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第4章 姿を現した魔術師
第33話
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もしかしたらシリルが解放されたのは、ヘリムが逃げた事により居場所やシリルの事がバレるのも時間の問題かもと思ったから……。
リーフはそう思いつく。
でも、ダミアンが言っていた通り、魔術師の狙いがヘリムの命ではないとしたら?
一回目に襲った時だって、気付かれないように襲えば殺せたかもしれない。だがそうしなかった。シリルに襲わせ、自分は加担していない。
そう言えば一回目も二回目もフランクが関わっていた。そう思いチラッとリーフは、フランクを見る。
「フランク、あなたは森で襲われたそうだな。相手はあの魔術師だったか?」
そうロイがフランクに聞いた。
リーフと同じく、彼に疑惑を持ったようだ。
フランクは、強張った顔つきでロイを見ていた。
「それは、団長に話した通り、突然火の玉が飛んできて剣を構える暇もなく……。ですので、相手は見ておりません。申し訳ありません」
そう答えたフランクは頭を下げ、そのまま俯いた。
「ロイ、彼を疑っているのか?」
「疑うも何も一番怪しいでしょう? 彼は剣を奪われています。剣の情報はどこから? 研究者の一部と召喚師の者しか知らない話ですよ、父上」
「しかし……」
「肩を持ちたくなるのもわかりますが……」
「何!? そんな事はない! 公平に見ている!」
「どうだか……」
ガッドとロイの二人の会話に、その場の者は固まった。
仲が良かった二人が、争いを始めたからだ。
「あの、殿下。陛下はその様な方ではないと思いますが……」
「あなたが言うか? ダミアン」
ダミアンは、ガッドの右腕と言ってもいい。一番信頼を置いている者だ。それは、ロイだけではなく、他の者も知っている事だった。
「………」
「ロイ!」
「父上。作り話をでっち上げて、彼と何を企みで?」
そう言ってチラッと、ヘリムを見た。
ロイは、城に犬がいたと言う事も嘘だと思っているようだ。
「私が何故彼と?」
「では何故、儀式をしないなどと言い出したのです?」
「それは、ゴーチェからリーフがヘリムのマスターのようだと聞いたか……」
「いいえ。その前から儀式などするつもりはなかったですよね? 父上。何もご用意を始めていなかったではありませんか!」
ロイの言葉に、皆驚いた。
ゴーチェは、リーフが召喚師の様で、召喚師の能力の封印する許可をもらったと伝えてあった。
その後、アージェからの資料に添えてあった、リーフがヘリムのマスターになっていた事をこの会議の為に城についた時に報告したのだ。
「ゴーチェ、ヘリムにブレスレットを付けたのは誰だ?」
「フ、フランクですが。しかしあれは、私が命令し渡した物……」
ゴーチェは、ロイの問いにそう答えた。
ロイが言いたい事はわかった。フランクが偽物もしくは、効果がないブレスレッドをヘリムに付けたと言いたいのだ。
魔獣が本来の力がなければ、魔術師用のマジックアイテムで十分。つまりロイの言う通り、もしただのブレスレッドだったならば、容易に外せヘリムは逃げ出す事が可能だ。勿論これはリーフが、マスターではないと言う話の場合だ。
そして、ロイの思っている通りならフランクは、ヘリムを逃がした事になり、ガッドと策略していなくともあの魔術師とは繋がっている事になる。
皆、チラッとフランクを見るも彼は俯いたままだ。それが逆に、肯定しているように見えなくもない。
「失礼を承知で申し上げますが、あのブレスレッドはそうそう手に入る物ではありません。フランクが同じ物を持っていたとは思えません。それに怪しいのはどちらかというと、シリルでしょう」
「!」
「え?」
立ち上がって言ったゴーチェの言葉に、オルソとアージェが驚きを見せる。
リーフも驚いた。いや、リーフも怪しいと思っていた。ただ認めたくなかった。
それは、魔術師がシリルを自分達の手に渡す為に接触を図ったという事だ。
リーフはそう思いつく。
でも、ダミアンが言っていた通り、魔術師の狙いがヘリムの命ではないとしたら?
一回目に襲った時だって、気付かれないように襲えば殺せたかもしれない。だがそうしなかった。シリルに襲わせ、自分は加担していない。
そう言えば一回目も二回目もフランクが関わっていた。そう思いチラッとリーフは、フランクを見る。
「フランク、あなたは森で襲われたそうだな。相手はあの魔術師だったか?」
そうロイがフランクに聞いた。
リーフと同じく、彼に疑惑を持ったようだ。
フランクは、強張った顔つきでロイを見ていた。
「それは、団長に話した通り、突然火の玉が飛んできて剣を構える暇もなく……。ですので、相手は見ておりません。申し訳ありません」
そう答えたフランクは頭を下げ、そのまま俯いた。
「ロイ、彼を疑っているのか?」
「疑うも何も一番怪しいでしょう? 彼は剣を奪われています。剣の情報はどこから? 研究者の一部と召喚師の者しか知らない話ですよ、父上」
「しかし……」
「肩を持ちたくなるのもわかりますが……」
「何!? そんな事はない! 公平に見ている!」
「どうだか……」
ガッドとロイの二人の会話に、その場の者は固まった。
仲が良かった二人が、争いを始めたからだ。
「あの、殿下。陛下はその様な方ではないと思いますが……」
「あなたが言うか? ダミアン」
ダミアンは、ガッドの右腕と言ってもいい。一番信頼を置いている者だ。それは、ロイだけではなく、他の者も知っている事だった。
「………」
「ロイ!」
「父上。作り話をでっち上げて、彼と何を企みで?」
そう言ってチラッと、ヘリムを見た。
ロイは、城に犬がいたと言う事も嘘だと思っているようだ。
「私が何故彼と?」
「では何故、儀式をしないなどと言い出したのです?」
「それは、ゴーチェからリーフがヘリムのマスターのようだと聞いたか……」
「いいえ。その前から儀式などするつもりはなかったですよね? 父上。何もご用意を始めていなかったではありませんか!」
ロイの言葉に、皆驚いた。
ゴーチェは、リーフが召喚師の様で、召喚師の能力の封印する許可をもらったと伝えてあった。
その後、アージェからの資料に添えてあった、リーフがヘリムのマスターになっていた事をこの会議の為に城についた時に報告したのだ。
「ゴーチェ、ヘリムにブレスレットを付けたのは誰だ?」
「フ、フランクですが。しかしあれは、私が命令し渡した物……」
ゴーチェは、ロイの問いにそう答えた。
ロイが言いたい事はわかった。フランクが偽物もしくは、効果がないブレスレッドをヘリムに付けたと言いたいのだ。
魔獣が本来の力がなければ、魔術師用のマジックアイテムで十分。つまりロイの言う通り、もしただのブレスレッドだったならば、容易に外せヘリムは逃げ出す事が可能だ。勿論これはリーフが、マスターではないと言う話の場合だ。
そして、ロイの思っている通りならフランクは、ヘリムを逃がした事になり、ガッドと策略していなくともあの魔術師とは繋がっている事になる。
皆、チラッとフランクを見るも彼は俯いたままだ。それが逆に、肯定しているように見えなくもない。
「失礼を承知で申し上げますが、あのブレスレッドはそうそう手に入る物ではありません。フランクが同じ物を持っていたとは思えません。それに怪しいのはどちらかというと、シリルでしょう」
「!」
「え?」
立ち上がって言ったゴーチェの言葉に、オルソとアージェが驚きを見せる。
リーフも驚いた。いや、リーフも怪しいと思っていた。ただ認めたくなかった。
それは、魔術師がシリルを自分達の手に渡す為に接触を図ったという事だ。
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