お二人様のモフみみ錬金術師

すみ 小桜(sumitan)

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第19話~初めて作った物はお揃いの……

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 私はぐったりしているユージさんの横で本を読んでいた。魔法陣を描くのが楽しかったので、面白い物がないか見ていたのです。

 そこに面白い物を発見する。魔法陣『窯』です!
 この魔法陣は、焼いてアイテムを作るらしい。粘土をこね形を整えたら、魔法陣の中に置くと三秒後に発動。五分後に出来上がり!

 つまり食器とか作る窯って事ですよね?
 やってみたい!

 粘土の代用も書いてある。


 土に魔石を砂状にして混ぜ、魔法陣『粘土』の中心に置く。この時に真ん中に窪みを作り、水を灌ぐ。魔法陣は、置いてから五秒後に発動する。
 また、水に魔石を少し溶かし(ほのかに光輝く)土にかけ練る方法もある。
 この水は、一口飲めばMPが10回復する。水筒に入れた場合は十分ほどで効果は消える――


 これは、やらない手はないでしょう!
 まずは粘土作りからしますか。

 私は採取の時に砕くのに使っていた布を出した。それに小さな魔石の欠片を乗せる。

 「今度は何をする気?」

 突然魔石を布に包んだので驚いたようです。
 握ってみるけど砕けなかった……。

 硬いわ、これ。

 「うーん。魔石を粉にしようと思って。これも魔具なんだけど、砕けなかったわ」

 「す、凄すぎ! 本当におじいちゃんって錬金術師なんだね……。って、そんな布で粉に出来るものなんだ」

 私は頷いた。

 さて、これで砕けないとなると水に魔石を入れてって事だけど、水の効果は十分のようだから魔法陣を先に用意した方がよさそうね。
 私は、鉱石を手に取った。

 「君、発掘する気あるの?」

 魔法陣を描くとわかったのか、ユージさんは少し呆れ顔で聞いて来た。

 「あるある!」

 私は円を描きながら答えた。
 本当に発掘をする気はある。ただ、先にこっちを試したい気持ちの方が大きいだけ。
 本と見比べながら模様を描く。これも十数回描いてやっと完成。
 今度は魔石に変えて、それをなぞる。

 ユージさんが、クスクスと笑う声が聞こえ振り向くと、膝を抱えこちらを見ていた。

 「見た目が10歳だから、微笑ましい光景だよ」

 私は顔が熱くなるのを感じた。
 つまりお絵かきをして夢中で遊んでいる様に見えているという事ですよね!

 「これは遊んでる訳じゃなくて、魔法陣を描いているんです!」

 「うん。わかってる」

 ジッとこっちを見ている視線を感じる。見られていると思うと何か恥ずかしい。

 魔法陣を描き終わった。土をかき集め、水筒の中に魔石の欠片を入れる。本に書いてあった通りにほんのり光を帯びる。
 それを土にかけ練った。

 まあ、こんなもんかな? きっと混ざっていればいいんだよね?

 私は土をすくうと、魔法陣の上に置いた。少し間を置いて、魔法陣が碧く輝き、それは上に駆け上がり消えた。そこには、土だけが残っていた。見た目何も変わっていない。

 「それ何?」

 ユージさんも興味があるらしく、土を覗き込む。

 「粘土になっているハズなんだけど……」

 と、その時辺りが真っ暗になった!

 「きゃぁ!」

 「あ、鉱石の効果が切れたんだね」

 その台詞と一緒にユージさんは鉱石に魔力を注いで明かりを灯した。

 「君のも点けてあげるよ」

 「ありがとう」

 ユージさんは、私の鉱石に明かりを灯してくれた。

 さて、何を作ろうかな?
 うーん。そうだ! コップにしましょう! 水筒の水を飲めるように!
 口を付けて飲んでもいいけど作業にも使うし、コップがあればユージさんとも分け合える。

 私は、取っ手の付いたコップ、一応マグカップを二つ作った。

 「マグカップ? どうするのそれ?」

 マグカップだとわかってくれたみたいね。

 「窯っていう魔法陣があって、粘土を焼くと食器が出来るみたい!」

 「えぇ!! 魔法陣ってリフレッシュとかそういうたぐいのモノしかないと思っていたけど、そういうのもあるんだ……。さすがと言うか……。楽しみだね」

 私は頷いた。

 私は鉱石でまた魔法陣を描く。窯の魔法陣を二つ。一つずつしか焼けないようなので二つ用意する必要があるからです。
 下書きが完了し、魔石でなぞって行く。

 「よし、後はマグカップを乗せるだけね」

 「それって中央に乗せるの? 僕もやってみていい?」

 私は頷いた。
 多分誰が入れても発動はすると思う。それを確認する為にもやって頂きましょう。

 「三秒後に発動するから」

 ユージさんは頷いた。
 そして私達は、マグカップを魔法陣に乗せた。
 二つとも三秒後に無事発動し、赤く輝く。

 「光消えないね」

 不安げにユージさんは言う。

 「これ、五分かかるんだって!」

 「え! そうなの? へぇ」

 二人でただ五分間その赤い光を見つめていた。

 そして五分後、光と魔法陣は消滅し、二つのマグカップが無事に出来上がった!

 色は白っぽい。何の変哲もないただのマグカップ。

 「軽いね!」

 「うん。ここにある土から出来たとは思えない程軽いわ!」

 私達は、それぞれマグカップを手に取りそう言うと、中を覗いたり裏返したりして観察した。

 「そうだ! 早速使ってみましょう!」

 私は、小さな魔石の欠片を水筒に入れた。先ほどのは効果は切れている。またほのかに光り輝く。
 ほんの少し、マグカップにそれを注いだ。

 「今、魔石入れなかった?」

 不安げにマグカップを凝視しつつ、ユージさんは言う。

 「大丈夫。こうするとMP回復の水にもなるって書いてあったから。どうせだから試してみましょう!」

 「そ、そうなんだ。じゃ、飲んでみる?」

 ユージさんは、まだ不安げに言って、私と目が合うと頷いた。私も頷き水を一口飲んだ。

 「げっほ。げっほ。ちょ……これ無理!」

 ユージさんは、せき込みながら言った。
 私もせき込みながら同感だと頷く。
 味は水。だけど飲むとアルコール度数が強いお酒を飲んだみたいに、喉が熱かった!
 きっと魔石の量が多かったんだと思う。
 MPは回復しているので、効能は問題ないみたいです。
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