庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第4章 姿を現した魔術師

第27話

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 目的が達成されたから逃げ出した?

 (一体何を……)

 ガサッ。
 考え込んでいると近くから音が聞こえリーフは振り向いた。
 リーフは、相手を見てビクッと体を震わせる。
 目の前に現れたのは、ヘリムだった!

 「どうして、ここが……」
 「全く。何で森に居るんだ? その子達は?」

 リーフは、ごくりと生唾を飲み込んだ。
 逃げ出したはずのヘリムが、タイミングよく現れた!
 これはもう、自分の推理通りかもしれないと、リーフは警戒する。

 (兎に角逃げないと。……あれは?!)

 ヘリムの後ろに、赤い物体が見えた。
 ゴーッと言う聞き覚えのある音が聞こえる。

 「え!? 火の玉!」

 驚いてヘリムは振り向く。
 火の玉は、器用に木の間をすり抜け、四人に向かって来ていた!

 「あの魔術師か! だから森の中では火を使うなって!」

 そう言いながらヘリムは、火の玉に向かって水の玉を投げつけた!
 それは、火の玉を飲み込む様に包み込み蒸発する。辺りはまるで、霧がかかった様になった。

 (これ、どういう事? 作戦?)

 「パパ……」

 ナディアの呟きに、リーフはどうにかしなくてはと思う。
 二人がまた、怯え始めた。

 「ここから出ないと! ナディアちゃんは飛べるよね? このままこの森の上まで行ける?」

 彼女は、小さく首を横に振った。
 浮く事が出来ても、まだ怖くて高くまでは上昇出来ないのだ。

 「兎に角ここから……」
 「近づかないで!」

 三人に近づこうとするヘリムに、睨み付けリーフは叫んだ。
 ヘリムは、それに驚いている。

 「もしかして、ここに現れたから警戒しているのか? マスターの居場所は、把握出来るんだ。納得したか?」
 「ぼ、僕がマスターっていう証拠は? 何故、僕をマスターに選んだの?」

 疑惑の目を向けられ、ヘリムは困り顔だ。

 「知りたいのなら教えてやるが、まずはその子達を救出しなくては、いけないんじゃないのか?」

 ヘリムに言われ、リーフは少女達を見た。
 二人は、また泣き出しそうな顔つきだ。
 リーフは、浮遊の術を他人にかける事が苦手だ。一人は抱っこしたとしても、一人は手を繋いで宙に浮かなくてはならない。
 つまり一人には、術をかけなくては浮けないのだ。

 ヘリムを信用していいのか。
 殺す気なら今殺せただろう。だったら殺す気はないはず。

 「わかった。まずは森を出よう」

 リーフは頷き、ヘリムに返事を返した。
 それを聞くとヘリムは、ネリー抱きかかえた。

 「その子は、リーフが。森の上に出る」

 ヘリムに言われ、リーフはナディアを抱きかかえて、森の上に脱出した。
 森の外は、夕暮れで薄暗くなり始めていた。

 「あ、馬車!」

 ナディアが、馬車を指差す。
 リーフも騎士団の馬車を見つけ、そこ目掛けて飛び立つ。
 ヘリムも一緒について来た。
 リーフがナディアを降ろすと、彼女とウリッセは抱き合う。
 馬車は、先ほど着いたばかりだった。

 「パパ!」
 「ナディア! ダメじゃないか! あぁ、無事でよかった!」
 「これで一安心ですね。彼も一緒とは、探す手間も省けました」

 アージェがヘリムを見て言った。
 まさかここで会うとは誰も思っていなく、彼の行動が不可解だった。

 「ちょっと用事があったんでな。すぐに戻る予定だったんだが……」
 「では、大人しく一緒に戻って下さい」

 フランクは、逃がさないと直接手を掴んで言った。

 「お二人共、ありがとうございました」

 ウリッセは、リーフとヘリムに頭を下げた。

 「いえ、見つかってよかったです」

 リーフは、少女達を見て、ニッコリ微笑んでそう返す。

 「ありがとう」

 ボソッと、アージェの口から感謝の言葉が聞こえ、驚きでリーフはアージェに振り返った。

 「何です?」
 「いえ……」
 「ウリッセさんは、お子さんを亡くされているんです」

 アージェは、そうリーフに告げた。
 どうりで凄く取り乱していた訳だと、納得する。
 本当に良かったと、リーフは笑顔の二人を見て思ったのだった。
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