32 / 67
第4章 姿を現した魔術師
第32話
しおりを挟む
「では、先ほどの事件をダミアン頼む」
「はい」
ガッドに言われ、ダミアンもゴーチェと同じく静かに立ち上がる。
「では……。犬の依頼主イサルコの娘とウリッセの娘は仲が良かったらしく、二人で行動を共にしていたようです。夕刻、その二人が犬を探しに森へ向かって戻って来ないと、ウリッセの元にイサルコが現れました。彼の話では、どうやらその犬はアージェに依頼した犬の事だったらしく、それを聞いたウリッセはアージェに聞きに向かいました。私達は、アージェにその犬は、魔獣だったと聞いた次第です。その子供達ですが、無事森で保護されるも謎の魔術師が現れ、我々を襲ってきました。っと言っても襲撃された訳ではありません。そのチャンスがあったのにも関わらず、その者は森に火をつけて、自分が来た事をアピールしました。私には、そう見えました」
ダミアンの言葉に、言われればそうだと周りの者は頷いた。
あれだけの事が出来るのだから奇襲をかければ、自分達をまとめて殺す事も出来た。でもしなかった。
殺す事が目的でないとすれば、何だろう?
そう考えていると、ダミアンは続きを話し出す。
「その魔術師は、その場を立ち去る時に、奪い取ったフランクの剣を持ち帰りました。その剣は、私達が開発した対魔獣用の剣です。もしかしたら剣の能力を知って、持ち帰った可能性があります。ですので、剣を奪う事が目的にあったのではないかと思われます。以上」
ダミアンは、軽く礼をすると、スッと座った。
この場にいる全員がダミアンの考えに同意していた。
殺さず剣を奪った。ただどうやって剣の事を知ったかは謎だ。
ヘリムが魔獣だと知っていたという事は、やはり騎士が召喚師だと知っているという事だろう。
そう誰もが、予測した。
スッと、ロイが右手を上げた。
「追加報告がある。ウリッセ」
「はい」
ウリッセは立ち上がり、軽く礼をする。
「子供達から詳しく聞いた所、今回襲ってきた魔術師の服装が、イサルコさんの知り合いの魔術師に似ていると言う事でした。またイサルコさんの話によると、ジーンさんと言う魔術師の犬らしく、彼にお願いされアージェさんに依頼したようで、イサルコさん自身は犬を見た事はないそうです。以上です」
「多分、偽名だろう」
ウリッセが座ると、ロイがそう言った。そのロイの鋭い視線が、全員を見渡す。
そしてダミアンもまた、同じくジッと聞きいる皆を鋭く見ていた。
「その犬の事だが……もしかしたら城にいた犬かもしれん。召喚師を見守る犬としてずっといた犬だ。いや、今思えば魔獣だったのだろう。エメラルドグリーンの瞳の犬だった」
そう静かにガッドは言って、ヘリムを見る。勿論、その言葉に全員ヘリムに注目する。
犬がヘリムだった事は、わかっている。ガッドが言った犬と同じかどうかが知りたい。
「あぁ。城にいたのは俺だ。ある日連れ出された」
「何故、言わなかった?」
ゴーチェが鋭い視線を飛ばし、ヘリムに問う。
「では聞くが、君はその犬の存在を知っていたか?」
「いや、知らなかったが……。だが、今、言われて合わせたという事もあるだろう?」
「そうか。それもそうだな」
ゴーチェにそう指摘され、ヘリムは頷くと口を閉ざしてしまった!
確かにゴーチェの言う通り、話を合わせて自分がその犬だと嘘をついたかもしれない。
「私はそんな犬、見た事はないが?」
ボソッとロイが呟く。
「私も見た事も聞いた事もありません。ですが、陛下が嘘をつく理由がないのですからいたのでしょう」
ダミアンがそう言うと、うむっとガッドが頷く。
「十二年程前に姿を消した」
「十二年? それで何故今さらひょっこり出て来た?」
ガットが言うと、疑いの眼差しでロイがヘリムを見る。
「勿論、逃げ出したからだ」
「逃げ出した……。それはあの魔術師からか?」
ゴーチェがヘリムに問うと頷く。
「シ、シリルは、その時、シリルは一緒だったのか?」
オルソが聞くと、またヘリムは頷いた。
「どんなよう……」
「嘘かもしれない。オルソ、まともに相手にするな」
ロイは、興奮気味のオルソに落ち着けと、そう言う。
確かに嘘かもしれない。十二年は長すぎる。しかも連れ出した目的が分からない。
(でももし、本当だったら襲って来た目的って……)
自分は全く関係がなかった事になる。逆だった。たまたま居合わせたのがリーフで、巻き込まれ方だった!
「はい」
ガッドに言われ、ダミアンもゴーチェと同じく静かに立ち上がる。
「では……。犬の依頼主イサルコの娘とウリッセの娘は仲が良かったらしく、二人で行動を共にしていたようです。夕刻、その二人が犬を探しに森へ向かって戻って来ないと、ウリッセの元にイサルコが現れました。彼の話では、どうやらその犬はアージェに依頼した犬の事だったらしく、それを聞いたウリッセはアージェに聞きに向かいました。私達は、アージェにその犬は、魔獣だったと聞いた次第です。その子供達ですが、無事森で保護されるも謎の魔術師が現れ、我々を襲ってきました。っと言っても襲撃された訳ではありません。そのチャンスがあったのにも関わらず、その者は森に火をつけて、自分が来た事をアピールしました。私には、そう見えました」
ダミアンの言葉に、言われればそうだと周りの者は頷いた。
あれだけの事が出来るのだから奇襲をかければ、自分達をまとめて殺す事も出来た。でもしなかった。
殺す事が目的でないとすれば、何だろう?
そう考えていると、ダミアンは続きを話し出す。
「その魔術師は、その場を立ち去る時に、奪い取ったフランクの剣を持ち帰りました。その剣は、私達が開発した対魔獣用の剣です。もしかしたら剣の能力を知って、持ち帰った可能性があります。ですので、剣を奪う事が目的にあったのではないかと思われます。以上」
ダミアンは、軽く礼をすると、スッと座った。
この場にいる全員がダミアンの考えに同意していた。
殺さず剣を奪った。ただどうやって剣の事を知ったかは謎だ。
ヘリムが魔獣だと知っていたという事は、やはり騎士が召喚師だと知っているという事だろう。
そう誰もが、予測した。
スッと、ロイが右手を上げた。
「追加報告がある。ウリッセ」
「はい」
ウリッセは立ち上がり、軽く礼をする。
「子供達から詳しく聞いた所、今回襲ってきた魔術師の服装が、イサルコさんの知り合いの魔術師に似ていると言う事でした。またイサルコさんの話によると、ジーンさんと言う魔術師の犬らしく、彼にお願いされアージェさんに依頼したようで、イサルコさん自身は犬を見た事はないそうです。以上です」
「多分、偽名だろう」
ウリッセが座ると、ロイがそう言った。そのロイの鋭い視線が、全員を見渡す。
そしてダミアンもまた、同じくジッと聞きいる皆を鋭く見ていた。
「その犬の事だが……もしかしたら城にいた犬かもしれん。召喚師を見守る犬としてずっといた犬だ。いや、今思えば魔獣だったのだろう。エメラルドグリーンの瞳の犬だった」
そう静かにガッドは言って、ヘリムを見る。勿論、その言葉に全員ヘリムに注目する。
犬がヘリムだった事は、わかっている。ガッドが言った犬と同じかどうかが知りたい。
「あぁ。城にいたのは俺だ。ある日連れ出された」
「何故、言わなかった?」
ゴーチェが鋭い視線を飛ばし、ヘリムに問う。
「では聞くが、君はその犬の存在を知っていたか?」
「いや、知らなかったが……。だが、今、言われて合わせたという事もあるだろう?」
「そうか。それもそうだな」
ゴーチェにそう指摘され、ヘリムは頷くと口を閉ざしてしまった!
確かにゴーチェの言う通り、話を合わせて自分がその犬だと嘘をついたかもしれない。
「私はそんな犬、見た事はないが?」
ボソッとロイが呟く。
「私も見た事も聞いた事もありません。ですが、陛下が嘘をつく理由がないのですからいたのでしょう」
ダミアンがそう言うと、うむっとガッドが頷く。
「十二年程前に姿を消した」
「十二年? それで何故今さらひょっこり出て来た?」
ガットが言うと、疑いの眼差しでロイがヘリムを見る。
「勿論、逃げ出したからだ」
「逃げ出した……。それはあの魔術師からか?」
ゴーチェがヘリムに問うと頷く。
「シ、シリルは、その時、シリルは一緒だったのか?」
オルソが聞くと、またヘリムは頷いた。
「どんなよう……」
「嘘かもしれない。オルソ、まともに相手にするな」
ロイは、興奮気味のオルソに落ち着けと、そう言う。
確かに嘘かもしれない。十二年は長すぎる。しかも連れ出した目的が分からない。
(でももし、本当だったら襲って来た目的って……)
自分は全く関係がなかった事になる。逆だった。たまたま居合わせたのがリーフで、巻き込まれ方だった!
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~
世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」
要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。
従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。
命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった!
「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」
ざまぁありです。(教会にはそれほどありません)
※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。
(´>∀<`)ゝゴメンね❤
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる