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第79話~あれが私達の希望です!
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今日も迷宮でカカヲ鉱石の発掘です。
我ながらよく飽きないなぁと思いますが、ころころと採れるので楽しいのです。たぶん、この軍手がなかったら一日目で飽きていたでしょう。
そして気が付けば、闇の刻。
部屋に戻ってカカヲ鉱石と他の鉱石と分けます。
「ねえ、ユージさん。カウンターに何回も運ぶの大変じゃない?」
「まあ、そうだけど。この世界は何故か車輪がついた物ってないんだよね」
「え? ないの?」
ユージさんは頷く。
じゃ荷車的な物は作れない!?
確かに見かけた事ないかも。
「疲れないし、僕はこのままでもいいよ」
「うん」
『ユージ、ソレイユよ。今すぐに森にきなさい!』
突然また声が聞こえ、私達は顔を見合わせた。
あの問題は、解決したよね? 声のトーンは、前回と変わらない様に聞こえました。つまりお怒り?
兎に角私達は、モーグの森に向かいました。
☆ ☆ ☆
森に入るとがしっと掴まれて、また木の上に招待されました。
真っ暗で怖いんですけど!
『君は私に嘘をついたね?』
人の姿になって、ユージさんの前に浮くロウさんが静かに言いました。
『ここに人が集まったのは、迷宮があると嘘を言ったからと書状にあったそうだ。相違ないか?』
そうだった! そういう事になっているんだったって、それ書状に書いてあったんだ……。
「申し訳ありません。騒ぎの発端は確かに僕です。この森を抜けた先に迷宮があるのは本当なんです。けどそれで人が集まってしまって、だから嘘だと言って事を納めたんです」
『なるほど。まだちらほらと人は来るが、元に戻ったのは確かだ。信じよう。だが、私も番人として危うくなった! 君達の加護は、解除しようと思う』
「え……待ってください。悪いのは僕です! 僕だけ……」
『それはならん。一人が奥に進めれば、いくらでも合流する方法はあるだろう?』
「そんな! 確かに不注意でそうなったけど、ユージさんは身を張って噂を嘘だと流したんです! もうこんな事はないようにしますから許して下さい!」
『……では、今一度、私が素晴らしいと思う錬金術師である事を示せ』
それってチャンスをくれるって事?
「ありがとうございます!」
『期限は明日中だ! 出来なければ、明日を持って加護を解く。よいな』
明日って! 期間短すぎ!
ユージさんは、はいともいいえとも何も言わず黙っている。
っと、がしっと背中を掴まられて、森の外へ連れて行かれた。
「えっと。ユージさん大丈夫?」
「ごめんね。せっかく手に入れた加護なのに……」
「大丈夫よ。あ、ほら、ワープマーカーをあの畑に毎回設置すれば……」
ユージさんは、首を横に振った。
「たぶん、すぐにばれるよ。言っていただろう? いくらでも方法はあるだろうって。向こうもわかってるって事。それに僕達が加護を持たない者だってわかったら皆の態度は変わると思う。ここの島の設定は、錬金術師が偉い者でもケモミミ族は、嫌われているからね」
だったらどうするのよ。
――私が素晴らしいと思う錬金術師である事を示せ
そうよ! 私がユージさんを助けるのよ! 素晴らしい錬金術師だと示すわ!
「ユージさん。私頑張る!」
「え?!」
「私、示して見せるから! 素晴らしい錬金術師だって! だから元気出して!」
「ソレイユさん! なんてけなげなんだ!」
むぎゅーっと抱きしめられてしまった!!
これ街中でなくてよかった。今日は、私がユージさんの頭を撫でてあげました。
☆ ☆ ☆
結局何も案が浮かばないまま、27日の朝を迎えてしまった。
ベットに横になりずっと本で色々探したけど、いいのがない。
そもそもどんな事が、ロウさんにとって素晴らしいのかがわからない!
「畑に行こうか」
「うん」
カカヲの実を収穫に私達は向かいました。
昨日発掘したカカヲ鉱石は、部屋に置いてきました。
カカヲが実っています!
カカヲを植えたのだから当たり前なのですが、まるでチョコレートがぶら下がっているようです。
それぞれ植えた3つとも2個ずつなっています。
それをユージさんは収穫して、ルーペで覗き込む。
今回のイベント用のルーペは、カカヲの実のレベルもわかる様になっています。
「トマトととうきびを掛け合わせたのが、レベル2になっている。違う種類の物同士をを掛け合わせないと、レベルは上がらないみたいだね。違うので、レベル2を作ってレベル3にして……はぁ」
そこまで言ってユージさんは、畑をジッと見つめました。
「畑があってもここに通えない。魔法陣を使って食物が育つ畑にしたっていうのに……あ!」
ユージさんが、ぐるんと私に振り向いた。その顔は嬉しそうです。何か思いついたのかも!
「みみず! ふくろうのエサってみみずもだよね?」
「え!?」
確かにそうだけど。そんなんで喜ぶのかな? って、これ持って行く気?
「あの……。ミミズをどうやって持って行く気かな?」
「持って行かないよ! ソレイユさんがこれと同じ魔法陣でミミズがいる畑をつくるんだよ!」
「え? でもこの魔法陣、畑をよい畑にするものなんだけど? あの岩だらけのところに畑なんてないでしょう?」
「なければ作ればいい! 知ってた? クワでおこした場所は、畑になるんだよ! 農夫のスキルの一つ!」
でも流石に、岩肌の地面をクワでは無理なのでは……。
そうだ!
私は本をめくった。ありましたとも! 岩をも砕くクワを作る魔法陣が!
これならいけるかも! 希望が見えてきました!
我ながらよく飽きないなぁと思いますが、ころころと採れるので楽しいのです。たぶん、この軍手がなかったら一日目で飽きていたでしょう。
そして気が付けば、闇の刻。
部屋に戻ってカカヲ鉱石と他の鉱石と分けます。
「ねえ、ユージさん。カウンターに何回も運ぶの大変じゃない?」
「まあ、そうだけど。この世界は何故か車輪がついた物ってないんだよね」
「え? ないの?」
ユージさんは頷く。
じゃ荷車的な物は作れない!?
確かに見かけた事ないかも。
「疲れないし、僕はこのままでもいいよ」
「うん」
『ユージ、ソレイユよ。今すぐに森にきなさい!』
突然また声が聞こえ、私達は顔を見合わせた。
あの問題は、解決したよね? 声のトーンは、前回と変わらない様に聞こえました。つまりお怒り?
兎に角私達は、モーグの森に向かいました。
☆ ☆ ☆
森に入るとがしっと掴まれて、また木の上に招待されました。
真っ暗で怖いんですけど!
『君は私に嘘をついたね?』
人の姿になって、ユージさんの前に浮くロウさんが静かに言いました。
『ここに人が集まったのは、迷宮があると嘘を言ったからと書状にあったそうだ。相違ないか?』
そうだった! そういう事になっているんだったって、それ書状に書いてあったんだ……。
「申し訳ありません。騒ぎの発端は確かに僕です。この森を抜けた先に迷宮があるのは本当なんです。けどそれで人が集まってしまって、だから嘘だと言って事を納めたんです」
『なるほど。まだちらほらと人は来るが、元に戻ったのは確かだ。信じよう。だが、私も番人として危うくなった! 君達の加護は、解除しようと思う』
「え……待ってください。悪いのは僕です! 僕だけ……」
『それはならん。一人が奥に進めれば、いくらでも合流する方法はあるだろう?』
「そんな! 確かに不注意でそうなったけど、ユージさんは身を張って噂を嘘だと流したんです! もうこんな事はないようにしますから許して下さい!」
『……では、今一度、私が素晴らしいと思う錬金術師である事を示せ』
それってチャンスをくれるって事?
「ありがとうございます!」
『期限は明日中だ! 出来なければ、明日を持って加護を解く。よいな』
明日って! 期間短すぎ!
ユージさんは、はいともいいえとも何も言わず黙っている。
っと、がしっと背中を掴まられて、森の外へ連れて行かれた。
「えっと。ユージさん大丈夫?」
「ごめんね。せっかく手に入れた加護なのに……」
「大丈夫よ。あ、ほら、ワープマーカーをあの畑に毎回設置すれば……」
ユージさんは、首を横に振った。
「たぶん、すぐにばれるよ。言っていただろう? いくらでも方法はあるだろうって。向こうもわかってるって事。それに僕達が加護を持たない者だってわかったら皆の態度は変わると思う。ここの島の設定は、錬金術師が偉い者でもケモミミ族は、嫌われているからね」
だったらどうするのよ。
――私が素晴らしいと思う錬金術師である事を示せ
そうよ! 私がユージさんを助けるのよ! 素晴らしい錬金術師だと示すわ!
「ユージさん。私頑張る!」
「え?!」
「私、示して見せるから! 素晴らしい錬金術師だって! だから元気出して!」
「ソレイユさん! なんてけなげなんだ!」
むぎゅーっと抱きしめられてしまった!!
これ街中でなくてよかった。今日は、私がユージさんの頭を撫でてあげました。
☆ ☆ ☆
結局何も案が浮かばないまま、27日の朝を迎えてしまった。
ベットに横になりずっと本で色々探したけど、いいのがない。
そもそもどんな事が、ロウさんにとって素晴らしいのかがわからない!
「畑に行こうか」
「うん」
カカヲの実を収穫に私達は向かいました。
昨日発掘したカカヲ鉱石は、部屋に置いてきました。
カカヲが実っています!
カカヲを植えたのだから当たり前なのですが、まるでチョコレートがぶら下がっているようです。
それぞれ植えた3つとも2個ずつなっています。
それをユージさんは収穫して、ルーペで覗き込む。
今回のイベント用のルーペは、カカヲの実のレベルもわかる様になっています。
「トマトととうきびを掛け合わせたのが、レベル2になっている。違う種類の物同士をを掛け合わせないと、レベルは上がらないみたいだね。違うので、レベル2を作ってレベル3にして……はぁ」
そこまで言ってユージさんは、畑をジッと見つめました。
「畑があってもここに通えない。魔法陣を使って食物が育つ畑にしたっていうのに……あ!」
ユージさんが、ぐるんと私に振り向いた。その顔は嬉しそうです。何か思いついたのかも!
「みみず! ふくろうのエサってみみずもだよね?」
「え!?」
確かにそうだけど。そんなんで喜ぶのかな? って、これ持って行く気?
「あの……。ミミズをどうやって持って行く気かな?」
「持って行かないよ! ソレイユさんがこれと同じ魔法陣でミミズがいる畑をつくるんだよ!」
「え? でもこの魔法陣、畑をよい畑にするものなんだけど? あの岩だらけのところに畑なんてないでしょう?」
「なければ作ればいい! 知ってた? クワでおこした場所は、畑になるんだよ! 農夫のスキルの一つ!」
でも流石に、岩肌の地面をクワでは無理なのでは……。
そうだ!
私は本をめくった。ありましたとも! 岩をも砕くクワを作る魔法陣が!
これならいけるかも! 希望が見えてきました!
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