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第18話~はじめての魔法陣
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森の奥深く、蔦が這っている岩に、ぽっかりと穴が空いている。穴も蔦で覆われている為、パッと見ただけでは気づけない。
そこは、クチン迷宮の入り口でした。蔦をかき分けて私達は迷宮の中に入った。
入り口も蔦で塞がれている為、中は真っ暗です。
光る鉱石に魔力を注ぎ込むと光り出し、辺りを照らす。
10消費するのでMPが10しかない私は、一回しか使えない。MPは、HPと違って寝れば回復する。HPは寝ても回復しないので、基本アイテムか魔法で回復するしかないそうです。
私はまだHPが減った事がないので、ユージさんに聞いた話。
私達は奥に進んで行く。左に折れるとずっと先まで道はあった。
曲がった所で私達は歩みを止め座った。
「さっきの話だけど……」
切り出したのはユージさん……。
「君が無事に錬金術師になって、ずっと傍にいたのに知らない話を噂で知るのはちょっと悲しいかなって。僕の我が儘なのかも知れないけど。誰にも言う気はないから。ただ今回は知っていれば、防げたかも知れないんじゃないかなって……勝手に思ってる」
私はその通りと頷いた。
「やっぱり気づいてるのね。おじいちゃんは錬金術師なんだ。ユージさんに錬金術師の話を聞いた後に、おじいちゃんに口止めされて言えなかったの。ごめんなさい」
「やっぱり! それならバシリーさんが怒って当然だね」
「……うん。おじいちゃん、家から出て行ったみたいなの。今日INしたらいなくなっていた」
「え!? ごめん……」
ユージさんは、驚いた顔をして謝った。私は首を横に振る。
「さっきも話したけど、君の探求者になるイベントだったんだと思う。僕だけの名前を告げていれば、おじいちゃんは今も家に居たはずなんだ……」
私はまた首を横に振った。
もしイベントだとしたらそれはありえない。だって、私があの新しい洞窟を見つける事になっていたのは必然で、発見者は私になるはず。だからおじいちゃんが旅立つのは決まっていた事。ユージさんのせいじゃない。
「私のイベントなら発見者は必ず私になるよね? だからおじいちゃんがいなくなるのは、決まっていたと思う」
「あ、そっか。……もしかしたら、最初から君が選ばれていたのかもね」
「選ばれていたって?」
「錬金術師の候補。きっと孫になったプレイヤーがなれるようになっていたって事。だって、イベントが凄すぎる! 個人的なイベントじゃなくなっているからね」
確かにそうだわ! 皆が同じようなイベントだったらユージさんもあそこまで驚かなかったわよね?
「でももし、私がなりたいと思わなかったらどうなったのかしら?」
「だから候補なんだよ。もしかしたら、他に候補者がいるかもしれないから頑張らないとね!」
えぇ!? 一応約束してもらってるんだけど……。
まあでも、慢心はいけないわよね? それに錬金術師になるのがゴールではないわ! 魔具を作って楽しむのよ!
私が、初の錬金術師のプレイヤーになるわ!
「私頑張る! おじいちゃんにもそう約束したしね」
「うん。頑張ろう!」
私達はニッコリと頷きあった。
「じゃ、発掘して探求心を取得しないとね。この前は多分同じ物ばかりだったと思うから違う鉱石を数種類発見しないとダメだと思う。迷宮も違うし取得出来ると思うよ」
「うん。掘るのは楽しいから苦にならない。大丈夫!」
私は頷き、リュックから軍手を取り出して言った。
ユージさんは苦笑いをする。
「君はポジティブと言うか、楽しんでるよね。どんな時でも……」
「え?! だってその為にこの世界にいるんだし」
私はにっこりほほ笑んで答えた。
苦労して得た方が、嬉しさ倍増かもしれないけど、苦痛になるのは嫌。苦労しても楽しまなくちゃね!
私は前回同様に壁に穴を掘って行く。前の所より粘土質のような気がする。しっとりしている。
がりっと鉱石の感触があって手に乗せてみる。土を払うと黒テカリしいる。何となく石炭っぽい。前の所の倍ぐらいの大きさです。
「違う鉱石みたいだね」
私は頷いて、鉱石を布袋に入れた。
そしてまた、掘り始める。前より大きさは大きいけど、量は少ない。胸辺りまで掘ってみたけど、十個ぐらいしか出て来てない。
そう言えば前回、尻尾を触られたんだっけ? 今回は大丈夫だよね? ……あ!
「あ~! そう言えば、尻尾と耳触らせてもらってないわ!」
私が突然叫びユージさんに振り向くと、彼はビックリしてこちらを見ていた。
「触らせて!」
「え! 今?」
私は頷く。
「えっと。ほら手が……」
そう言われて手を見ると軍手は真っ黒です。
前回もこれで後になって忘れていたんだわ。……って、私手を洗う物を用意していないじゃない!
あ、そうだわ! 魔法陣――リフレッシュ! 軍手ごと綺麗になるか試してみましょう!
そう思いつき私は、リュックから本を取り出した。
ユージさんは、私のいきなりの行動に不思議そうにしている。
「どうしたの急に?」
「おじいちゃんから貰った本なんだけど。リフレッシュの魔法陣が書いてあったから試してみようと思って」
「え? 魔法陣? 凄いね。って、今?」
私は本に目を落としたまま頷いた。
魔法陣の描き方――
まずは魔石を使って円の中にある模様から描く。模様は円の中心から書き始める事。
円の大きさは、人が一人立てる分あれば十分である。
円が上手く描けない場合は、一番最初に何かで円を描き、その上をなぞるとよい。
万が一途中で失敗した時は、魔石を砕いた物をその上に振りまき混ぜる事。必ず魔石の粉は回収しておく事。
また、描き終わった後に失敗したとわかった時は、魔石を投げ込み発動させるとよい。
できれば、魔法陣を描く前に描けるか練習してから行うとよい。
どうしても、模様を描けない場合は、複写を覚えるとよい。
なるほど。魔石を使って描くのね!
「あのさ。魔法陣って魔法を使って普通描くんだけど。MPとか大丈夫?」
本から顔を上げると、ユージさんが不安げにこちら見ていた。
MP以前に魔法を使う事が心配なのかもしれない。
「大丈夫。使うのは魔法じゃなくて魔石だから。ただ、手書きだからちゃんと描けるかが問題なのよね……」
そこまで複雑ではないけど、何せ初挑戦です。円だけじゃなく、模様も何かで描いてなぞるのがいいかもしれないわね。
布袋が目に入った。
これだわ!
私は布袋から鉱石を一つ取り出した。
それを使って回転しながら、自分を中心に円を描いた。その円から出ると本を見ながら模様を描いて行く。
ユージさんは、それをジッと見守っている。
◇ ◇ ◇
模様を書き直す事十数回。やっと本と同じような模様が描けた!
「よし! これを魔石でなぞりましょう!」
本には、円をって書いてあったけど模様もなぞって描いても大丈夫よね?
私は円の中心から描き、そして円を描いた。
そうすると、魔石で描いた模様と円がフワッと碧く光り出した!
「うわー。きれい!」
「凄い! こんな事が本当に出来るなんて! ねぇ、これって錬金術?」
ユージさんの言葉に魔法陣から顔を上げ彼を見た。
「そうなの?」
「いや、僕が聞いているんだけど……」
「多分誰でも出来る事だと思う。この本の通りに行えばね」
私は、立ち上がりながら言った。
「も、もしかして魔法陣の中に入るの?」
「勿論。その為に描いたんだし……」
「でも……大丈夫?」
魔法陣としては成功しているけど、効果は本当にリフレッシュの効果になっているかはわからないと言いたいのでしょうけど、それは試してみないとわかりません!
「えい!」
気合と共に私は、円の中に立った!
サァッと光が一瞬上に駆け上がった! そして光が消えると魔法陣も消えていた。
体は何ともない。痛くも痒くもない。
私は軍手を見てみた。
綺麗になっている!
スタミナも確認すると60%近かったのが81%です。20%も回復しました!
「大成功!」
「凄いね!」
私はユージさんに手を開いて軍手を見せた。
「じゃ、触らせてね!」
私がにっこりほほ笑むと、ユージさんは一歩下がった。その表情は忘れていたという顔でしたが、私はお構いなしに耳と尻尾を触らせて頂きました!
ユージさんは、何故かぐったりしてしまいましたけどね――。
そこは、クチン迷宮の入り口でした。蔦をかき分けて私達は迷宮の中に入った。
入り口も蔦で塞がれている為、中は真っ暗です。
光る鉱石に魔力を注ぎ込むと光り出し、辺りを照らす。
10消費するのでMPが10しかない私は、一回しか使えない。MPは、HPと違って寝れば回復する。HPは寝ても回復しないので、基本アイテムか魔法で回復するしかないそうです。
私はまだHPが減った事がないので、ユージさんに聞いた話。
私達は奥に進んで行く。左に折れるとずっと先まで道はあった。
曲がった所で私達は歩みを止め座った。
「さっきの話だけど……」
切り出したのはユージさん……。
「君が無事に錬金術師になって、ずっと傍にいたのに知らない話を噂で知るのはちょっと悲しいかなって。僕の我が儘なのかも知れないけど。誰にも言う気はないから。ただ今回は知っていれば、防げたかも知れないんじゃないかなって……勝手に思ってる」
私はその通りと頷いた。
「やっぱり気づいてるのね。おじいちゃんは錬金術師なんだ。ユージさんに錬金術師の話を聞いた後に、おじいちゃんに口止めされて言えなかったの。ごめんなさい」
「やっぱり! それならバシリーさんが怒って当然だね」
「……うん。おじいちゃん、家から出て行ったみたいなの。今日INしたらいなくなっていた」
「え!? ごめん……」
ユージさんは、驚いた顔をして謝った。私は首を横に振る。
「さっきも話したけど、君の探求者になるイベントだったんだと思う。僕だけの名前を告げていれば、おじいちゃんは今も家に居たはずなんだ……」
私はまた首を横に振った。
もしイベントだとしたらそれはありえない。だって、私があの新しい洞窟を見つける事になっていたのは必然で、発見者は私になるはず。だからおじいちゃんが旅立つのは決まっていた事。ユージさんのせいじゃない。
「私のイベントなら発見者は必ず私になるよね? だからおじいちゃんがいなくなるのは、決まっていたと思う」
「あ、そっか。……もしかしたら、最初から君が選ばれていたのかもね」
「選ばれていたって?」
「錬金術師の候補。きっと孫になったプレイヤーがなれるようになっていたって事。だって、イベントが凄すぎる! 個人的なイベントじゃなくなっているからね」
確かにそうだわ! 皆が同じようなイベントだったらユージさんもあそこまで驚かなかったわよね?
「でももし、私がなりたいと思わなかったらどうなったのかしら?」
「だから候補なんだよ。もしかしたら、他に候補者がいるかもしれないから頑張らないとね!」
えぇ!? 一応約束してもらってるんだけど……。
まあでも、慢心はいけないわよね? それに錬金術師になるのがゴールではないわ! 魔具を作って楽しむのよ!
私が、初の錬金術師のプレイヤーになるわ!
「私頑張る! おじいちゃんにもそう約束したしね」
「うん。頑張ろう!」
私達はニッコリと頷きあった。
「じゃ、発掘して探求心を取得しないとね。この前は多分同じ物ばかりだったと思うから違う鉱石を数種類発見しないとダメだと思う。迷宮も違うし取得出来ると思うよ」
「うん。掘るのは楽しいから苦にならない。大丈夫!」
私は頷き、リュックから軍手を取り出して言った。
ユージさんは苦笑いをする。
「君はポジティブと言うか、楽しんでるよね。どんな時でも……」
「え?! だってその為にこの世界にいるんだし」
私はにっこりほほ笑んで答えた。
苦労して得た方が、嬉しさ倍増かもしれないけど、苦痛になるのは嫌。苦労しても楽しまなくちゃね!
私は前回同様に壁に穴を掘って行く。前の所より粘土質のような気がする。しっとりしている。
がりっと鉱石の感触があって手に乗せてみる。土を払うと黒テカリしいる。何となく石炭っぽい。前の所の倍ぐらいの大きさです。
「違う鉱石みたいだね」
私は頷いて、鉱石を布袋に入れた。
そしてまた、掘り始める。前より大きさは大きいけど、量は少ない。胸辺りまで掘ってみたけど、十個ぐらいしか出て来てない。
そう言えば前回、尻尾を触られたんだっけ? 今回は大丈夫だよね? ……あ!
「あ~! そう言えば、尻尾と耳触らせてもらってないわ!」
私が突然叫びユージさんに振り向くと、彼はビックリしてこちらを見ていた。
「触らせて!」
「え! 今?」
私は頷く。
「えっと。ほら手が……」
そう言われて手を見ると軍手は真っ黒です。
前回もこれで後になって忘れていたんだわ。……って、私手を洗う物を用意していないじゃない!
あ、そうだわ! 魔法陣――リフレッシュ! 軍手ごと綺麗になるか試してみましょう!
そう思いつき私は、リュックから本を取り出した。
ユージさんは、私のいきなりの行動に不思議そうにしている。
「どうしたの急に?」
「おじいちゃんから貰った本なんだけど。リフレッシュの魔法陣が書いてあったから試してみようと思って」
「え? 魔法陣? 凄いね。って、今?」
私は本に目を落としたまま頷いた。
魔法陣の描き方――
まずは魔石を使って円の中にある模様から描く。模様は円の中心から書き始める事。
円の大きさは、人が一人立てる分あれば十分である。
円が上手く描けない場合は、一番最初に何かで円を描き、その上をなぞるとよい。
万が一途中で失敗した時は、魔石を砕いた物をその上に振りまき混ぜる事。必ず魔石の粉は回収しておく事。
また、描き終わった後に失敗したとわかった時は、魔石を投げ込み発動させるとよい。
できれば、魔法陣を描く前に描けるか練習してから行うとよい。
どうしても、模様を描けない場合は、複写を覚えるとよい。
なるほど。魔石を使って描くのね!
「あのさ。魔法陣って魔法を使って普通描くんだけど。MPとか大丈夫?」
本から顔を上げると、ユージさんが不安げにこちら見ていた。
MP以前に魔法を使う事が心配なのかもしれない。
「大丈夫。使うのは魔法じゃなくて魔石だから。ただ、手書きだからちゃんと描けるかが問題なのよね……」
そこまで複雑ではないけど、何せ初挑戦です。円だけじゃなく、模様も何かで描いてなぞるのがいいかもしれないわね。
布袋が目に入った。
これだわ!
私は布袋から鉱石を一つ取り出した。
それを使って回転しながら、自分を中心に円を描いた。その円から出ると本を見ながら模様を描いて行く。
ユージさんは、それをジッと見守っている。
◇ ◇ ◇
模様を書き直す事十数回。やっと本と同じような模様が描けた!
「よし! これを魔石でなぞりましょう!」
本には、円をって書いてあったけど模様もなぞって描いても大丈夫よね?
私は円の中心から描き、そして円を描いた。
そうすると、魔石で描いた模様と円がフワッと碧く光り出した!
「うわー。きれい!」
「凄い! こんな事が本当に出来るなんて! ねぇ、これって錬金術?」
ユージさんの言葉に魔法陣から顔を上げ彼を見た。
「そうなの?」
「いや、僕が聞いているんだけど……」
「多分誰でも出来る事だと思う。この本の通りに行えばね」
私は、立ち上がりながら言った。
「も、もしかして魔法陣の中に入るの?」
「勿論。その為に描いたんだし……」
「でも……大丈夫?」
魔法陣としては成功しているけど、効果は本当にリフレッシュの効果になっているかはわからないと言いたいのでしょうけど、それは試してみないとわかりません!
「えい!」
気合と共に私は、円の中に立った!
サァッと光が一瞬上に駆け上がった! そして光が消えると魔法陣も消えていた。
体は何ともない。痛くも痒くもない。
私は軍手を見てみた。
綺麗になっている!
スタミナも確認すると60%近かったのが81%です。20%も回復しました!
「大成功!」
「凄いね!」
私はユージさんに手を開いて軍手を見せた。
「じゃ、触らせてね!」
私がにっこりほほ笑むと、ユージさんは一歩下がった。その表情は忘れていたという顔でしたが、私はお構いなしに耳と尻尾を触らせて頂きました!
ユージさんは、何故かぐったりしてしまいましたけどね――。
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