庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第6章 選択の真実

第45話

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 オルソがシリルやチェチーリアを襲う理由もなく、ダミアンも自分の息子を殺そうとはしないだろう。ウリッセも昨日言っていた様に、自分の娘を巻き込むはずがない。
 ゴーチェは、城に来てから連絡を取った形跡もなく、シリルに何かした様子もない。
 アージェは、皆の目の前で魔獣を召喚した事から魔術師のマスターではない。
 リーフも自分の家族を襲う事などないだろうし、七年前は八歳だ。

 こうなると魔術師達の目的を知りたいところだった。
 今のところ、思いつかないのだ。
 魔獣であるヘリムを連れ去った理由や、シリルを二年も手元に置いてこちら側に、手渡した事。何か事を起こすとしても、シリルは未だ目を覚ましていない。
 そしてフランクの剣を奪った事だ。
 ヘリムを殺そうとして奪ったとしても、それは何故か。
 元の姿になったヘリムには用がないからなのか、それとも剣の用途は違う事だったのか。
 だがそれも逃げる為に使い、魔術師の手を離れた。
 これだけは、相手の意図しない事だろうと皆は思っていた。

 「でも何かしっくりこないと言うか……」

 アージェがボソッと言う。
 そして、腕の中で寝ているヘリムに目を落とす。

 「そうです! 召喚師は、このヘリムさんの存在をどうやって知ったのでしょうか? ほとんど城の中に居た彼を……」
 「城の中に入った事がある者なのか? しかし警備の騎士と魔術師以外は、儀式以外の時は、ほとんど近づかない場所だ」

 アージェが言うと、ゴーチェが続けて発言する。
 皆もハッとした。
 魔術師が村を襲う前に、ヘリムを捕らえに城に来ていた。召喚師が知らなければ、命令出来ない事だ!

 「なるほど。召喚師には魔獣の声が聞こえると言っていたな。独り言でも呟いた声をその者が聞いた。そうなれば相手は、魔術師として城の警備にあたっている者なのか? しかし……十年以上前に勤務していた事になるな」

 ロイがそう言って考え込む。
 召喚師は、元々魔術師だ。相手は魔術師として生活していた事になる。
 十二年前に捕らえられたのだからその時に勤務していた者。だいぶ昔の為、調べるのは大変そうだ。

 リーフも引っかかっている事があった。

 (召喚師には魔獣の声が聞こえる。なんだっけ? 何か大切な事を……)

 ヘリムの声をアージェも聞けたという事だ。そこに行きあたると、疑問が浮かぶ。
 ヘリムは、犬の時にアージェの前で話さなかったか?
 そう考えてリーフは気づく!
 
 「あぁ!!」

 つい声を上げたリーフを全員が驚いて振り向く。

 「どうしました?」
 「どうしましたじゃない! 知っていたんですよね? ヘリムからリボンがほどける前から僕が召喚師だったて事を!」

 立ち上がり、横に居るアージェにリーフは叫んでいた。
 ヘリムは、アージェの前で散々言葉を発していた。しかも、作戦中止だとも言っていた!
 何か策を講じていた事は、アージェも気が付いたはずだ。だがアージェは、気づかないフリをしていたのだ!

 「何を言っています。先に騙したのはあなたの方ではありませんか。それにヘリムさんも私に聞こえるのを知っていて、話していたと思いますが?」

 それを聞きリーフは、目を丸くする。
 よく考えればそうだ。
 ヘリムは、この国の召喚師の仕組みを知っていた。ならばアージェが召喚師だとわかって話していた事になる。

 「酷い。騙すなんて……」
 「どっちがです? あなただってヘリムさんをそのままゲージに入れようとしてませんでしたか?」
 「………」

 俯いたままリーフは、答えられない。
 そうだった。知らないふりをして、ゲージに入れてしまおうとしたのだったと思い出す。

 「これ二人共……」
 『何だ煩いなぁ……』

 詳しく事情を知らない皆は、二人の言い合いを驚いて見ていた。
 オルソが声を掛けると同時に、ヘリムが目を覚ます。

 「おや、目を覚ましましたか?」

 アージェが、ヘリムを見て言った。

 『うん? 何故また犬になっている!』
 「この方が運ぶのに便利だからです」
 「もしかして、会話をしているのか?」

 ダミアンが驚いた様にアージェに聞いた。

 「はい。目を覚ましたようです」
 「だったら元の姿に戻って頂いても宜しいか? 私達には聞こえない」
 「わかりました」

 ダミアンに言われ、アージェはヘリムを床に降ろし、リボンをほどいた。
 一瞬にしてヘリムは、犬から人間の姿に変わる!
 それを始めて目にした他の者は、息をのんだ。
 わかっていても驚いたのだ。
 その中で一人、ムッとしてリーフは、ヘリムを見ているのだった。
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