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第13話~掘るのは色々とご用心

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 草原に面した岩山に大きく空いた穴。ここが、サササ迷宮の入り口です。

 「なんでサササ迷宮って言うのかな?」

 私はふと入り口を見てそう思い、口走る。

 「発見した人の名前が付けられるらしいよ。だからサササさんって人が見つけた事になっているんじゃないかな?」

 なるほど。
 発見者の名前ね。定番の付け方ね。

 「さて、入ろうか。でもDランクあるかな……」

 「ねぇ、一番探されていない所ってないの?」

 私達は話しながら進む。

 「どうだろう? 探してないのは入口の近くぐらいじゃないかな? やっぱり奥の方が取れるから……」

 入り口付近は手つかずって事じゃない!
 私は歩みを止め、リュックを下ろした。

 「どうしたの?」

 「ここら辺を探す! 誰も探してないならあるかもしれないでしょう?」

 私の台詞にユージさんは驚いた顔をする。
 まあ、ないから探さないのだろうけど。探してないならあるか無いかわからないじゃない! まず確かめてみる!

 「えっと……。別に構わないけど。ほとんど出ないと思うよ?」

 私は頷きながらリュックから軍手を取り出した。
 本来は、鉱石の周りのいらない砂とかを落とすのに使うみたいだけど……。私はこれで穴を掘る!
 鉱石じゃなければ、簡単に砕けるような事言っていたし、試してみよう!

 まだ入り口からの光が届くぐらいの場所で、私は右の壁を膝立ちして擦ってみる。
 ぼろぼろと、擦った所が砂の様になって落ちて行く。

 思った通りだわ! これで簡単に掘れる!
 そうだった。袋の用意しないと。

 私はリュックから布の袋を取り出した。普段採取に使っている袋。取れた鉱石を入れる為に持って来ていた。それを足元に置き、ついでにルーペも出して掘り始める。
 面白いように掘れる! まるで砂遊びをしているように穴が掘れて行く。

 「これ、思ったより楽しいわ!」

 「な、何かすごいね? それスキルでやってるの?」

 私はハッとして動きを止めた。
 おじいちゃんに錬金術の事は内緒と言われている。多分、ここにあるのが魔具だらけだと知ったら変に思うよね?
 ……誤魔化そう。

 「そうなの。採取で手に入れたスキルなの……」

 私はチラッとユージさんの様子を伺うと、感心していた。これで納得してくれたようです。一安心。

 私は自分の腰当たりの位置をどんどん掘って行く。
 ガリ。
 何か塊があった。砂にならない何か……。私はそれを手の平に乗せた。ビー玉より小さい塊。ちょっと擦ってみると、赤黒くテカテカしている。

 「ユージさん! これ!」

 「鉱石あったね! ランクFみたいだけど……」

 「うん! あるじゃない! 可能性はあるわ!」

 私は、ルーペで確認して頷きならが言って鉱石を袋の中に入れた。

 「ここを掘り進めて行くの?」

 ユージさんの質問に私は頷いた。


 ◇ ◇ ◇


 掘って掘って掘りまくって、私の体が腰まで入るぐらい横に掘り進めていた。
 袋を穴の中に置き、鉱石が取れたら入れて行く。小さな物ばかりだけど、せめてこれだけ採って来たという功績ぐらいは残さないとね。
 袋の半分ぐらいまで貯まった。多分100個近いと思うんだよね。
 一応ルーペも傍に置いてある。
 腰に付けた光る鉱石のお蔭で明るいし、楽に掘れるし快調に掘り進んでいる。

 「ひゃ!」

 私は突然、お尻いや尻尾にぞわっという感覚走り変な声を出してしまった。

 「ユージさん! 今、尻尾触ったでしょう!」

 穴から出て私はキッとユージさんを睨み付けると、彼は明らかに動揺している。

 「ごめん。ほら尻尾フリフリしていたから触りたくなっちゃって……」

 手を合わせて謝りながらそう言い訳をした!

 触りたくなったですって!

 「変態! すけべ! エッチ!」

 「え!? いやいやいや。この前は触らせてくれたじゃないか! 別にそういうつもりじゃなくて……ふわふわした尻尾をもふりたくなって……」

 「ふん」

 「ごめんって! もう勝手に触らないから……」

 ユージさんは、本当に困ったという顔をして、頭まで下げて来た。
 まあ触りたい気持ちはわかるけどさ。
 レディーのお尻じゃなかった、尻尾を勝手に触るなんて……。
 って、ユージさんは私をいくつだと思っているのかな?
 見た目通り10歳だったりして……。

 「わかったわ。そのかわり私にも触らせてね!」

 「え?! 触りあっこはダメじゃ……」

 「え~! ずるい!」

 「ずるいって……。変態とか言っておいて……」

 私がジド目で睨むと、ボソッと呟やく。

 「わかったよ」

 「耳も触らせてね!」

 「わかったけど、その手で触るき?」

 私が手を伸ばすと、慌ててユージさんは言った。
 軍手は真っ黒です。

 仕方がない。終わったら触らせてもらいましょう!

 「じゃ、後にするけど、もうしないでね!」

 私は念を押すと、穴を一回り大きくして、四つん這いになって穴に入って行った。

 「だから、もう触らないって……」

 ユージさんは、穴を覗きながら小さく言った。
 私は穴の奥にぺたんと座って、ジッとユージさんをジド目で睨む。
 穴は、私が座ってギリギリの大きさがあった。

 「それ、外に出して置いて」

 「わかったよ……」

 穴を掘った時に出た砂を指差して言うと、ユージさんはそれを外にかき出した。
 私は今度は横に掘って行く事にした。
 座ったまま、通路と並行して掘る。出た砂は、穴の出口に向けて掻き出すと、ユージさんが外に出した。


 「ねえ、まだそこ掘るの?」

 無心に掘っていたらユージさんが声を掛けて来た。
 見れば二人で並んで入れるぐらいの大きさに……。

 かまくらみたいになってる。

 「ねえ、ユージさん。見て見て!」

 私は無邪気に声を掛け、かまくらもどきの中に入り座る。

 「え?! ちょっと待って!」

 ユージさんは、狭い穴の中を四つん這いになって進んで来た。
 顔を上げ私が座る大きく掘った穴を見て驚く。

 「よく掘ったね……」

 「ねぇねぇ。座ってみて」

 横に座った所で景色は岩。面白くもなんともないんだけどね。
 ユージさんは、はいはいと私の横に座った。

 「僕でも余裕……え? うわぁ!」

 「ユージさん! きゃー!」

 突然足元が崩れた! ――穴があいた!
 私達は為す術もなく落下した!
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