【完結】毒魔女は殿下の猫のお気に入り

すみ 小桜(sumitan)

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第十七話

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 夕食時、ネツレスアさんから彼の事の説明があった。体調を崩した事になっている。聖女様の事は触れなかった。
 私は、食事を終え帰るネツレスアさんに声を掛けた。

 「ネツレスアさん……」
 「リリナージュさん。大丈夫よ。あの方に診て頂いているから」
 「もうお越しになって。では大丈夫ですね……」

 おかしいわ。何かされた感じがない。

 「ただ……」
 「うん? ただ?」
 「お祈りを捧げてからするとか言って、まだ始まってないのよね」
 「え!? 何それ」
 「でも大丈夫。今日はゆっくりやすみなさい」
 「はい……」

 あの時、近くに居たのはなぜですか? って聞けなかった。

 「偽物だったりしてね」
 「ひゃ」

 いつの間にかアルザンヌさんが居た。聞いていたのね。

 そして就寝。でも何かアクションがあった感じがない。まだお祈り中? 気になる。気になるけど……。

 ガサゴソ。
 うん? アルザンヌさんが起きた?
 あぁ、いつものあれか。夜中に喉が渇くらしく、毎日水を飲んでいる。飲み終わるとすぐにいつも通り寝た様子。
 聖女様を見に行くならついて行くのに!

 結局気になって寝れなくて朝になった。
 こうなったら聞きに行こう。
 まだ寝ているアルザンヌさんを起こさない様に部屋を出ると、廊下でビスナさんと出会った。

 「おはようございます。随分とお早いですね」
 「おはようございます。えーと、聖女様の事が気になって」
 「そうですか。彼女はどうしてます?」
 「彼女? アルザンヌさんの事?」
 「はい」
 「寝てますけど」
 「そうですか。では部屋で」
 「え!?」

 いや寝てるけど、いいの? もしかしたら起きて聞いているかもしれないよ。
 そう思ったけど、聞きたいので従った。

 「いいですか。誰にも内緒ですよ」

 そう思うのなら違う場所の方がいいんじゃない?

 「低体温症は治りました。そのうち意識が戻るでしょう。そうすれば、話を聞けます。犯人が彼女なのかもわかります」
 「え? うそ!?」

 つい大きな声を上げてしまった。
 だってまだ低体温症は治っていない。聖女様は嘘をついている。って、誰が診断したの?

 「声が大きいです」
 「なんなのよ、あなた達。私にばれたからって、ここで逢う? やめてくれない? いちゃつくならあなたの部屋でなさいなさいよ!」
 「おや、これは失礼しました。そうしましょう」
 「へ?」

 ぐいっと、ビスナさんに引っ張られた。
 ちょっと待って! どういう事?
 ビスナさんを見れば、口を開くなという無言の圧力が……。
 うわーん。シルー助けて! どうなってるの!
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