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第3章 彼らの関係
第21話
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オルソの話を聞き終えたリーフは、ショックを受けていた。
「僕は、二人と本当の家族じゃなかったんだ……」
オルソは静かに頷いた。
「やはり知らないままだったか。二年前にチェリからリーファーは、シリルを本当の兄だと思っていると聞いていた。まあ仕方がない。あの時はまだ、君は三つだった。家族ぐるみの付き合いだったようだし。……血が繋がっていなくとも二人は君の家族だ」
リーフは、こくんと頷く。
チェチーリアは、本当の孫ではないリーフをずっと育てていてくれたのだった。
「それにしても、アージェさんがオルソさんの孫だなんて信じられません。全く似てませんよね? 特に性格が……」
最後の方は、呟くように言った。
二年前にオルソといたのは、騎士団の後輩だからではなく孫だからだった。
「あぁなったのは、俺のせいなんだろうな。前は素直な子だった……」
オルソも呟くように返した。
人間不信になったのだろう。
オルソがせめて息子がいた事がわかった時点で、家族に話していれば、少しはアージェが受けたショックが違ったのかもしれない。
「そうかもしれない。でも僕にとっては、シリルやおばあちゃんと家族になれたのはそのお蔭で。えっと、だから……元気出して下さい!」
その励ましにオルソは、嬉しそうに頷いた。
「ありがとう。ところで一つお願いがある。三日後の儀式までは、リーフで通して貰えないだろうか? 魔術師証の件も何とかしてもらえるように頼んでみるから……」
「え? あ、はい。僕の方は構いませんけど……」
何故、リーフのままがいいのだろうかと、疑問に思うもリーフは、最初からそのつもりだった。
ただ問題なのは、自分達を襲ってきた相手の事だった。
リーフが狙いだったとするならば、もうバレている可能性がある。リーファーに戻ろうが、リーフのままだろうが変わらない。
「あの、今日襲われた件ですが……。もしかしたら僕が狙われた可能性はないでしょうか? オルソさんの紹介状を使ったからリーファーだとバレて、襲われたのではないかなって。よく考えると、シリルの時も試験を受けた後だったし」
「なるほど。そうなると、試験に関わる者に内通者がいるかもしれないな。……俺も今日の事は、もしやとは思っていた。相手は巧妙だった。あの時、アージェが炎を消滅させなければ、森に火がつき山火事になっていたかもしれない。そして、山火事が起きれば、消火活動をしただろう。どちらにしても馬車を降りていた」
リーフは、言われればそうだと、頷いた。
それにしても魔術師は、森を燃やすのに何も感じていないのだろうか?
リーフは疑問に思った。
この国で育ったのであれば、森を愛し共存する事を学ぶ。
そう考えると、あの魔術師はこの国の者ではないのかもしれない。
「あの二年前の魔術師は、緑色のローブを着ていました! でも、森に平然と火を放っています。この国の人じゃないかも!」
「そうだった! 二年前の話を聞きたいんだった! そうか。この国の魔術師の格好を真似ていたか。他に特徴は?」
オルソは、チェチーリアの安否の確認だけではなく、二年前の事も聞くつもりでいた。まだその時の犯人は、捕まっていないからだ。
「えーと。あ! 髪は紫でした! 砂埃の中だったので絶対かと言われると困りますけど、そう見えました!」
「紫! この国では、あまり見かけない色だな……」
リーフもうんと頷く。
「大変役に立った。ありがとう。儀式はすぐに終わるし痛くも何ともない。王都にいる間は観光でもするといい」
「あ……うん。でもアージェさんは、仕事させるつもりだと思いますけど。あ! アージェさんにリーファーだと言えばいいんだ!」
「その件だが、アージェには黙っていてもらえないか? ほれ、女性だとバレると……」
「……わかりました」
オルソの言う通り、気まずくなるかもしれない。
(僕は気にしないんだけどなぁ)
リーフは、男として二年間過ごして来た為、あまりそういう事を気にしなくなっていた。そりゃ裸でうろつかれれば困るが、そうでなければ大丈夫だ。
そういう事で、頷いで王都から出るまでの間は、男で過ごすことに決めたのだった。
「さて、あまり遅くなるとアージェが煩い。行こうか」
「はい……」
二人は、騎士団の馬車でアージェが待つ研究所に向かった。
「僕は、二人と本当の家族じゃなかったんだ……」
オルソは静かに頷いた。
「やはり知らないままだったか。二年前にチェリからリーファーは、シリルを本当の兄だと思っていると聞いていた。まあ仕方がない。あの時はまだ、君は三つだった。家族ぐるみの付き合いだったようだし。……血が繋がっていなくとも二人は君の家族だ」
リーフは、こくんと頷く。
チェチーリアは、本当の孫ではないリーフをずっと育てていてくれたのだった。
「それにしても、アージェさんがオルソさんの孫だなんて信じられません。全く似てませんよね? 特に性格が……」
最後の方は、呟くように言った。
二年前にオルソといたのは、騎士団の後輩だからではなく孫だからだった。
「あぁなったのは、俺のせいなんだろうな。前は素直な子だった……」
オルソも呟くように返した。
人間不信になったのだろう。
オルソがせめて息子がいた事がわかった時点で、家族に話していれば、少しはアージェが受けたショックが違ったのかもしれない。
「そうかもしれない。でも僕にとっては、シリルやおばあちゃんと家族になれたのはそのお蔭で。えっと、だから……元気出して下さい!」
その励ましにオルソは、嬉しそうに頷いた。
「ありがとう。ところで一つお願いがある。三日後の儀式までは、リーフで通して貰えないだろうか? 魔術師証の件も何とかしてもらえるように頼んでみるから……」
「え? あ、はい。僕の方は構いませんけど……」
何故、リーフのままがいいのだろうかと、疑問に思うもリーフは、最初からそのつもりだった。
ただ問題なのは、自分達を襲ってきた相手の事だった。
リーフが狙いだったとするならば、もうバレている可能性がある。リーファーに戻ろうが、リーフのままだろうが変わらない。
「あの、今日襲われた件ですが……。もしかしたら僕が狙われた可能性はないでしょうか? オルソさんの紹介状を使ったからリーファーだとバレて、襲われたのではないかなって。よく考えると、シリルの時も試験を受けた後だったし」
「なるほど。そうなると、試験に関わる者に内通者がいるかもしれないな。……俺も今日の事は、もしやとは思っていた。相手は巧妙だった。あの時、アージェが炎を消滅させなければ、森に火がつき山火事になっていたかもしれない。そして、山火事が起きれば、消火活動をしただろう。どちらにしても馬車を降りていた」
リーフは、言われればそうだと、頷いた。
それにしても魔術師は、森を燃やすのに何も感じていないのだろうか?
リーフは疑問に思った。
この国で育ったのであれば、森を愛し共存する事を学ぶ。
そう考えると、あの魔術師はこの国の者ではないのかもしれない。
「あの二年前の魔術師は、緑色のローブを着ていました! でも、森に平然と火を放っています。この国の人じゃないかも!」
「そうだった! 二年前の話を聞きたいんだった! そうか。この国の魔術師の格好を真似ていたか。他に特徴は?」
オルソは、チェチーリアの安否の確認だけではなく、二年前の事も聞くつもりでいた。まだその時の犯人は、捕まっていないからだ。
「えーと。あ! 髪は紫でした! 砂埃の中だったので絶対かと言われると困りますけど、そう見えました!」
「紫! この国では、あまり見かけない色だな……」
リーフもうんと頷く。
「大変役に立った。ありがとう。儀式はすぐに終わるし痛くも何ともない。王都にいる間は観光でもするといい」
「あ……うん。でもアージェさんは、仕事させるつもりだと思いますけど。あ! アージェさんにリーファーだと言えばいいんだ!」
「その件だが、アージェには黙っていてもらえないか? ほれ、女性だとバレると……」
「……わかりました」
オルソの言う通り、気まずくなるかもしれない。
(僕は気にしないんだけどなぁ)
リーフは、男として二年間過ごして来た為、あまりそういう事を気にしなくなっていた。そりゃ裸でうろつかれれば困るが、そうでなければ大丈夫だ。
そういう事で、頷いで王都から出るまでの間は、男で過ごすことに決めたのだった。
「さて、あまり遅くなるとアージェが煩い。行こうか」
「はい……」
二人は、騎士団の馬車でアージェが待つ研究所に向かった。
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