庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
14 / 67
第2章 騎士の正体

第14話

しおりを挟む
 リーフは、ぼんやりと流れゆく風景を眺めていた。
 どうしてこうなったのだろうか。
 あの張り紙にさえ気づかなければ、違う仕事をして無事に村に帰れたのではないか。
 いやその前に、村から出なければ……けど魔術師証を取らなければ生活していけなかった。

 (どうすれば、よかったんだろう)

 考えれば考える程、リーフはわからなくなった。

 チラッと、前に座る三人を見る。
 目の前に座るアージェは、リーフ同様に景色を眺め、ヘリムは腕を組み、目を閉じている。
 フランクは、そんな二人を眺めていた。

 (そう言えば、魔獣の管轄は騎士団なのだろうか?)
 
 リーフには、魔術師団が取り仕切るイメージがあった。
 アージェが関わったから騎士団になったのか。
 そこで、ふと凄く不思議な疑問が湧いて、リーフはヘリムを見た。

 (魔獣が人の姿なのには、誰も疑問を持っていなかった……)

 魔獣という名からすれば、獣のイメージではないか。
 何故、人の姿で驚かないのだろうか。
 彼らにしたらそういうのは、些細な問題なのかもしれない。
 犬が犬以外なものになった。だから魔獣で間違いないという事なのだろう。
 そうリーフは、思う事にした。
 リーフからしたら人間になったのだから、魔獣ではなく人間が犬にされていたと思うのではないかと、首を傾げる事だったが。

 裏通りは森の中だった。つまりは、街を囲う森林を走っていた。
 地面は土。石畳よりぼこぼしているので、結構揺れる。だがリーフは今はそんな事は、気にならなかった。
 これからどうなるのか、そこに意識が行っていたからだ。

 暫くすると、風景が変わる。森林を抜けた。
 薄暗闇から明るい場所に出た為、リーフは目を細めた。そこに赤い物体が見える。
 なんだろうかと目を開けよく見ると、それは大きな火の玉だった!

 「わー!」

 驚いたリーフは、悲鳴を上げ隣に座るオルソの体に抱き着く。
 同じ方向の外を見ていたアージェは立ち上がり走っている中、馬車の扉を開け叫ぶ!

 「止めて!」

 馬車は、急停車する。
 アージェは降りると、ポケットから何かを取り出すと、火の玉に向けて投げた。
 それは水となり、火の玉に当たるもジュッと言って蒸発した。
 気づくと、リーフとヘリム以外は、外に出ていた。

 リーフは、そっと開いている扉から外の様子を伺うと、火の玉に向けて数個の水の玉が飛んでいた。多分、三人が投げたものだろう。
 火の玉は、小さくなったがもう、直前まで迫っている!

 「この大きさなら……」

 アージェはそう呟き、剣を抜いた。
 そして火の玉を真っ二つに切り裂いた!
 驚く事に、火の玉はその場で消滅したのだ!

 「え? なんで?」

 剣で火の玉が真っ二つのも驚いたが、消滅した事にリーフは凄く驚いた。

 「なんで、ではありません! あなた魔術師でしょう! 怖がってブルブル震えているだけなんて! 恥を知りなさい!」
 「ごめんなさい……」

 アージェからガツンと言われ、リーフは項垂れる。いう事はもっともだった。
 今日、魔術師証を取得したとはいえ、魔術は元から使えるのだ。
 ただ普段、火を見ても恐怖心を感じた事はなかったが、あの火の玉を見た途端、恐怖心が湧き上がって来たのだ。

 「まあ、そんなにカリカリするな」
 「そうは言いますが、彼がきちんと対応していれば、私達が出るまでもなかったのですよ! 彼は今日取得したとはいえ、魔術師証を持っているのですよ!」

 オルソがなだめるもアージェの怒りは静まらない。

 「皆さん、危ない!」

 言い争いをしていると突然声が聞こえ振り向けば、馬車の正面に人が浮いていた!
 そして、その者が放ったと思われる氷の刃が、外に出ていた三人に降り注ぐ!
 迫りくる氷の刃にフランクも剣を抜いた!

 「オルソさん!」

  アージェに呼ばれても彼は、硬直して動かない! 慌ててアージェが、オルソの前に出た。
 そして炎の玉同様、切り裂き消滅させた!
 勿論、フランクも同様に切り裂いて、何を逃れた。

 「シリル……」
 「しっかりして下さい! 死にたいのですか!」

 アージェが振り向かず、後ろにいるオルソに叫ぶ。
 リーフは、オルソが呟いた言葉に驚き、馬車の外に出た。
 宙に浮いていたのは、オルソが言ったように、二年前より少し大人びたシリルだった!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

【R18】ハメられましたわ!~海賊船に逃げ込んだ男装令嬢は、生きて祖国に帰りたい~

世界のボボ誤字王
恋愛
「婚約破棄だ、この魔女め! 役立たずめ! 私は真実の愛を見つけた!」  要約するとそんなようなことを王太子に言われた公爵令嬢ジョセフィーナ。  従妹のセシリアに黒魔術の疑いをかけられ、異端審問会に密告されて、とんとん拍子に海に沈められそうになった彼女は、自分が何かの陰謀に巻き込まれたのだと気づく。  命からがら、錨泊していた国籍不明の船に逃げ込むも、どうやらそれは海賊船で、しかも船長は自分をハメた王太子に瓜二つだった! 「わたくしには王家を守る使命がございますの! 必ず生き残って、国に帰ってやりますでげすわ!」  ざまぁありです。(教会にはそれほどありません) ※今気づいたけど、ヒーロー出るまで2万字以上かかってました。 (´>∀<`)ゝゴメンね❤

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...