庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第3章 彼らの関係

第24話

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 「ただいま」

 リーフが扉を開け、三人で中へ入って行く。

 「おかえりな……そちらの二人はどなたでしょう? 依頼人ですか?」
 「いえ……。お、お手伝いをしてくれた方で……」
 「手伝って頂いたのですか? しかも女性に?」

 アージェは明らかに怒っている。声のトーンが低い。顔はまだ、怒り顔ではないが無表情だ。

 (だから嫌だと言ったんだ)

 「ご、ごめんなさい。一応断ったのですが……」
 「アージェさん。彼を叱らないであげて……」

 ドンドンドン!
 女性の一人がアージェに話しかけた時、強く扉がノックされた。

 「リーフは無事か!」

 そして、返事を待たずにそう言ってオルソが入って来た。驚いていると、続いてフランクも入って来る。

 「無事ですが。……申し訳ありませんが、先輩方がいらっしゃったので、お引き取り願いませんか? お手伝いありがとうございました」

 心のこもってなさそうな礼を言って、アージェは頭を下げた。リーフも慌てて下げると、彼女達は渋々残念そうに部屋から出て行った。

 「全く、女性をたぶらかせて手伝わせるとは……」
 「な! そんな事してません! あの人達は、アージェさんのファンの方です!」
 「それをわかっていて、連れて来たのですか?!」
 「え!?」
 「アージェ! リーフも断り切れなかったのだろう」
 「次はきちんと断って下さい!」
 「………」

 オルソが肩を持ってくれたが、何となく理不尽さを感じるリーフだった。

 「すまないなリーフ。女性が絡むとこうなのだ」

 オルソは溜息をつきそう言った。

 (女性が絡むと? って! もしかしてアージェさんって女性嫌い?!)

 考えれば心当たりがある。
 性別は関係ない仕事だったのに、募集は男性だった。
 オルソが言っていた、アージェに女性だとバレると……という意味はこれだったのだ!
 アージェにリーフがリーファーだと知られれば、女性だったのかと毛嫌いされる恐れがあったからだった。

 「で、リーフさんがどうかしましたか?」
 「いや、リーフさんではなく、ヘリムさんが姿を消しました」

 アージェの問いに、フランクが答えると、アージェもリーフも驚いた。
 逃げる素振りなどなかった。

 「確かブレスレットを……」
 「彼には聞かなかったようですね」

 またアージェの問いに、フランクが答えると、何故か三人はリーフを見た。
 その目はまるで、原因はリーフだと言わんばかりだ。

 「え? な、何ですか?」

 リーフは、たじろき聞く。
 嫌な予感がひしひしとしてくる。

 「あなた、彼と契約を結びましたね? つまり、今はあなたがマスター」
 「魔獣は、マスターを得る事で、本来の力を発揮出来ます。彼は、マスターはもうこの世にいないと言っていました。もしマスターが不在ならば、あのブレスレットは有効だったはずなのです」

 リーフにアージェが問い、フランクがマスターと魔獣の関係を説明した。

 (だからマスターになってと言ったのか!)

 ゴーチェの言う通りなら、ヘリムはリボンをほどいた事によりリーフが召喚師の能力を持っていると気が付いた。
 事情を知らなさそうなリーフをそそのかし、マスターにした。

 「どうなのだ?」

 オルソが優しく聞いた。

 「……犬に戻って欲しかったので、マスターになって欲しいと言われてなりました。何も知らなくて……。ごめんなさい」

 三人は一斉にやっぱりという顔つきになった。
 リーフの召喚の能力を封印すると言った時に、止めたヘリムの態度を見て、疑ってはいたのだろう。

 「全くあの食わせ者が。何が召喚師でない者に、儀式を行うとどうなるかだ。召喚師だとわかっていての台詞じゃないか!」
 「えぇ、本当に。マスターが死んだと聞かされて油断しました」

 オルソに続き、フランクも悔しそうに言った。

 「やはり確認をするべきでした」

 そしてアージェがそう呟く。

 「ところでリーフさん。体が異常に疲れたりとかは、ありませんか?」

 アージェにそう問われ、マスターになると自分に何か起こるのかと不安になった。

 「ありませんけど。あの、今更なんですが、マスターになったら何か体に害があるんでしょうか?」
 「害はありません。ですが契約した魔獣と魔力が共有になります」
 「え? それだけですか?」

 アージェが、脅す様な聞き方をしてきたので、長らくマスターになったりすると害があるのかとリーフは懸念していたが安堵する。

 「それだけですかって。わかっておりますか? 魔獣が膨大な魔力を使えば魔力が無くなり、いざ使いたい時に使えない状態になるかもしれません。私達は騎士です。魔力が無くなったとしても問題はありませんが、魔術師であるあなたは違うでしょう?」

 アージェにそう言われ、リーフはハッとする。
 仲良く使う分には問題ないが、好き勝手に使われたら困る状態になる。
 そして、だから召喚師を選んだ者は、騎士なんだと納得した。

 「彼は一体、自分本来の力を手に入れて何をする気なのだ?」
 「わかりませんが……。リーフさん、彼は何か言っていませんでしたか?」

 オルソが呟くと、アージェがリーフに問う。
 だがリーフは、聞いていないと首を横に振った。
 そもそもついでの様に、マスターになってくれと言われ承諾した。
 魔獣にとっては、マスターがいるのといないのとでは、大違いのなずなのにそんな風には見えなかった。
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