【完結】毒魔女は殿下の猫のお気に入り

すみ 小桜(sumitan)

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第二十五話★

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 アルザンヌは、リリナージュが作った色素を元に戻す薬を一気に飲んだ。わかってはいたけが、彼女の変わり様に驚いた。少しどころではなかったのだ。

 日に焼けた様に小麦色だった肌は、透き通るような肌に。瞳も髪も驚くほど色素が抜けた様に、水色というよりは白っぽい青。濃さで言えば、ネツレスアの方が断然濃かった。

 当然、ピアスは引き立つ。元々水色では濃い方だと思った色は、青色に見える。髪色が違うだけで、ピアスの色の印象がこんなに違うとはな……。

 「満足!?」
 「これで隠していませんと、まだ言い張りますか?」

 ギロリと睨んでビスナは言った。

 「………まさか、本物の聖女に邪魔されるなんて思わなかったわ」

 とうとう観念したようだ。

 「当然、どうやって毒を盛ったかもわかっているのでしょう?」

 自分で言うつもりはないようだな。

 「私は、二回も狙われた。その時に共通する料理がある。冷スープだ。あれに仕込んであったのだろう?」
 「どうやって料理に入れるっていうのよ」
 「入れる必要はないでしょう。皿に氷を張るだけでいいのですから。目に見えない程薄くそして丈夫な氷をあなたは作る事ができる」

 ビスナが言うと、更にリリナージュが頷いて続ける。

 「エーネルさんが倒れた時、床が濡れているのに気がついた。でも濡れているといっても濡れ雑巾で拭いた程度の濡れ具合だったわ。氷を張った直後だと思うからかなり薄い氷だったのでしょうね」

 これは俺達の予想だ。いやそれしか思いつかなかった。当たっているか、様子を伺うと、彼女は笑いだした。

 「何それ、そこまでわかるんだ。そうよ。冷スープと言っても氷よりはぬるい。毒味をされてもまだ溶けていない。最後の方になると、薄い氷は剥がれる。それは細かく分かれスープに混ざるから多少冷たくても気づかなかったみたいね」

 大成功と言わんばかりに、アルザンヌは話した。

 「でも一つだけ訂正しておくわ。その毒、仮死状態にするものなの。まあそのまま放置されれば、死んじゃうかもしれないけど、ちゃんとした施設で治療を受ければ、死なずに済むわ」
 「死なずにすむだと? 死なずとも苦しかったぞ! それに人によっては効きすぎる事もある。そうなれば死ぬだろう。何の為にそんな事をした!」
 「決まってるでしょう。殿下、あなたの妻になる為よ」

 やっぱり聖女だと偽って、妻になるつもりでいたのか。しかしここまでしてまでか?
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