【完結】毒魔女は殿下の猫のお気に入り

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
14 / 30

第十四話★

しおりを挟む
 「な、なぜ彼女がここにいるのだ?」

 そう口走っていた。

 「申し訳ありません。すぐに下がらせます」
 「いや、責めているのではなく、理由を聞いている」
 「彼女が第一発見者でしたので」

 俺の質問にネツレスアが答えた。
 なんだ彼を見つけた発見者だっただけか。
 うん? なぜ安心をしているのだ?

 「で、何かございましたか?」
 「はい。毒を盛られたわけでもないのに、低体温症になっているのです」

 ビスナの質問に、困惑した顔のジェールエイトが答えた。
 彼があの顔をするという事は、まったくわからないのだろう。そんな事があるのか? やはり魔法か?

 「魔法の線はないか?」

 俺の言葉に皆驚いていた。まあ聞いた事がないからな。

 「リリナージュ。君はどう思う?」

 自然と彼女に問いていた。
 リリナージュは、驚いた顔というより困り顔だけどなぜだ?

 「あ、あるかもしれません。体を冷やす魔法なら可能かと」
 「魔法で冷やすですか。なるほど。しかし王宮内にはその様な魔法の持ち主はいませんが」

 リリナージュの答えに、いないとビスナは答えたが、一人思い当たる者がいる。だが、ジェールエイトやビスナが気づかないという事は、外傷がないのだろう。方法はどうであれ、吐かせればいい。
 それよりも――。

 「ビスナ。どうせだから聖女に、診てもらったらどうだ?」
 「え? 聖女様に彼をですか?」
 「聖女は、毒を除去する能力だけではなく、どんな病気も治すと言われている。本物かどうか確かめないとダメだろう?」

 ビスナが目を細めた。
 まだそういう事を言うかという目だな。

 「そうですね。私も殿下の意見に賛成です。本物だと信じておりますので、彼を治癒して下さることでしょう」
 「せ、聖女様に診せるのですか?」

 ジェールエイトが俺に賛成してくれたが、なぜか関係ないリリナージュの顔色が悪い。

 「あの……聖女様って魔法で具合が悪くなっていると、わかるものなのでしょうか?」

 リリナージュが、変な質問をしてきた。
 そこまでは、本人に聞かないとわからないが出来るのではないだろうか? そう思い、ビスナを見る。

 「わかりません」

 一言、ビスナがそう言った。
 そして、鋭い視線で、リリナージュを見つめている。

 「リリナージュ。もう戻って結構ですよ」
 「え? あ、はい。失礼します」

 ビスナが言うと、軽く会釈してリリナージュは去って行く。

 「彼女、何か隠しているような気がしませんか?」

 リリナージュを追っていた目線をそう発言したビスナに向けると、怖い顔つきをしている。本気でそう思っているようだ。

 「もしかしたら彼は、魔法でこういう状態にされているのかもしれません。それをしたのが彼女なのか、または気づいただけなのか」
 「な、何をいう。彼女がそんな事をするわけないではないか!」

 ジェールエイトの言葉に俺は、そう言っていた。

 「これは、重症ですね」

 はぁっとため息と共に、ビスナがそう漏らした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

悪役令嬢は毒を食べた。

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ
恋愛
婚約者が本当に好きだった 悪役令嬢のその後

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...