【完結】毒魔女は殿下の猫のお気に入り

すみ 小桜(sumitan)

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第十八話★

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 まさかの展開になった。
 調子が悪いと、彼を治せなかった聖女が俯いて目の前にいる。
 嘘をついているのがばればれだ。よかった。父上を直接診てもらわなくて。
 にしても、彼女の様子を見に行くと言ったけどビスナは、大丈夫か?

 「ただいま戻りました」
 「どうだった……って、起こして連れて来たのか?」

 驚く事に、リリナージュを連れて来た。彼女は驚いて見渡して、聖女をジッと見つめる。
 灰色の髪からちらつく、白いピアス。瞳は黒。
 確かに黒い瞳は珍しいが、ピアスの色が白とはな。ないだろうに。

 「えーと……」
 「彼女は偽物でした」

 戸惑うリリナージュに、そうビスナが告げると凄く驚いていた。

 「あれって嘘?」
 「はい」
 「はいじゃないですよ! 本気にしたらどうするのですか!」
 「信じてもらう為に一芝居打ったのではないですか」
 「え? 私達がよりを戻したと?」
 「よりを戻しただと!?」

 何の話だと聞いていれば、どういう事だ。

 「また面倒な事を言わないで下さいよ」

 ビスナがそうリリナージュに言っている。

 「面倒とはなんだ? どういう事か説明しろ」
 「はあ……。ですから、よりを戻した私達が私の部屋へ行ったと思わせたのです。彼女がこれで動いてくれればいいのですが」
 「あなた達は、お付き合いをされていたのですか?」

 俺が聞く前に、ジェールエイトが驚いて聞いた。

 「えぇ、まあ。でもおしゃべりな女は嫌いなのですよ」
 「ちょっと待って!」
 「この話は後にしましょう。今は彼女の動向でしょう」
 「な! 変な噂流さないでよ!」

 リリナージュが、ビスナと元から知り合いだった? だからあんなに反対していたのか?
 彼女を奪われない為に?

 「うん? あれ? 彼女ってもしかして、アルザンヌさん? ネツレスアさんではなくて?」
 「一番疑わしいのはアルザンヌ、その次がネツレスアさんですね」
 「うそ。なんで?」
 「あ! 待ちなさい!」

 二人の話しに没頭していたら聖女が逃げ出した!
 俺達は、彼女を追った。だが彼女は、廊下で倒れているではないか!
 辺りを見渡すも誰もいない。

 「キュア!」

 リリナージュの声が聞こえた。
 ジェールエイトもビスナも驚いていた。

 「今、何をしました?」

 ビスナが聞く。
 聞かずともわかるだろうに、彼女が毒を除去したのだ。と言う事は、この偽聖女は毒に侵されていたという事か! いつだ!

 「彼女も毒に……」

 そう呟くリリナージュは、偽聖女の耳に触れていた。
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