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第5章 魔術師の正体

第40話

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 アージェとオルソは、唇をかみしめる。
 まさかヘリムがやられ、リーフが捕らわれるとは思ってもみなかった。

 「オルソさん、かなり好ましくない状況です。もしかするとリーフがリーファーだとバレているのではないでしょうか?」
 「気づいていたのか……」
 「昨日、部屋を訪ねた時に伺いました。そんな事より、もしそうだとすると何とかしないといけません。あの魔術師はきっと、二回とも目的を達成していたのでしょう。そして今回は、リーフを手に入れる事が目的ならそれを阻止しないと!」
 「それはそうだが……」

 オルソもアージェに言われなくともリーフを助け出さなくてはいけない事はわかっていた。
 何が目的かわからないが、やはりリーフも狙っていたのだ!
 ずっとヘリムが狙いだと思っていたので油断していた。

 「俺達が攻撃を仕掛けに出たところで、近づけもしないだろうな……」

 悔しそうにオルソは言う。
 オルソ達も気が付いた。ダミアンが術を封じられている事を。
 だったら二人は、浮く事が出来ない!
 宙に逃げられれば終わりだ!

 「フランクさん! ダミアンさん!」

 二人を呼ぶ声に驚いて皆、振り向いた!
 ヘリムが開けた五階の穴からウリッセが顔を覗かせていた!

 「今、そちらへ向かいます!」
 「気を付けろ! 魔法陣に触れたら術が封じられる!」

 ダミアンが叫ぶ。
 どうやって術を封じられたか三人はわかった。
 ウリッセは頷くと、壁を伝う様に地面の向かう。

 「っち」
 「……っや」

 魔術師は舌打ちすると、リーフに手を伸ばす。

 「お待ちなさい!」

 アージェは、慌てて走り出した!
 そんな事をしても間に合わないのは、わかっている! だが走り出していた。
 チラッと魔術師はアージェを見るも何故か、ダミアン達に向かって術を繰り出した!

 「え!?」

 驚いてアージェは振り向いた。
 フランクは剣を構える! そこに氷の刃が降り注ぐ!
 今フランクが持っている剣は、魔法を跳ね返すだけの剣だ。魔獣対応の剣に予備はない。だがそれでも、術は跳ね返せるはずだった。だが、まるで効果がない!
 フランクは、それでもダミアンの盾になった!

 「くっ……」
 「フランク!」

 ダミアンを庇う様に立ったフランクに、ダミアンが叫ぶ!

 「フランクさん!」

 結界が届く範囲に来たウリッセが、二人に結界を張った!
 だが一瞬で破られた!

 「え!?」

 ウリッセが驚く。
 前回の術の時は、リーフが張った結界は壊されなかった!
 また剣で受け止めた三人も、かすり傷程度だった!
 手加減していたのかと驚くもウリッセは張り直す。
 だがフランクは、その場に崩れ落ち倒れた!

 「フランク!」

 ダミアンは、慌てて駆け寄った!
 声を掛けるが、フランクは反応を示さない!

 「許しません!」

 魔術師が、ハッとしてアージェを見る。
 アージェは、左手を開き空に向かって伸ばしていた。

 「いでよ! 召喚の扉!」
 「アージェ! 待て!」

 アージェの手の上に魔法陣が出現し、そこに門のような扉が浮かび上がった!
 オルソが驚いて止めるもアージェは続ける。 

 「我が名はベランジェ! ここに契約を願う!」

 扉が光り輝き、真ん中からかぱっと開くと、エメラルドグリーンの光が二つ見える。それは魔獣の瞳だった!
 扉からは、長い黒髪に黒いローブの男が出現した!

 (あれが召喚……) 

 リーフは、凝視して見ていた。
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