庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第3章 彼らの関係

第25話

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 はぁっと、アージェ、オルソ、フランク三人揃ってため息をする。
 まさか偶然が重なり、リーフがヘリムのマスターになってしまうなど誰が思うだろうか。

 「悪いが騎士団の館に来てもらう事になる。少なくともマスターの君を置いて、どこかに逃亡するという事はないだろうからな」
 「そうですね。三日後には召喚の能力を封印する事になっているのですから、リーフさんを奪いに来るでしょうね」

 オルソが言うと、頷いてアージェが言った。
 リーフを連れ出しに来たところと捕まえる予定らしい。

 「お布団が無駄にな……」

 ドンドンドン!

 アージェが語っていると、またもや扉を強く叩く音が聞こえ、バンッと勢いよく扉が開いた!

 「アージェさん! 森を教えて下さい!」
 「え? ウリッセさん……」

 驚くアージェに近づくと肩をガシット掴みは早くと急かす。そうとう焦っている様子だ。
 アージェは困惑する。

 「何の話ですか?」
 「ウリッセさん。それじゃアージェもわからない。落ち着いて!」
 「ダミアン。何があった?」

 ウリッセをなだめたのは、後から入って来たオルソの親友ダミアンだ。
 オルソは、ダミアンに問う。
 ウリッセは、四十前後に見える男性で、やわらかい黄緑色の柳色の髪と瞳でフードがついた濃い緑色のローブを着ている。一方ダミアンは、くすんだ青みの緑色のビリジアンの髪に瞳で、フランクと同じ服装だった。マントと剣があれば、全く同じ姿だ。

 「彼の娘が行方不明になった」
 「なんだと!?」

 ダミアンの返答に、オルソだけでなく全員が驚いた。

 「ナディアちゃんが? で、森とは?」

 アージェが質問をすると、ウリッセは肩から手を離した。

 「犬がいなくなった森です! どこですか?」
 「え? 何故その話を?」
 「そんな事は、今はどうでもいい! どこです!」
 「ちょっと待ってください!」

 またウリッセに肩を掴まれ、流石のアージェも困り顔だ。
 犬が居なくなったというのが森だと教えた相手は一人。イサルコだ!
 リーフは、ピーンときた。

 「もしかしてその子は、イサルコさんの犬を探しに?」
 「そうです! ネリーちゃんと一緒に!」
 「リーフさん! 勝手に依頼の情報を……。え? そこに向かわれたのですか?」

 ウリッセは頷いた。
 どうしてそうなったかわからないが、犬が森で居なくなったという嘘を信じて探しに向かったらしい。
 その事に気づいたアージェも驚いている。

 「僕、探しに行って来ます!」
 「ダメです! それに、あなたには関係ないでしょう!」
 「何を言っているんですか! 僕とあなたで招いた事ではないですか! それにもう少しで日が暮れます。悠長な事はしてられません! 森の探索は、日が落ちるまでが勝負です! なので、先に行っています!」

 そういうと、アージェが止めるもリーフは、皆が唖然としている中、扉に向かって走り出した。

 「お待ちなさい!」

 リーフは、開けっ放しの扉から外に出ると、森へ飛んでゆく。
 オルソ達もハッとするが、既に遅い。
 今、リーフを一人にしてはいけなかったのだ。

 「まずいですね……」

 フランクがそう呟いた。

 「もうどうして、こうなるのです!」

 ため息交じりにアージェが言う。
 飛べない彼らには、リーフを追えない。

 「で、今出て行った子は誰だ?」

 ダミアンの問いにオルソとフランクそして、アージェは目配せしあう。

 「私の研究の手伝いに入って頂いた子なのですが……。それより、犬の件は、誰からお聞きになったのでしょうか?」
 「それより早く追わないと!」
 「飛べない私達には、彼は追えません。ですが私が場所を把握しております。話して頂けますね?」

 犬は魔獣だった!
 その犬を探しているイサルコと、接点がある事になる。

 「だったら移動しながら!」

 気が気じゃないウリッセがそう言う。

 「そうだな。俺達が乗って来た馬車の中で話を聞こう」

 オルソがそう言うと、全員頷いた。
 外に出ると、馬車の運転席に座る少年にオルソが声を掛ける。

 「悪いが、我々だけで目的地に向かう。君はここから一人で騎士団の館に戻ってくれないか?」
 「え? はい! 了解しました!」
 「彼を返すのですか? では、ちょっとお待ちを!」

 今回はもしかしたら、魔獣が絡んでいるかもしれない事から少年の身の危険を考えての事だ。
 タイミングがよすぎると思ったフランクの判断だ。
 アージェは五分程すると戻って来て、少年に封筒を手渡した。

 「これを団長に渡して下さい。もしかしたら急いだ方が宜しいかもしれないので。それとこれは、馬車代です。お金を持ち合わせていないでしょう? くれぐれも置き忘れに注意して下さいね」
 「はい! ありがとうございます! では!」

 お金と封筒を握りしめ、少年は足早に去って行った。
 彼に渡したのは、イサルコの報告書だ。こう立て続けに事が起こると、手渡す暇もなさそうだったので、彼に託したのである。

 「お待たせしました。では参りましょうか」

 フランクが運転席に座り御者を務め、他の者は馬車に乗り込んだ。
 そして、馬車は森に向けて出発した。
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