庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第3章 彼らの関係

第22話

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 とんとんとん。
 研究所についたオルソが扉をノックする。そして、オルソとリーフは中に入った。

 「リーフです。戻りました」

 二人が中に入ったと同時に、研究室の扉からアージェが出て来る。

 「オルソさん、お疲れ様です。もう戻って結構ですよ」
 「……そうか。ではリーフをお願いする。無理は、させるなよ」

 そう言い残すと、オルソは言われた通り帰って行った。

 「もう少し優しくしてあげればいいのに」

 事情を知ったリーフは、ボソッと呟く。

 「何か言いましたか?」
 「べ、別に何も」

 アージェが振り向いて聞くので、リーフは慌てて首を横に振った。

 「そうですか。こちらです。部屋は二階に用意しました」

 そう言ってアージェは、研究室へ入って行く。

 研究室には窓はなく、入って右と左に少し大き目なテーブルがあり、そこに一つずつランプが置いてあって、それが部屋に明かりを灯していた。イスはない。
 テーブルには、資料だと思われる書類や、実験に使う器具などが置いてある。

 アージェは、そのテーブルの間を奥へ歩いて行く。
 奥には白いカーテンが引いてあった。
 真ん中辺でカーテンが重なっているので、その間から更に奥へ行く。
 そこには右側にテーブルとイスがあった。
 正面の壁の左の方に扉がある。アージェはその扉を開けた。

 「こっちです」

 リーフは、頷いてついて行く。
 扉の向こう側には、階段があった。ここから二階に登って行く。
 階段は、壁伝いに右に向かって続いていた。
 登り切って右側に廊下があった。
 部屋は三つ。正面と右手の二つ。

 「奥にある正面の扉が私の部屋です。あなたは、こちらです」

 アージェの部屋は正面で、リーフは、右手奥の扉だ。アージェが、リーフの部屋を扉を開けた。
 正面に窓はあるが、カーテンはなかった。
 そして、右と左に段ボールが積まさっている。

 「すみません。私以外が住む予定がなかったものですから、倉庫として使っていました。可能な限り隣に移したのですが。どうせ三日です。それと掃除はご自分でなさってください。私は、あなたの布団を買いに行って来ます」
 「……え?」
 「言ったでしょう。私以外住む予定はなかったと。布団などありません。村に帰るお金がなかったあなたに、布団は買えないでしょう?」
 「はい……。ありがとうございます」

 驚いたリーフが何とかそう答えると、アージェは頷いた。
 ゴーチェに問われた時に、部屋はあると答えていなかったかと思うリーフだが、アージェが言った通り三日だ。
 それに布団も自腹で用意してくれるという。わがままは言えない。

 「井戸は裏手にあります。バケツは、下の研究室にあります。では、行って来ますね」
 「………」

 何も答えないリーフだが、アージェは気にせず階段から一階に降りて行った。
 部屋は、倉庫として使っていた為か、綺麗にしないとかなり埃だらけだ。
 外へ出る扉は、一か所しかなさそうだった。
 井戸で水を汲み、この部屋を一人で掃除しろと言われ、リーフは唖然としていた。

 「うん。お客さん扱いではないね……」

 そう言うとため息を一つして部屋の中に入り、窓を開けた。
 そこからは、色んな建物が見える。村とは違う建物が建ち並んでいた。
 下を見れば、アージェが言っていた井戸がある。

 「あそこか……」

 リーフは、窓を開けたまま部屋を出て一階におり、研究室でバケツを探す。それはすぐに見つかり、バケツを持って裏の井戸に向かった。
 勿論井戸は使った事がある。いや村では一般的だ。
 王都でも使われている事に驚いたくらいだった。

 「よし」

 水がいっぱいになったバケツを手にリーフはフワッと浮き、開けてきた窓から部屋に入った。
 他の人を浮かせるのは出来なかったが、自分には浮遊を掛け自由に飛ぶ事は出来た。
 部屋に入ったリーフは、窓を閉めた。

 「さてやりますか」

 そう言うとリーフは、バケツの前で下から上に両手を上げた。そしてその手を左右に広げる。
 手の動きと連動して、バケツの中の水が飛び出した!
 それは四方に飛んで行き、スッと壁や天井そして床に消えて行く。
 手をバケツに向けると、再び水はバケツへと戻る。
 水は真っ黒だ!

 「ふう。終了」

 さっきとは違って、部屋中綺麗になっていた。
 リーフは、水魔法が得意だ。
 村ではこうやって、掃除担当をしていた。
 水の膜で埃や泥を覆い、汚れを取る掃除の仕方で、慣れるまで大変だったが今ではお手の物だ。

 リーフは、バケツの水を捨て事務所のソファーに座って、アージェを待っていた。
 暫くすると扉が開く音が聞こえ見ると、アージェが布団を抱え入って来た。

 「おや。もう終わったのですか?」
 「はい。終わりました」

 そう返すリーフに、アージェは驚いた顔をしていた。 
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