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第二十六話

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 「私のは、特別な魔法だ。生まれてからそう言われてきた。でも聖女ではない私は、特別でも王妃にはなれない。聖女ってなに? 治癒する力? だったら薬師の能力も手に入れてなってやると思った。彼女は、見破られない保険よ。偽物の次に現れたのまで、偽物だとは思わないでしょう?」

 特別な魔法。私もそうだった。でも真逆。気づけば、私はおばあちゃんとあの森で過ごしていた。

 「本当に残念だわ。後、ちょっとだったのに!」
 「させませんよ!」
 「きゃ!」

 ビスナさんがアルザンヌさんの両手を後ろから押さえつけた。

 「な、何をするのよ!」
 「自害などさせませんと言う事です。魔法は、今アイテムで封じました。薬師だと言うのに、手に見えない氷を張って、毒を持ち歩くなどあり得ませんね!」

 押さえつけたままビスナさんは、アルザンヌさんを睨み付けている。

 「なんで……」
 「なんでわかったかですか? エーネルに毒を含ませる事が咄嗟に出来ると言う事は、手元に持ち歩いているという事でしょう? 皿に毒を仕込むのも、チャンスが巡った時に行っておけばいい。料理に混ぜるわけではないですからね」

 ビスナさんの説明に、とうとう彼女も項垂れました。
 兵士が呼ばれ、アルザンヌさんと偽聖女は、連行されて行った。

 「リリナージュ様。今まで申し訳ありませんでした。聖女だとは知らず、色々な無礼をお許し下さい」

 って、突然ビスナさんが片膝をついて、頭を私に下げてきたんですけど! 何その手の平返し!

 「やめて下さい。聖女だなんて。あれは、彼女を改心させる為の台詞であって、聖女になる気はありません」
 「なる気がないだと?」
 「なぜです? このままいけばレイサード様と結婚でき王妃になれるのですよ?」
 「私はそんな器ではないですし、薬師をして働かせて頂ければ十分です。……あ、事件解決したし、もうお役目ゴメンですか?」

 そう言えば、王宮薬師として働くのは、事件を調べる為だったわ。

 「なんの話だ?」
 「申し訳ありません。あの時は、けん制の為に王宮薬師にしたのは、事件を調べてもらう為ですと言ってあったのです。まさかこの様な運びになるとは思っておらず……」
 「なに!?」

 え? そういうつもりで薬師に採用したわけではないと?

 「今、抜けられると困るわね。アルザンヌさんは辞めた人の代わりに入れたのですから」

 ネツレスアさんがそう言うと「そういう事ですので」とビスナさんがほほ笑む。
 結局私は、王宮薬師としてそのまま残れる事になった。――けど、何か振り回された感が大きいわ。
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