブの男が出現した! スクランだ。

 アージェ以外は、体を強張らせる。本当に召喚など出来ると思っていなかったからだ。だから何も対処方法を考えてはいない!

 「見て! おじいちゃん! 出来たよう!」

 アージェだけが、嬉しくて舞い上がっている。
 スクランは、フッと立ち尽くす四人に振り返った。
 全員、剣に手を掛けた。

 「物騒だな。それで斬りかかってくるつもりか? 大丈夫だ。魔獣は、マスターの味方だ。しかし驚いたな。こんな小さな子供に呼び出されたのは初めてだ。芯の強い子だな」

 そう言うと、片膝を地面につけスクランは屈んだ。

 「ベランジェと言ったか。私に何を望む」
 「ベランジェ! こっちへこい!」

 オルソが慌てて呼ぶも嫌だと、アージェは首を横に振る。

 「暫くこの世界に呼ばれないと思っていたが、召喚はすたれたのか?」

 膝をついたままスクランは、四人に聞いた。

 「他の国の事はわからないが、我が国では許可なく召喚は出来ない」

 スクランの質問に、ガッドが答えると、なるほどと頷く。

 「ベランジェ。次に呼ぶ時は、どうしてもの時にした方がよさそうだ。その時は、力をかそう」

 察したのかスクランはそう言うと、立ち上がった。
 不思議そうな顔をするもアージェは頷く。

 「では。また会えるのを楽しみにしている」

 そうアージェに言うとスクランは、右手を掲げる。

 「召喚の扉よ。私を元の世界へ導け!」
 「あ、待って!」

 スクランが帰るんだとわかったアージェがそう言うも、魔法陣から扉が出現し、真ん中からかばっと開くと、スクランの体が光が包まれる。そして、扉の中に吸い込まれるように消え、ぱたんと扉は閉じ消えた。
 アージェは、茫然としている。
 直ぐに立ち去った事により三人は安堵する。
 だがフランクは違った。

 「あの、私にも召喚をさせて下さい!」

 その言葉に、三人は驚く。

 「ならん! いいか。今日の事は外には漏らさないように!」

 そう言うと、ガッドはその場を去って行く。

 「ダミアンには、オルソから召喚はできなかったと伝えておくように」
 「え? 父さんにも内緒ですか? どうして!?」
 「わからないのか? 今の我々には、魔獣に対して対抗する術がない! 何かあったらどうする? 召喚が本当に出来れると知れれば、我々だって狙われる可能性がある! いいな。私達が黙っていればただの騎士だ!」

 フランクは愕然とする。
 確かに魔術を捨て、騎士を選んだ。でもフランクは、騎士を選んだのではなく、召喚師を選んだのだ。
 他の者は、召喚など信じていなかったが、フランクはアージェの様に、最初から信じていた。

 「オルソ。ベランジェにも言って聞かせる様に! 出来ないようであれば、魔術師になるように言え」
 「え!? わ、わかりました。きちんと伝えます」

 アージェは、もう召喚が出来ないんだという事だけはわかった。だが、何故ダメなのかはわからなかった。
 召喚師になりたいアージェは、オルソと約束を交わすのだった。
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