庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
34 / 67
第4章 姿を現した魔術師

第34話

しおりを挟む
 一回目はシリルを捕らえさせる為、二回目は剣を奪う為。そう考えればこれもつじつまが合ってしまう。

 「魔術師はシリルが目的だと思われる襲撃を過去に二度行っております。七年前に村が焼かれました。あれは、その魔術師の仕業でしょう。勿論シリルが目的だった。だがその時は、シリルはうまく逃げ切った。ですが二年前にもう一度彼を襲い、今度は捕らえるのに成功しております」
 「そうだな」

 ゴーチェの話に、ロイは頷く。
 オルソもアージェも強張った顔つきだ。二人もまた、その事に行きあたっていた。だが言えずにいたのだ。
 チラッとゴーチェは、オルソも見るも話しを続ける。

 「そこまでした彼を魔術師は、いとも簡単に手放すとは思えません。それなのにシリルは今、私達の手中です。今までの行動を考えれば、わざと私達に彼を渡したのではないのでしょうか? 彼を殺さずに生け捕りにするのは、相手はわかっていたはずです」

 ゴーチェが語り終わると、ロイが立ち上がった。

 「そんな事は言われなくてもわかっている。だからこそだろう。彼を何の為に送り込んだかという事だ! 普通は事を運ぶ手はずを整える為、あるいは内通者と接触させる為だ」
 「まさか! フランクが内通者だと仰るのですか!」

 ロイの言葉にガバッと立ち上がり、ダミアンが問う。

 「流れから言ってあり得るだろう?」
 「ヘリムは? お疑いだったのでは?!」

 ロイの返答に、またダミアンが問う。

 「フランクが疑われない様にする為に送り込んだろう」
 「支離滅裂だな。ガッド……陛下と俺が悪だくみをして、その魔術師ともつながっている。しかもシリルをも送り込んで、内通者はフランク? それなら君も疑わしい。内通者は君の相棒、ウリッセではないのか?」
 「何故、私が!」

 ウリッセが驚いて立ち上がる。

 「魔術師とつながりのあるイサルコと仲良しなのは君だろう? 君は剣の事も知っていた」

 驚く事言うヘリムに皆、唖然としていた。
 王子のロイも疑わしいなど、この国の者なら思っていても言わないだろう。

 「ウリッセが疑わしいのはわかるが、ロイ王子まで疑いますか」
 「な……」

 ゴーチェがそうヘリムに言うと、ウリッセは驚いた顔をした。
 自分も皆に疑われているのかと驚いたのだ。
 しかし考えれば、一番魔術師と繋がりがありそうなのは、ウリッセだ。
 今度は皆、ウリッセを見る。

 「バカバカしい! 自分の子供を危険な目に遭わせてまで、あんな事はしない!」

 ウリッセは叫ぶように言った!
 それには、それもそうだとウリッセの事情を知っている皆は頷く。
 リーフもそれはないと思った。

 「ゴーチェ、取りあえずシリルからは目を離すな。以上解散!」

 ガッドは突然ため息交じりにそう言い立ち上がる。収拾がつかなくなったので、一旦終了といったところだろう。

 「ゴーチェ、後は頼んだ」

 そう一言言うと、ロイも部屋を後にした。
 バタンと扉が閉まると、はぁっと皆、気が抜けた様になる。

 「一体殿下は、どうなされたのだ……」

 ダミアンは呟いた。

 「今日は、皆には城に泊まって頂く。部屋はもう用意してある」

 ゴーチェがそう皆に言った。

 「それって最初から私達を……」

 ゴーチェの言葉に、アージェが言う。最初から帰さないつもりだった。

 「皆さん、申し訳ありません。私の剣が奪われたばかりに、こんな事に……」
 「フランク、あなたのせいではない」

 オルソはそう言って、ポンとフランクの肩を叩いた。

 「皆さんは、私を疑って……」

 ウリッセは、俯いたままそう聞いた。
 ダミアンが伝えに行くと言ったのに、わざわざ城に来た。様子を見に来たと捉えられてもおかしくはない。
 ロイを疑わなくとも、自分は疑われているのかと聞いたのだ。

 「そういう訳ではない。フランクがと言うのならウリッセ、あなたも疑わしいと言うだけだ。まあ残念だが、陛下は大小なり全員お疑いなのかもしれないな」

 ゴーチェがそう言うと、皆もそう思った。
 どっと疲れた会議になったのだった――。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~

世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」  要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。  従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。  命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった! 「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」  ざまぁありです。(教会にはそれほどありません) ※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。 (´>∀<`)ゝゴメンね❤

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

処理中です...