庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)

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第2章 騎士の正体

第14話

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 リーフは、ぼんやりと流れゆく風景を眺めていた。
 どうしてこうなったのだろうか。
 あの張り紙にさえ気づかなければ、違う仕事をして無事に村に帰れたのではないか。
 いやその前に、村から出なければ……けど魔術師証を取らなければ生活していけなかった。

 (どうすれば、よかったんだろう)

 考えれば考える程、リーフはわからなくなった。

 チラッと、前に座る三人を見る。
 目の前に座るアージェは、リーフ同様に景色を眺め、ヘリムは腕を組み、目を閉じている。
 フランクは、そんな二人を眺めていた。

 (そう言えば、魔獣の管轄は騎士団なのだろうか?)
 
 リーフには、魔術師団が取り仕切るイメージがあった。
 アージェが関わったから騎士団になったのか。
 そこで、ふと凄く不思議な疑問が湧いて、リーフはヘリムを見た。

 (魔獣が人の姿なのには、誰も疑問を持っていなかった……)

 魔獣という名からすれば、獣のイメージではないか。
 何故、人の姿で驚かないのだろうか。
 彼らにしたらそういうのは、些細な問題なのかもしれない。
 犬が犬以外なものになった。だから魔獣で間違いないという事なのだろう。
 そうリーフは、思う事にした。
 リーフからしたら人間になったのだから、魔獣ではなく人間が犬にされていたと思うのではないかと、首を傾げる事だったが。

 裏通りは森の中だった。つまりは、街を囲う森林を走っていた。
 地面は土。石畳よりぼこぼしているので、結構揺れる。だがリーフは今はそんな事は、気にならなかった。
 これからどうなるのか、そこに意識が行っていたからだ。

 暫くすると、風景が変わる。森林を抜けた。
 薄暗闇から明るい場所に出た為、リーフは目を細めた。そこに赤い物体が見える。
 なんだろうかと目を開けよく見ると、それは大きな火の玉だった!

 「わー!」

 驚いたリーフは、悲鳴を上げ隣に座るオルソの体に抱き着く。
 同じ方向の外を見ていたアージェは立ち上がり走っている中、馬車の扉を開け叫ぶ!

 「止めて!」

 馬車は、急停車する。
 アージェは降りると、ポケットから何かを取り出すと、火の玉に向けて投げた。
 それは水となり、火の玉に当たるもジュッと言って蒸発した。
 気づくと、リーフとヘリム以外は、外に出ていた。

 リーフは、そっと開いている扉から外の様子を伺うと、火の玉に向けて数個の水の玉が飛んでいた。多分、三人が投げたものだろう。
 火の玉は、小さくなったがもう、直前まで迫っている!

 「この大きさなら……」

 アージェはそう呟き、剣を抜いた。
 そして火の玉を真っ二つに切り裂いた!
 驚く事に、火の玉はその場で消滅したのだ!

 「え? なんで?」

 剣で火の玉が真っ二つのも驚いたが、消滅した事にリーフは凄く驚いた。

 「なんで、ではありません! あなた魔術師でしょう! 怖がってブルブル震えているだけなんて! 恥を知りなさい!」
 「ごめんなさい……」

 アージェからガツンと言われ、リーフは項垂れる。いう事はもっともだった。
 今日、魔術師証を取得したとはいえ、魔術は元から使えるのだ。
 ただ普段、火を見ても恐怖心を感じた事はなかったが、あの火の玉を見た途端、恐怖心が湧き上がって来たのだ。

 「まあ、そんなにカリカリするな」
 「そうは言いますが、彼がきちんと対応していれば、私達が出るまでもなかったのですよ! 彼は今日取得したとはいえ、魔術師証を持っているのですよ!」

 オルソがなだめるもアージェの怒りは静まらない。

 「皆さん、危ない!」

 言い争いをしていると突然声が聞こえ振り向けば、馬車の正面に人が浮いていた!
 そして、その者が放ったと思われる氷の刃が、外に出ていた三人に降り注ぐ!
 迫りくる氷の刃にフランクも剣を抜いた!

 「オルソさん!」

  アージェに呼ばれても彼は、硬直して動かない! 慌ててアージェが、オルソの前に出た。
 そして炎の玉同様、切り裂き消滅させた!
 勿論、フランクも同様に切り裂いて、何を逃れた。

 「シリル……」
 「しっかりして下さい! 死にたいのですか!」

 アージェが振り向かず、後ろにいるオルソに叫ぶ。
 リーフは、オルソが呟いた言葉に驚き、馬車の外に出た。
 宙に浮いていたのは、オルソが言ったように、二年前より少し大人びたシリルだった!
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