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第91話~ヒムネが棲む呪いの森

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 私達は今、大空を飛んでいます!
 と言っても、鳥にガシッと掴まれてですが……。しかも、下は湖? 沼?
 あのトンネルを掘った時に見た場所だと思います。

 何故、こんな所を飛んでいるかと言うと、桜を見終わった私達は、部屋に戻りそのままログアウトしました。
 そして、68日の光の刻に私はINしたのですが――。


 ☆   ☆   ☆


 ごりごりごり。
 INして、居間に行くといつも通りユージさんが、臼を引いています。

 「あ、来た。悪いけど、直ぐに出かけられる?」

 「うん? どうしたの?」

 「ロウさんから呼び出し。お願いしたい事があるみたい」

 「うん。OKだよ」

 私は頷いた。
 ロウさんからの呼び出しと聞いて、一瞬ドキッとしちゃった。お願いごとってなんだろう?
 そう思いロウさんの元へ訪れたのです。

 「すまない二人共」

 「いえ……」

 桜が散り、すっかり普通の止まり木に戻った枝に、ふくろうの姿のロウさんが私達にいいました。
 私達も、いつも通り枝の上に降ろされています。

 「少し頼まれて欲しい事があってな。実は、この前のセイレイオウの件を聞いた森番の者が、是非ともやって頂きたい事があると連絡をよこしたのだ」

 「やってほしい事とは?」

 ユージさんの問いに、ロウさんはうむっと頷く。

 「……魔法陣の解除らしい」

 「え? 解除?」

 「それには、錬金術師の力が必要らしい。頼めないか?」

 「えっと。そう言われても……」

 ユージさんは、困って私を見た。
 こっちを見られても困る。どういう事をするか知らないけど、今までした事がない事は確かです。
 まずは、本を確認しないと何とも言えない。

 「出来るかどうかは、わかりません。やった事がない作業です」

 私を見たユージさんは、ロウさんに振り向き、正直に答えました。

 「そうか。では、行ってみて出来るかどうか判断してほしい」

 「え?!」

 私は、驚いて声をあげてしまった。
 まずは、本で確認をしたいから詳しく教えて欲しいんだけど!

 「あの、まずは内容を……」

 「そこまでは、聞いていない」

 「では、伺って頂いてそれから……」

 「時間がないらしい。まずは行ってほしい。足は手配してある」

 「足って……」

 驚いて呟くユージさん。私も驚いています。
 これ、私達は強制的に行かされるって事ですよね?

 「キュイー!」

 「え!? ちょっと待って下さい! って、わぁ!」

 「きゃぁ!」

 「ヒムネと言う者が待っている。では、宜しく頼むな」

 宜しく頼むな。じゃないです!
 出来ないかもしれないのに~!
 私達は、それぞれの鳥に掴まれ、大空に舞いました!
 そして、奥へ飛んでいきます。

 『ソレイユさん。大丈夫?』

 『うん。大丈夫だけど……。一体どこまで行くんだろうね?』

 『そうだね……』

 私達が、足を踏み入れた事がない場所へ行くようです。
 そのうちキラキラと光る水面が見え、その上を飛ぶ事に!
 死んでも本当に死ぬわけじゃないとわかっていても、何か怖いです。

 でも、見渡せば雄大な景色です。
 掴まれてではなく、ちゃんと? 空を飛んでこういう景色を見たいですね。

 飛び続け湖? を渡り着いた先は、何とも恐ろしい感じの森でした!
 枯れた木しかなく、地面も何故かどくどくしい。
 魔女でも住んでそうな、呪われた森という感じのど真ん中に降ろされました!!

 そこには、一本だけ他と違う少し青っぽい木があり、鳥が一羽止まっています。
 黒い大きなくちばしで、可愛いクリッとした丸い目の周りはほんのり青く、顔と胸らへんが白っぽく、全体が黒い鳥。

 「ヒムネさんですか?」

 ヒムネさんは、ユージさんの問いにこくんと頷いた。

 「よかった! お願いがある。呪いの魔法陣が展開してしまった。それを解除してほしい」

 「その事なんですが……僕達……」

 「時間がないのだ。私は、ここから動く事ができない。魔法陣の魔力を吸い取って魔法陣を解除してほしい」

 「出来ないかもしれないのですが……」

 「もう君達に頼むしかないのだ!」

 困り顔でユージさんが、私を見た。

 「受けてもいいかな?」

 「うん」

 私は静かに頷いた。
 取りあえず、どういう事か詳しく聞いてみましょう。
 きっと本に、解決法があるに違いない。それを私が出来るか別としてだけどね。

 「わかりました。詳しく教えてください」

 「ありがとう! 助かった!」

 ユージさんがそう言うと、心底助かったという感じでヒムネさんは言ったのでした。
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