お二人様のモフみみ錬金術師

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
109 / 116

第108話~生命《マナ》の力

しおりを挟む
 88日の光の刻にINすると、ユージさんはいつも通り臼でごりごりと魔石を粉にしていました。
 目覚めの刻だとまだいない事も考えられたので、光の刻にしたのです。
 テントをたたみ、担当の人に話しかける。

 「おはようございます。クリスタルがあると思う迷宮を発見したのですが」

 「もうですか!?」

 「はい。場所はここです」

 受付のお兄さんからもらった地図で、場所をユージさんは教える。

 「この地図、お借りしても宜しいですか?」

 「はい。どうぞ」

 「いやあ。本当に助かりました!」

 「あの一つだけ。そこ凄い湯気が充満していて、そのまま入るのは無理かと思います」

 「なるほど。何か対策を立て向かいます。ありがとうございました」

 頭を下げられたので私達も下げた。
 そして、トボトボと歩き出す。

 「さてどうしようか? どうせだからこの奥に行ってみる?」

 「うーん。私はチックに会いたいな」

 「そうだね。会いに行こうか」

 「うん」

 私達はチックがいる森へワープしました。
 着いて唖然としてしまう。
 デーンと私と同じぐらいの大きさのブルーに白が混じった色の鳥が目の前に!!
 これってチックでしょうか?
 えーと、6日程でこの成長ですか!?
 前は確か10日ほどで、普通の鳥の大人サイズに成長したんだよね?
 え? チックってどれくらい大きくなる鳥なの?
 ミミズってそんなに栄養があるものなのかな?

 「どうした二人共惚けて」

 「……え? あ……チックですよね?」

 「そうだ。大きくなっただろう」

 ユージさんも同じく驚いて惚けていたようです。
 大きくなり過ぎじゃないかな? エサ足りなくなってない?

 「凄いね……。想像以上だよ」

 ユージさんが呟いた。

 「あの、触っても大丈夫かな?」

 「もちろんだ」

 ヒムネさんは人の姿でチックを撫でてみせる。
 私もそっと反対側からチックを撫でてみた。
 触り心地はとてもいい。つやつやしていて、ずっと触っていたい。

 『オトモダチ……』

 うん? 今のチック?

 「え? しゃべった!?」

 「言葉まで覚えるなんて!」

 「ワシが教えた。どうだ凄いだろう?」

 私達は頷いた。本当に凄い。

 『オトモダチ……』

 「うん。お友達」

 私は、そう返しながらまた撫でた。

 『ほしい……』

 「うん。ほしい。……うん? え? ほしいの!?」

 『サミシイ……』

 私とユージさんは、顔を見合わせる。
 この呪われた森に来てくれる人などいないだろうから……。

 「お友達かぁ。うーん。探してみるね」

 ユージさんがそう言うと、嬉しそうに羽を広げました! 大きいです!

 「ねえ、ところでヒムネさん。所々の木だけ凄く回復が早いんだけど……。どうしてかわかりますか?」

 ユージさんが指差す方を見ると、枯れた木々の中に枯れていない木があります! 今まではなかったので、あの木だけこの数日間で戻った事になる!

 「うーん。原因はわからないが、チックが止まり木にしている木だな。お気に入りの木が、数本あるのだ」

 へえ。じゃ、チックに不思議な力があるのかな?

 「ちょっと見て来ていいですか?」

 「別にかまわんが」

 ユージさんが言うと、頷いてヒムネさんが答えた。
 私達は、普通の木に戻っている木の側に行く。
 ユージさんは、屈んで土を触る。

 「うーん。ここだけ土質がいいみたい」

 「え? なんで? 魔力が少ないから?」

 「うーん。さあ、どうだ……」

 ドサ!

 すぐわきに何かが落ちてきました。見上げると木の枝にチックが止まっています。

 「ビックリした。チックのふんか……」

 「うん……」

 「そっか! それだ!」

 「え? 何?」

 「ふんだよ! 栄養があるから木が育ったんだ! つまり復活した! ちょっとミミズを見てみる!」

 「え? 何でミミズ!?」

 走り出したユージさんを追いかけて、ついミミズを見てしまいました!!

 「きゃー!! 何これ!?」

 ミミズは通常の大きさの何倍も大きいのです!

 「やっぱり!」

 「やっぱりって?」

 「何かわかったのか?」

 ユージさんは、頷いた。

 「この生命の木のところの魔法陣は、生命マナを放出している。それで木は成長していくんだけど、この恩恵はチックとミミズにもあったんだ。チックは、そのミミズを食べて、微かに生命が宿るふんを木の脇にするからそこだけ育った!」

 なるほど! それなら納得です!
 生命の力って凄い! チックの育ち方が半端ないもんね!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。 王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...