庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
29 / 67
第4章 姿を現した魔術師

第29話

しおりを挟む
 慌ててウリッセが、フランクに結界を張った!
 だが魔術師は彼を通過し、近くに吹き飛ばれていたフランクの剣を拾うと急上昇する。
 襲われなかった事に皆は安堵するも何故剣を奪ったかわからない。

 「剣など何に使う気です……」

 アージェも体を起こした。
 そしてフランクも目を覚ます。

 「魔術師は?」

 全員無事だと思ったフランクが聞くも、全員無言で空を見上げたままだ。
 フランクも顔を上げ驚く。

 「剣?!」

 フランクは体を起こし、自分の剣を探す。

 「私の剣か!」

 その声に魔術師は、チラッとフランク見るも腰辺りに剣を構えると、ヘリムに向かって一直線に飛んで行く!

 「まさか、あの魔術師は、ヘリムが魔獣だと知っていて……」

 アージェは呟いた後、叫ぶ!

 「ヘリムさん! たとえあなたでもその剣で刺されれば、ただではすみません! 回避して下さい!」

 魔獣はマスターを得れば、ほぼ無敵だと言われている。
 だが人間と同じで、心臓を刺されれば死ぬ。

 十年程前から対魔獣用に剣の研究がされていた。
 使う事はないかもしれないが、試験的に研究者の騎士がその剣を所持していた。
 効能は、刺した数秒間だけだが、体の自由を縛るものだった。その時間があれば、急所を突け、必ず仕留める事が出来る事になる。

 今その剣をあの魔術師が手にしている!
 そして、相手は魔獣のヘリム。
 研究が成功していれば、ヘリムは魔術師に仕留められる事になる。

 「え? あの剣って魔獣の術までも打ち消すんですか?」
 「いえ、違います。魔獣を殺傷する能力が備わっています」
 「え! じゃ……」

 リーフは驚いた!
 もし、あの魔術師がヘリムのマスターだったら下手すれば、自分が呼び出した魔獣を殺してしまう行為をしている事になる。
 演技だとしてもしないだろう。
 それに偶然って事もない。
 魔術師が自分の得意な魔術ではなく、わざわざ剣で理由なく戦う事などないからだ。

 (あれ? じゃヘリムのマスターは、あの魔術師ではない?)

 しかしあの魔術師が、犬のヘリムが魔獣だと知っていて捕らえていた事は確かだ。
 そのヘリムが逃げ出し、イサルコを使って探した。
 自分が動くと目立つし、彼なら異国の者だ。動かしやすかったのかもしれない。

 「僕は凄い勘違いを……」
 「オルソさん。彼、魔獣ですよね? マスターもいるのですよね? おかしくないですか?」

 そう言うアージェの言葉がリーフの耳に届く。
 アージェの台詞に、オルソが頷く。

 「え? 何がおかしいんですか?」
 「相手は、君と同じ魔術師だ。俺達からしたら手練れた魔術師だったとしても、彼からしたらただの魔術師のはず。まあこれは、そう言い伝えられているだけだが」
 「こんなものなのでしょうか? 少しがっかりです」

 オルソの説明が終わると、アージェがボソッと呟いた。
 魔獣は、人間より優れていると思われていた。
 だがヘリムを見る限り、あの魔術師と強さは変わらない様に思えたのだった。
 魔術師が手にしている剣を作ったのが、アホらしくなるほどに……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もふもふの王国

佐乃透子(不定期更新中)
ファンタジー
ほのぼの子育てファンタジーを目指しています。 OLな水無月が、接待飲み会の後、出会ったもふもふ。 このもふもふは…… 子供達の会話は読みやすさ重視で、漢字変換しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~

世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」  要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。  従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。  命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった! 「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」  ざまぁありです。(教会にはそれほどありません) ※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。 (´>∀<`)ゝゴメンね❤

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

処理中です...