お二人様のモフみみ錬金術師

すみ 小桜(sumitan)

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第6話~刻

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 ザーと音をたて辺りを白くぼやかし、勢いよく雨が降り続いている。

 そう言えばユージさん、さっき雨が降る頃だって言っていたっけ。降る時間が決まっているのかな?

 「ねえ、ユージさん。雨って決まった時間とかに降るの?」

 私は隣に座っているユージさんに聞いた。
 お父さん達は、隣の長椅子に座り、何やら楽しそうに話している。お父さんの機嫌はすっかり直ったようです。

 「うん。決まってるよ。雨を降る時間をこの世界では、虹の刻って言うんだ」

 そう言いながら、何やらポケットから出して来た。
 懐中時計――に見える。
 ユージさんは、カパッと蓋を開けた。私は覗き込む。
 リアルの世界のとは違い、数字は書かれていないが文字が書かれていた。
 時計回りに、『目覚め』『光』『虹』『暮れ』『闇』。光の幅が一番広く半分を占め、次に闇が光の半分、残りを当分。
 わかりやすく言うと、リアルの時計で12~1が目覚め、1~7が光、7~8が虹、8~9が暮れで9~12が闇。

 「これは、この世界の時計なんだ。目覚めが早朝かな? で、虹が雨が降る時間帯なんだ。だから毎日同じ時間に降る。一日はリアルで四時間。光の刻は二時間あって、闇は一時間。それ以外の刻は二十分。と言っても体感は六倍だけどね」

 なるほど。つまりリアル一日で、この世界は六日経つのね。でもこの世界一日は24時間に感じると……。
 闇は夜の事だろうから、雨が止んでから二時間で暗くなるって事ね。目安にはなるけど、時計ほしいかなぁ。まあ、右上にINからの時間が表示されているけどね。

 「ねえ、時計ってどうやって手に入れるの?」

 「うーん。僕とは違うと思うよ。僕らは見ての通り農夫だからさ。一通り教えてもらったら渡された。って、もしかして始めて間もない?」

 ユージさんの質問に私は頷いた。

 「雨を見たのは今が初めてで、夜も体験していない。まだ始めて数時間です……」

 「なるほどね。じゃ、全然わからないよね。この世界の時間を知るのには、時計以外だと魔法やスキルだけど……。条件は知らないからなぁ。まあ、もしかしたらこの後、時計がもらえるかもしれないよ」

 「そうだね。あ、そうだ! ねえ、皆、私ぐらいの年齢からスタートなの?」

 「まさか。このゲームまだ始まって一年ぐらいだよ? 多分、僕ぐらいの年齢からだと思うけど……。僕はのんびりここでやっているから、プレイヤーに会ったのって数名なんだよね。でも全員200歳超えの成人だったよ」

 じゃなぜ、私は子供なの! って、そう言えば見た目二十代だよね、ユージさんって。じゃ、私も10歳と言われてるけど、実際は100歳ぐらいだったりしない?

 「ねえ、年齢ってどうやって知る事が出来るの?」

 ステータスには年齢は載っていなかった!

 私が質問をするとユージさんは驚いた顔をした後ほほ笑んだ。

 「知らないでいたんだね。ステータスの画面でスクロールすると、下にヒストリーがあってそこに書いてあるよ。そこには自分が経験した事が大まかに記されていくんだ」

 なんと! そんなのがあったんですか! 知らなかった。
 では、見てみよう!

 ドキドキしながら、ステータスをスクロールさせると、ヒストリーがあった。文章は短い……。


 ――スデルディア歴5215年3日に父バシリーと母レノーラの間に生まれる。祖父は錬金術師のリーオル。


 年号は、スデルディア歴ですか。で、今は何年? って、おじいちゃんって錬金術師だったんだね! 後で色々聞いてみよう!

 そして私はこれで、家族の名前を知りました。

 「どう? 見つけられた?」

 「うん。今ってスデルディア歴何年?」

 「確か……5225年だったかな。で、今日は75日かな」

 75日?! 何日まであるの? いやそこじゃなくて……5225年って事は、本当に10歳なんですけど……。

 私は一つ疑問が浮かび上がる。もし長~くやって200歳になったとしましょう。見た目変わるのかな? このまま子供のままだったりしないよね?

 「何歳だったの? 10歳だった?」

 ユージさんも知りたいらしく、私をジッと見つめてくる。

 「……10歳だった。ねえ、私って見た目成長するのかな? 普通のゲームってしないよね?」

 「うーん。どうなんだろう? 今の所、この島では年齢によって制限はないみただけど。違う所に行ったらありそうだよね。大人しか入れないとか、出来ないとか。だったら不公平だよね……」

 確かに。自分で年齢を選べないんだからそういうのがあったら不公平かも。
 ……今更だけどここって、島だったんだね。という事は、海を渡らないと違う土地に行けないという事に。
 まあ、まったり物づくり生活するつもりだしいいかな。ちょうどよくおじいちゃんが、錬金術師みたいだし!

 「まあ、私も今の所まったりするつもりだから年齢はいいや。で、一月ひとつき何日あるの? さっき75日って言っていたよね?」

 「違う違う。月の設定はないんだ。90日で一年。リアルで換算すると、15日で一年なんだ。だからリアル一月ひとつきで、二年経過する」

 そうユージさんは説明してくれた。

 あっという間に時間が進みそうです。う~ん、時間は時計でわかるとして、日付は何でわかるんだろう? やっぱりカレンダーかな?

 「日にちってカレンダーみたいのがあってわかるの?」

 ユージさんは頷いた。

 「ステータスに表示されないから、家にあるカレンダーで確認するしかないかな、僕は。魔法やスキルとか調べる方法あるかもしれないけどね」

 やっぱりこの世界にもカレンダーがありました! まあ、冒険でもしないかぎり、カレンダーがあれば十分そうね。

 「ソレイユ、帰るぞ」

 そう言って、突然お父さんに抱きかかえられた!

 「え? まだ雨降ってるよ!」

 スコールのような雨がまだ降っている。雨の中帰れば、びしょ濡れです!

 「今帰らないと、ご飯が食べられない! ではダンダさん、俺達はこれで失礼します」

 お父さんは、私を抱きかかえたままお辞儀をすると走り出す。

 「え?! ちょっと待って! あ、ユージさん、色々ありがとう!」

 慌てて私は、礼を言ってユージさんに手を振った。彼も手を振り返してくれる。

 「遊びにおいでね~」

 ユージさんが手を振りながらそう言ってくれて、私は大きく頷いた――。
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