15 / 67
第2章 騎士の正体
第15話
しおりを挟む 今日は涼香が大輝の部屋で料理を作っている。
「あ、おたまが無い? おたまーおたまーおたまー」
「あー、だめだ。じゃがいもが……」
「ん? 醤油、これ濃口だけか? しまったなー……へへ」
大輝は気になってチラチラと横目で見る。台所に見に行きたいし、手伝いたいがさっき涼香から「もう! 座っててよ、大輝くん立ち入り禁止」と言われてしまった。
「あ、しまった……塩忘れてたな、まぁいいやどうにかなるさ──今入れよ」
その後も涼香と料理の戦いは続いている。一生懸命な背中を見ていて嬉しくなる。
涼香ちゃんは料理に遊ばれてるみたいだな……。
大輝は希のことを思い出していた。希みたいに涼香になって欲しいと思っていない。代わりを求めてもないし、二人を比べてどうこういう気もない。二人は別の人間なのだから……。二人とも大切な人だ。
「出来た!」
どうやら完成らしい。
嬉しそうにテーブルに並べていく涼香を見て大輝の心も温かくなる。
「いただきます」
鳥の唐揚げにイカとじゃがいもの煮物にサラダが並ぶ。涼香の大好物ばかりだ。箸を持ち一口食べる。
おぉ!?
「美味しい……美味しいな、コレ」
大輝は目を見開く。かなり美味い……悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。大輝は大きな口でそれらを平らげていく。涼香はその様子を微笑みながら見ていた。
視線に気づき大輝が箸を止める。
「うん、どうした?」
「うん? 希さんは料理が上手だったから作るの緊張したけど、良かったなぁって思って」
大輝は涼香にその話をしていたことを思い出した。
どんな気持ちで料理をしていたんだろう。比べられる、そう思っていたんじゃないか……。
大輝は席を立つと涼香を抱きしめる。
「バカ、比べるわけないだろうが……。希は希だし、涼香ちゃんは涼香ちゃんだろう? どちらが良いとか悪いとか……そんなんじゃない……」
「ありがとう。でも比べられるのがイヤだとかじゃないの。私ね希さんが好きなの……大輝くんが話してくれる希さんが……。だから、心配しないで」
涼香は大輝をさらに強く抱きしめた。
「大輝くん、嘘だと思ってんじゃない? 無理させてるとか……」
涼香が胸の中でクスっと笑った。
「じゃあ、私がこうして抱きしめてもらってる時に武人と比べてるとでも思ってる?」
「え? いや、それは──思ってなかったけど……」
まさかの質問に大輝は焦る。そんな事思ってもみなかった。涼香は大輝の頰に触れる。
「比べようがない、でしょ? 私の気持ち、分かった? 大輝くんは大輝くんだから、私は私……それでいいんだよ」
「涼香ちゃん……」
「希さんの分も私が作って大輝くんを太らせてあげる、ふふふ」
涼香は鳥の唐揚げを箸でつまむと大輝の口の中へと放り込んだ。
「……美味しい?」
「……うん、最高」
大輝は涼香の願い通り白飯もお代わりした。美味しいご飯だった。
「やっぱりイカはじゃがいもと食べるのが合うと思うのよね」
「んー、俺は里芋も捨てがたい……」
「なんですと!?……これは私が全部食べるからね! 里芋派め──」
「いや、待て……里芋はイカの旨味を吸ってなかなかいい味が──」
大輝は慌てて大皿を掴む。二人の食卓は賑やかなものになった。
「あ、おたまが無い? おたまーおたまーおたまー」
「あー、だめだ。じゃがいもが……」
「ん? 醤油、これ濃口だけか? しまったなー……へへ」
大輝は気になってチラチラと横目で見る。台所に見に行きたいし、手伝いたいがさっき涼香から「もう! 座っててよ、大輝くん立ち入り禁止」と言われてしまった。
「あ、しまった……塩忘れてたな、まぁいいやどうにかなるさ──今入れよ」
その後も涼香と料理の戦いは続いている。一生懸命な背中を見ていて嬉しくなる。
涼香ちゃんは料理に遊ばれてるみたいだな……。
大輝は希のことを思い出していた。希みたいに涼香になって欲しいと思っていない。代わりを求めてもないし、二人を比べてどうこういう気もない。二人は別の人間なのだから……。二人とも大切な人だ。
「出来た!」
どうやら完成らしい。
嬉しそうにテーブルに並べていく涼香を見て大輝の心も温かくなる。
「いただきます」
鳥の唐揚げにイカとじゃがいもの煮物にサラダが並ぶ。涼香の大好物ばかりだ。箸を持ち一口食べる。
おぉ!?
「美味しい……美味しいな、コレ」
大輝は目を見開く。かなり美味い……悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。大輝は大きな口でそれらを平らげていく。涼香はその様子を微笑みながら見ていた。
視線に気づき大輝が箸を止める。
「うん、どうした?」
「うん? 希さんは料理が上手だったから作るの緊張したけど、良かったなぁって思って」
大輝は涼香にその話をしていたことを思い出した。
どんな気持ちで料理をしていたんだろう。比べられる、そう思っていたんじゃないか……。
大輝は席を立つと涼香を抱きしめる。
「バカ、比べるわけないだろうが……。希は希だし、涼香ちゃんは涼香ちゃんだろう? どちらが良いとか悪いとか……そんなんじゃない……」
「ありがとう。でも比べられるのがイヤだとかじゃないの。私ね希さんが好きなの……大輝くんが話してくれる希さんが……。だから、心配しないで」
涼香は大輝をさらに強く抱きしめた。
「大輝くん、嘘だと思ってんじゃない? 無理させてるとか……」
涼香が胸の中でクスっと笑った。
「じゃあ、私がこうして抱きしめてもらってる時に武人と比べてるとでも思ってる?」
「え? いや、それは──思ってなかったけど……」
まさかの質問に大輝は焦る。そんな事思ってもみなかった。涼香は大輝の頰に触れる。
「比べようがない、でしょ? 私の気持ち、分かった? 大輝くんは大輝くんだから、私は私……それでいいんだよ」
「涼香ちゃん……」
「希さんの分も私が作って大輝くんを太らせてあげる、ふふふ」
涼香は鳥の唐揚げを箸でつまむと大輝の口の中へと放り込んだ。
「……美味しい?」
「……うん、最高」
大輝は涼香の願い通り白飯もお代わりした。美味しいご飯だった。
「やっぱりイカはじゃがいもと食べるのが合うと思うのよね」
「んー、俺は里芋も捨てがたい……」
「なんですと!?……これは私が全部食べるからね! 里芋派め──」
「いや、待て……里芋はイカの旨味を吸ってなかなかいい味が──」
大輝は慌てて大皿を掴む。二人の食卓は賑やかなものになった。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました
toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。
残酷シーンが多く含まれます。
誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。
両親に
「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」
と宣言した彼女は有言実行をするのだった。
一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。
4/5 21時完結予定。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~
世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」
要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。
従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。
命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった!
「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」
ざまぁありです。(教会にはそれほどありません)
※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。
(´>∀<`)ゝゴメンね❤
我儘女に転生したよ
B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。
性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。
夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。
でも、息子は超可愛いです。
魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる