庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第6章 選択の真実

第42話

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 大きい丸いテーブルに十個の椅子。昨日会議をした部屋にリーフ、オルソ、アージェ、そしてアージェが召喚した魔獣も一緒に居た。
 この魔獣の名は、スクランと言う。先ほどリーフは、自己紹介をしてもらった。
 あと犬のヘリムもいる。まだ気を失ったままアージェの腕の中だ。

 「七年前の魔術師と同じ人物でした……」

 ボソッとリーフが呟く。

 「やはりそうか」

 リーフの言葉にオルソがそう言った。
 アージェも頷いている。

 「いえ、その……歳を取った感じがなかったんです!」
 「歳ですか?」

 アージェは、リーフの言っている事がわからなかった。

 「ヘリムが言っていたように、魔獣だったのかもしれない」
 「なんだと!」

 オルソが驚く。
 アージェも驚いて、抱いているヘリムに目線を落とした。

 「弱いのではなく、相手が同じ強さだったのですね……」

 アージェもそういう結果に至った。

 「ちょっと待って下さい! あの魔術師が魔獣なら誰がマスターなのです? ヘリムさんとやりあった。しかも彼の上を行く。マスターはいるでしょう……」
 「しかし、シリルやリーフを狙っている。偶然じゃないだろう。俺の孫だと知っている……。この事は、ほとんどの者が知らないはずだ」

 アージェとオルソは、強張った顔を見合わせた。
 謎が増えたのだ!

 トントントン。
 ノックが聞こえ、扉が開いた。
 ゴーチェにダミアン、ウリッセにロイ。そしてガッドが最後に入室した。
 フランクは、別室で寝ている。

 「おや? ヘリムがいないようだが……」

 ガッドが部屋を見渡し言った。

 「ここに居ります」

 アージェに抱きかかえられた犬のヘリムを見て、ガッドは目を丸くする。

 「何故犬に?」
 「すみません。この方が移動しやすかったので……」
 「十年ぶりに見る姿だ……」

 アージェの腕の中で眠るヘリムを覗き込み、ガッドはそう呟いた。
 ガッドが言っていた事は本当だったのかと、皆は驚く。

 「皆すまない。大事な話がある」

 ヘリムを覗いていた顔を上げ、ガッドが言った。
 それに皆頷き、席についた。
 時計回りにガッド、ロイ、ダミアン、ウリッセ、、一つ開けてスクラン、アージェ、リーフ、オルソ、そしてゴーチェの順に座った。

 「まずは皆に謝らなければならない」

 そう言ってガッドが口火を切った。
 真剣な眼差しで、皆を見渡す。

 「昨日、私達は、皆に揺さぶりを掛けた。この中に内通者がいるのではないかと思っての事だ。一番怪しんでいたのはフランクだった。あの魔術師の格好をした魔獣のマスターの可能性を疑ったからだ」

 ガッドの驚く内容の話に皆驚いた。
 疑ってはいるとは思ったが、あの魔術師を魔獣と知っていたとは思わなかった!

 「お、お待ち下さい! 陛下は、あの魔術師が魔獣だと知っておられたのですか!」

 そう驚いて尋ねたのは、ダミアンだ!

 「すまないダミアン。あなたの息子だった為内緒にしていた。知ったのは昨日だ。ヘリムに聞いたのだ」
 「ヘリムと私達が結託していないと思わせる為に一芝居打った。父上がヘリムがこの城に居た事を知っているのは、相手も承知の所。また何らかのアクションをするだろうと思っての事だ。すまない」

 ガッドに続き、ロイもそう言って説明した。

 「ではヘリムさんが逃げ出して行った先と言うのは、陛下の元だったという事ですか?」

 ゴーチェの問いに、そうだとガッドとロイは頷いた。
 そしてガッドは、詳しい内容を話し出した。
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