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第1章 出会い
第5話
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王都の端、森に面した場所に大きな黒いお屋敷がデーンと建っていた。それは、五階建てまであるお屋敷で、それを取り囲む塀も三メートル程あり高い。よっこらせっと飛び越える事が出来る高さではない。
その塀には他の建物同様に蔦がビッシリだった。
リーフは、ボシェロ家が見える森の木の上から様子を伺っていた。そして作戦を実行するタイミングを待つ。
見張り役の魔術師だと思われる人物が、敷地内であくびをしている。
「暇そうだな。どうせなら仕事代わってほしいよ……」
ボソッと、リーフはそう零した。
その眠そうな見張り役が、ハッとして駆けて行く。
始まったっと、リーフは人がいないのを確認すると、一直線に建物に近づく。正面玄関の方が騒がしい。アージェが作戦通り、騒いでいるようだった。
リーフは、窓を一つずつそっと覗き込む。だがどの部屋にもいない。そして最後の部屋を確認している時だった。
『いつまで閉じ込めておく気なんだ。おーい、誰かー! って聞こえないか。あぁ暇だ……』
「え? 何今の?」
声が聞こえた時は見つかったかとヒヤリとしたが、リーフに向けての台詞でない事から辺りを見渡した。勿論人影はない。
ふと、はなれが目に留まった。よく見ると、結界が張ってあるように見える。
リーフはもしかしてと思い近づいた。
窓を覗き込むと、白くてふわっふわの犬が、大きなあくびをしているところだった!
「いた!」
つい叫んだ声に、犬はリーフに振り向く。
『子供か……』
「子供って……え? 犬がしゃべった!」
リーフは驚きの声を上げ、慌てて辺りを見渡す。誰にも気づかれた様子はない。安堵どして、犬に目線を戻すと、窓の前まで来ていた。
『君は、俺の声が聞こえるのか?』
「みたいです……」
リーフが犬の質問に小声で答えると、何故か犬の方が驚いて見せる。
驚いているのはこっちだと、リーフは思った。さっきの台詞もこの犬みたいだ。
『ここから出してくれないか? せっかく逃げ出したのに捕まって……。いや、この話はいい。兎に角出してほしい!』
「わかった」
リーフは頷く。元々この犬を連れ出すつもりでここに来たのだから頼まれずとも出すつもりだ。
リーフが右手を伸ばすと、結界と一緒に窓にぽっかりと穴が空いた。
「ねえ、この穴を飛び越えて、僕の方に来れる?」
『あぁ。よっと!』
ぴょーんと犬はジャンプして、器用に穴をくぐり抜け、リーフの胸の中に飛び込んだ! その犬をリーフは、左手でキャッチする。
リーフが結界から手を離すと、ゆっくりと穴は縮まって行く。
「結界は壊さなかったから暫くは気づかれないと思うけど。取りあえず、森へ行こうか」
『そうだな。見つかる前に離れよう』
リーフの提案に犬が頷き、リーフが犬を抱いて森に飛び立つ。
先ほど、豪邸を覗いていた場所まで来て、一応犬を地面に降ろす。逃げる様子はなさそうだからだ。
『なかなかの腕前だな。名前は?』
「リーフ……」
偉そうな犬だなと思いつつも答える。
犬がしゃべっているという不思議な現象には、あえて触れない。
リーフには、一つの疑惑が持ち上がっていた。
それはアージェが最初から犬が普通の犬ではない事を知っていて、連れ出す様に言ったのかもしれないって事だ。その場合、依頼だったかどうかも怪しい。
余計な事に首を突っ込んで、村に帰れなくなっても嫌だった。なので何も気づかなかったフリをして引き渡そう。そう思っていた。
『俺はヘリム。助かった。ありがとう』
「うん。よかった」
リーフは頷くも、どうしてあんなところに居たのかと、聞かれたらどう答えようか考えていた。
アージェが探していたと言ったら逃げ出すかもしれない。
だがヘリムが次に発した言葉は、意外な台詞だ。
『悪いけど、ついでにこのリボンをほどいてくれないか?』
「リ、リボン?」
見れば白いリボンが結んであった。
そう言えば、リボンの事も言っていた。リボンは、ふわっふわの毛に隠れていた。
毛をかき分けると、結び目が現れた。普通に蝶結びの様だ。
ヘリムに頼まれたが、外していいものなのか? もしかしたら何かこのリボンにカラクリがあって、外した途端、ヘリムが逃げ出すかもしれない。知らないフリをして返したいし、余計な事をしない方がよいのではと悩む。
『苦しいし、そこがかゆいから掻きたい! 一度、外してくれないか?』
うるうるした瞳でヘルムはリーフを見つめる。
「わかったけど、逃げないでね。後、リボンはまた縛るからね」
『わかった。頼む』
もし逃げ出したら、手荒になるけど魔術で何とかしようと、お願いを聞く事にした。
ヘリムは、リーフの返事に嬉しそうに頷く。
リーフは、リボンの端を持ち引っ張った。スルスルとリボンはほどける――。
っと、突然ヘリムの姿が歪む! 次の瞬間、ヘリムは男性の姿になった!
銀色の髪にエメラルドグリーンの瞳。二十代半ばぐらいの歳に見え、長めの爪を除けば、人間そのものだ!
「! に、人間だったのぉ!!」
「ほぼ正解!」
驚くリーフに、ヘリムはニッコリと答えた。
その塀には他の建物同様に蔦がビッシリだった。
リーフは、ボシェロ家が見える森の木の上から様子を伺っていた。そして作戦を実行するタイミングを待つ。
見張り役の魔術師だと思われる人物が、敷地内であくびをしている。
「暇そうだな。どうせなら仕事代わってほしいよ……」
ボソッと、リーフはそう零した。
その眠そうな見張り役が、ハッとして駆けて行く。
始まったっと、リーフは人がいないのを確認すると、一直線に建物に近づく。正面玄関の方が騒がしい。アージェが作戦通り、騒いでいるようだった。
リーフは、窓を一つずつそっと覗き込む。だがどの部屋にもいない。そして最後の部屋を確認している時だった。
『いつまで閉じ込めておく気なんだ。おーい、誰かー! って聞こえないか。あぁ暇だ……』
「え? 何今の?」
声が聞こえた時は見つかったかとヒヤリとしたが、リーフに向けての台詞でない事から辺りを見渡した。勿論人影はない。
ふと、はなれが目に留まった。よく見ると、結界が張ってあるように見える。
リーフはもしかしてと思い近づいた。
窓を覗き込むと、白くてふわっふわの犬が、大きなあくびをしているところだった!
「いた!」
つい叫んだ声に、犬はリーフに振り向く。
『子供か……』
「子供って……え? 犬がしゃべった!」
リーフは驚きの声を上げ、慌てて辺りを見渡す。誰にも気づかれた様子はない。安堵どして、犬に目線を戻すと、窓の前まで来ていた。
『君は、俺の声が聞こえるのか?』
「みたいです……」
リーフが犬の質問に小声で答えると、何故か犬の方が驚いて見せる。
驚いているのはこっちだと、リーフは思った。さっきの台詞もこの犬みたいだ。
『ここから出してくれないか? せっかく逃げ出したのに捕まって……。いや、この話はいい。兎に角出してほしい!』
「わかった」
リーフは頷く。元々この犬を連れ出すつもりでここに来たのだから頼まれずとも出すつもりだ。
リーフが右手を伸ばすと、結界と一緒に窓にぽっかりと穴が空いた。
「ねえ、この穴を飛び越えて、僕の方に来れる?」
『あぁ。よっと!』
ぴょーんと犬はジャンプして、器用に穴をくぐり抜け、リーフの胸の中に飛び込んだ! その犬をリーフは、左手でキャッチする。
リーフが結界から手を離すと、ゆっくりと穴は縮まって行く。
「結界は壊さなかったから暫くは気づかれないと思うけど。取りあえず、森へ行こうか」
『そうだな。見つかる前に離れよう』
リーフの提案に犬が頷き、リーフが犬を抱いて森に飛び立つ。
先ほど、豪邸を覗いていた場所まで来て、一応犬を地面に降ろす。逃げる様子はなさそうだからだ。
『なかなかの腕前だな。名前は?』
「リーフ……」
偉そうな犬だなと思いつつも答える。
犬がしゃべっているという不思議な現象には、あえて触れない。
リーフには、一つの疑惑が持ち上がっていた。
それはアージェが最初から犬が普通の犬ではない事を知っていて、連れ出す様に言ったのかもしれないって事だ。その場合、依頼だったかどうかも怪しい。
余計な事に首を突っ込んで、村に帰れなくなっても嫌だった。なので何も気づかなかったフリをして引き渡そう。そう思っていた。
『俺はヘリム。助かった。ありがとう』
「うん。よかった」
リーフは頷くも、どうしてあんなところに居たのかと、聞かれたらどう答えようか考えていた。
アージェが探していたと言ったら逃げ出すかもしれない。
だがヘリムが次に発した言葉は、意外な台詞だ。
『悪いけど、ついでにこのリボンをほどいてくれないか?』
「リ、リボン?」
見れば白いリボンが結んであった。
そう言えば、リボンの事も言っていた。リボンは、ふわっふわの毛に隠れていた。
毛をかき分けると、結び目が現れた。普通に蝶結びの様だ。
ヘリムに頼まれたが、外していいものなのか? もしかしたら何かこのリボンにカラクリがあって、外した途端、ヘリムが逃げ出すかもしれない。知らないフリをして返したいし、余計な事をしない方がよいのではと悩む。
『苦しいし、そこがかゆいから掻きたい! 一度、外してくれないか?』
うるうるした瞳でヘルムはリーフを見つめる。
「わかったけど、逃げないでね。後、リボンはまた縛るからね」
『わかった。頼む』
もし逃げ出したら、手荒になるけど魔術で何とかしようと、お願いを聞く事にした。
ヘリムは、リーフの返事に嬉しそうに頷く。
リーフは、リボンの端を持ち引っ張った。スルスルとリボンはほどける――。
っと、突然ヘリムの姿が歪む! 次の瞬間、ヘリムは男性の姿になった!
銀色の髪にエメラルドグリーンの瞳。二十代半ばぐらいの歳に見え、長めの爪を除けば、人間そのものだ!
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