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第六話

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 「あの……レイサード殿下が襲われたって本当ですか?」

 早速探りを入れてみる。
 けど、ジーッと驚いた顔で私を見るだけ。

 「襲われたって? どういう事?」
 「え? 知らないの? 街ではその話で持ち切りだったけど」
 「え? 本当に襲われたの?」
 「全く知らないの?」
 「殿下とか普段会う事もないし、私達は街に出ないから噂も耳にする事もないわ」

 どういう事? てっきりみんな知っていると思っていた。聞きづらいじゃない。これじゃ話題を振れないわ。
 それより毒を盛られたというのに、大々的に薬師の人を調べてないの? なぜかしら? 情報が少なすぎて、調べるの無理っぽい。うーん。薬師として働くだけではダメかしら?

 「さあもう寝ましょう」
 「はい」
 「そうそう。さっきの事だけど聞いて回らない方がいいわよ。そういう人かと思われちゃうから」

 ドキリとした。

 「そ、そういうって?」
 「噂話を調べに来たのかって事。前に居たらしいのよ。王宮内の事を根掘り葉掘り聞く人」
 「そう。気を付けるわ。ありがとう」

 ますます無理そうだわ。はあ……。

 「ランプ消すわね」

 辺りは暗くなった。まあ窓から入る外の明かりがあるから真っ暗ではないけどね。



 ごくんごくん。
 うっすらと開けた視界に、アルザンヌさんが水を飲む姿が見えた。
 喉が渇いたようで、私に気を遣ってか暗闇の中で飲んでいる。明かりをつけてもいいよと声を掛けようかと思ったけど、彼女は飲み終わったらすぐに横になってしまった。ま、いいか。

 「おはよう」
 「あ、おはようございます」
 「さあ、支度をしたら朝ごはんを食べに行くわよ。そこで自己紹介しましょう」
 「はい」

 身支度をして食堂に向かう。その間に聞いた事と言えば、王宮内用の薬は女性が、国外用の薬は男性が担当しているという事。そして思ったより多くなく、男性四人、女性は私を入れて六人。薬師副長は女性、薬師長は男性って事ぐらい。

 食事前にあいさつの場を作ってもらい、私の自己紹介はサラッと行われた。その後、すぐに仕事開始。仕事場の清掃から始まり、昼食を挟んで夕方までただひたすら薬づくり。私も今日から皆と変わらすに仕事をする事になり、仕事中は私語厳禁。これでどうやって調べろというのかしらね。

 久しぶりにへろへろになり一人部屋で休んでいた。
 がりがり。
 うん? 扉から?

 「はい?」

 誰かがノックでもしたのかと思って開けるも誰もいない。って、私の足に何かが触れた。驚いて見ると、銀色猫のシルー。
 私はシルーを抱き上げた。

 「元気だった? あなたのお蔭で仕事を得たわ。ありがとう。な~にこれ?」

 紙を咥えていた。
 見てみると――。

 シルーは、あなたを気に入った様だ。相手をしてやってほしい。
                          レイサード

 一言書いてあった文字は、スーッと消えた。これ魔法文字なの? 凄いわ。って仕事をしつつ、毒を持った者を調べ、猫の相手もしろというの? 私、そんなに器用じゃないんだけど。
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