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第1章 出会い
第2話
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祖母は魔術師証を持っていた為、リーフを養うぐらいなら稼げていたのだが、その祖母が先日なくなった。
ここは魔術師の国。魔術を使えても証が無ければ、リーフが魔術が使えようとも仕事の依頼がこない。それほど魔術師証はこの国では、なくてはならない物だった。
リーフは、祖母に村から出るな、王都にも行くなと言われていた。どうしてなのかは、聞かされていない。祖母から十五歳になったら話すと言われていたが、病に倒れてからすぐになくなった為、話す時間がなかったのだろう。結局何も聞いていなかった。
なので決死の覚悟で、王都に出て来たのである。
「あぁ、せめて記憶が戻らないかな……」
そう言うとリーフは、左手に持っていた年季の入った緑色の巾着を胸の前で、ギュッと握り目を閉じた。
リーフには、二年前以前の記憶がなかった。怖い目にあったからだと聞いていた。だが全くないわけでもなく、シリルという兄がいた事や、二年前までは違う村に居た事をぼんやりと覚えてはいた。
そして二年前に祖母は言った。『男として過ごしてほしい』と――。
そうリーフは、本当は少女なのだ。二年間男の子として過ごして板についた振る舞いで、今のところバレてはいない。魔術師証も無事? 男として発行になっていた。
問題はそこまでさせられた理由だけど、記憶がないのでわかりようもなく、祖母の意思に従うしかない。それで魔術師証も男として受けたのだった。
とここまではよかった。全財産を持って王都に来て、試験を受けたらスッカラカン。リーフが思っていたより試験料がかかった。
「飛んで帰るかな……。半日あればきっと着くよね? でもすぐに仕事がないと、帰っても生活ができない……。はぁ……」
またリーフは、魔術師証を眺めつつ深いため息をついた。
魔術を使って帰る事は出来る。だがお金がないので生活出来ないのである。だが魔術師証を持ってないと仕事がこない。
「こうなったらここで仕事を探すしかないかな?」
そう呟くもどこに行けば仕事を受けられるかわからない。そしてまた一つため息。
「ねえ見て! 研究所で人員募集しているわ!」
「あら本当! あ、でも男性のみだって……」
「なーんだ。あぁ、アージェさんと一緒に研究できるかもと思ったのに!」
女性達の会話に、リーフは顔を上げ反応した。
がばっと立ち上がり辺りを見渡す。彼女達の居場所は、すぐにわかった。
近くにある建物前にいた。リーフは小走りでそこに向かう。
建物はどちらかというと新しいが、他の建物同様に蔦が壁にはっていた。グラディナの多くの建物は、このように蔦が壁にはっている建物が多い。
彼女達はリーフと目が合うと、じっとりとリーフを見てクスクスと笑いながら去って行った。
リーフはどう見ても王都に住んでいるように見えない。よれよれの服装で、色も緑色ではなくグレーだった。緑色なのは髪と瞳。ただし見方よっては青色にも見えるシーグリーン色。
しかしリーフは、そんな事は気にせず、彼女達が立ち去った場所に立つ。そこには扉があり看板がついていた。
『王国付属研究所』と一段目に書いてあり、その下には『請負屋』と書いてある。
「請負? 研究依頼でも? 僕にはそっちはできないけど……」
そう呟くと、彼女達が見ていただろう張り紙に目をやった。
急募!
魔術師の男性の方
(魔術師証をお持ちの方は即採用)
「魔術師! しかも魔術師証を持ってれば即採用!!」
リーフはこれを逃してなるものか! とこれに飛びついた!
扉をガンガンと叩く。
「はい。そんなに叩かなくとても聞こえますよ」
そう言って扉は開かれた。
そこから現れた人物をリーフはポカーンとして見ていた。
この国に一番多い深緑の髪に整った顔つき。切れ長の瞳も深緑色。年齢はリーフより少し上ぐらいに見える。
長身で勿論、緑色のローブ。いや前が開いていて、そこから見える腰には剣を下げている。ローブではなくマントだ。
そうするとこの彼は、魔術師ではなく騎士なのかもしれない。
ラパラル王国には、王国付属の魔術師団と騎士団があり、魔術師は緑のローブを騎士は緑のマントを着用している。国章を確認せずともすぐに、ラパラル国の者だとわかる。
(こんなきれいな人、初めて見た)
リーフは、こういう人を美形というのだろうと惚けていた。
ここは魔術師の国。魔術を使えても証が無ければ、リーフが魔術が使えようとも仕事の依頼がこない。それほど魔術師証はこの国では、なくてはならない物だった。
リーフは、祖母に村から出るな、王都にも行くなと言われていた。どうしてなのかは、聞かされていない。祖母から十五歳になったら話すと言われていたが、病に倒れてからすぐになくなった為、話す時間がなかったのだろう。結局何も聞いていなかった。
なので決死の覚悟で、王都に出て来たのである。
「あぁ、せめて記憶が戻らないかな……」
そう言うとリーフは、左手に持っていた年季の入った緑色の巾着を胸の前で、ギュッと握り目を閉じた。
リーフには、二年前以前の記憶がなかった。怖い目にあったからだと聞いていた。だが全くないわけでもなく、シリルという兄がいた事や、二年前までは違う村に居た事をぼんやりと覚えてはいた。
そして二年前に祖母は言った。『男として過ごしてほしい』と――。
そうリーフは、本当は少女なのだ。二年間男の子として過ごして板についた振る舞いで、今のところバレてはいない。魔術師証も無事? 男として発行になっていた。
問題はそこまでさせられた理由だけど、記憶がないのでわかりようもなく、祖母の意思に従うしかない。それで魔術師証も男として受けたのだった。
とここまではよかった。全財産を持って王都に来て、試験を受けたらスッカラカン。リーフが思っていたより試験料がかかった。
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またリーフは、魔術師証を眺めつつ深いため息をついた。
魔術を使って帰る事は出来る。だがお金がないので生活出来ないのである。だが魔術師証を持ってないと仕事がこない。
「こうなったらここで仕事を探すしかないかな?」
そう呟くもどこに行けば仕事を受けられるかわからない。そしてまた一つため息。
「ねえ見て! 研究所で人員募集しているわ!」
「あら本当! あ、でも男性のみだって……」
「なーんだ。あぁ、アージェさんと一緒に研究できるかもと思ったのに!」
女性達の会話に、リーフは顔を上げ反応した。
がばっと立ち上がり辺りを見渡す。彼女達の居場所は、すぐにわかった。
近くにある建物前にいた。リーフは小走りでそこに向かう。
建物はどちらかというと新しいが、他の建物同様に蔦が壁にはっていた。グラディナの多くの建物は、このように蔦が壁にはっている建物が多い。
彼女達はリーフと目が合うと、じっとりとリーフを見てクスクスと笑いながら去って行った。
リーフはどう見ても王都に住んでいるように見えない。よれよれの服装で、色も緑色ではなくグレーだった。緑色なのは髪と瞳。ただし見方よっては青色にも見えるシーグリーン色。
しかしリーフは、そんな事は気にせず、彼女達が立ち去った場所に立つ。そこには扉があり看板がついていた。
『王国付属研究所』と一段目に書いてあり、その下には『請負屋』と書いてある。
「請負? 研究依頼でも? 僕にはそっちはできないけど……」
そう呟くと、彼女達が見ていただろう張り紙に目をやった。
急募!
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「魔術師! しかも魔術師証を持ってれば即採用!!」
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扉をガンガンと叩く。
「はい。そんなに叩かなくとても聞こえますよ」
そう言って扉は開かれた。
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