【完結】毒魔女は殿下の猫のお気に入り

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
18 / 30

第十八話★

しおりを挟む
 まさかの展開になった。
 調子が悪いと、彼を治せなかった聖女が俯いて目の前にいる。
 嘘をついているのがばればれだ。よかった。父上を直接診てもらわなくて。
 にしても、彼女の様子を見に行くと言ったけどビスナは、大丈夫か?

 「ただいま戻りました」
 「どうだった……って、起こして連れて来たのか?」

 驚く事に、リリナージュを連れて来た。彼女は驚いて見渡して、聖女をジッと見つめる。
 灰色の髪からちらつく、白いピアス。瞳は黒。
 確かに黒い瞳は珍しいが、ピアスの色が白とはな。ないだろうに。

 「えーと……」
 「彼女は偽物でした」

 戸惑うリリナージュに、そうビスナが告げると凄く驚いていた。

 「あれって嘘?」
 「はい」
 「はいじゃないですよ! 本気にしたらどうするのですか!」
 「信じてもらう為に一芝居打ったのではないですか」
 「え? 私達がよりを戻したと?」
 「よりを戻しただと!?」

 何の話だと聞いていれば、どういう事だ。

 「また面倒な事を言わないで下さいよ」

 ビスナがそうリリナージュに言っている。

 「面倒とはなんだ? どういう事か説明しろ」
 「はあ……。ですから、よりを戻した私達が私の部屋へ行ったと思わせたのです。彼女がこれで動いてくれればいいのですが」
 「あなた達は、お付き合いをされていたのですか?」

 俺が聞く前に、ジェールエイトが驚いて聞いた。

 「えぇ、まあ。でもおしゃべりな女は嫌いなのですよ」
 「ちょっと待って!」
 「この話は後にしましょう。今は彼女の動向でしょう」
 「な! 変な噂流さないでよ!」

 リリナージュが、ビスナと元から知り合いだった? だからあんなに反対していたのか?
 彼女を奪われない為に?

 「うん? あれ? 彼女ってもしかして、アルザンヌさん? ネツレスアさんではなくて?」
 「一番疑わしいのはアルザンヌ、その次がネツレスアさんですね」
 「うそ。なんで?」
 「あ! 待ちなさい!」

 二人の話しに没頭していたら聖女が逃げ出した!
 俺達は、彼女を追った。だが彼女は、廊下で倒れているではないか!
 辺りを見渡すも誰もいない。

 「キュア!」

 リリナージュの声が聞こえた。
 ジェールエイトもビスナも驚いていた。

 「今、何をしました?」

 ビスナが聞く。
 聞かずともわかるだろうに、彼女が毒を除去したのだ。と言う事は、この偽聖女は毒に侵されていたという事か! いつだ!

 「彼女も毒に……」

 そう呟くリリナージュは、偽聖女の耳に触れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

処理中です...